連続強盗事件への関連が疑われ、フィリピンの収容所にいた4人の容疑者の捜査状況について、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「4人の上に黒幕が存在すると考えるのが自然」と話します。容疑者4人以外に「闇バイトのリクルーター」「情報収集」「現金の受け渡し役」などの担当に指示・統率する黒幕がいるはず、という事件の見立て、いわゆる『スジ読み』です。今後は容疑者が使っていたスマホのアプリの分析がポイント。(2023年2月8日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト、元神奈川県警勤務、国際捜査課の捜査員など30年勤務)

「捜査1課、2課、そしてサイバー犯罪対策課の合同捜査か」

---犯罪ジャーナリストの小川さんに解説をしていただきます。まずはこの4人の容疑を整理していきます。既に日本に送還されたこの2人の逮捕容疑。さらにはフィリピンに残る2人の逮捕状の容疑は特殊詐欺に関わる窃盗の容疑。これは知能犯罪に当たることから捜査2課が担当することになります。一方で、今後捜査が見込まれているルフィが関わっているとされている連続強盗事件。こちらは強盗殺人事件も含まれるといて、凶悪犯罪に当たるので捜査1課が担当しますが、2課と1課、担当する課が異なることでやりにくさ、壁はあるのかどうか、その辺りは小川さんどうなんでしょうか?

特にね、問題はないと思います。また捜査1課、2課だけではなくて、今回は通信機器を使っているということからサイバー犯罪対策課。また日本国内の現場における防犯カメラ。警視庁のSSBC捜査支援分析センターといったようないろんな部署の合同の捜査本部になっているということです。

---ですから部署間の垣根を越えて、捜査を進めていく体制になりそうだということです。では今回の4人の関係性について、特殊詐欺グループ元メンバーによる証言をまとめています。証言によると、渡辺容疑者は複数のグループを束ねていた。大ボス的存在であった。その右腕となるのが小島容疑者。細かい指示を出していたということです。その指示を受ける一つのグループリーダーとなるのが、今村容疑者。藤田容疑者は現金化担当だったということです。かけ子はもう250人いるのではないかという。非常に大きな規模ですけども、渡辺容疑者のさらに上、黒幕は存在するのかどうかこのあたりはどうでしょうか?

まだそこは判明はしていないんですけども、通常、一般的に考えれば、このあのビクター収容所の中だけのこの4人で完結する問題ではないだろうというふうに思います。特にですね闇のバイト、そういうリクルーターの者。あとは実際に情報を収集する者。どこにタタキ(強盗)にいくかというそういったもの。あとは現金の受け渡し、実際に先日、フィリピンから日本に帰国した者が逮捕されてますけども、そういった者に誰がお金を渡してその分配をするのかっていうようなことを考えれば、渡辺容疑者のグループの上に黒幕というか、指示をする指示役がいるとして別に何ら不思議ではないというふうに思います。

「トップはわかっていても逮捕状とれない。それが国際組織犯罪」

---黒幕にたどり着くにはどんな捜査が必要でしょうか?
警察はこれから2名逮捕して捜査をするわけですが、一番は通信機器ですね、携帯電話、パソコン。あとはお金の流れ、面会の簿冊。当然ですけどフィリピンにもサポートする役がいたはずです。実は渡辺容疑者は、フィリピンのホテルを一棟購入して、そこで振り込み詐欺をやっていたという話も出ております。そういう流れですね、どういったものが出会いをしていたのかといったようなところが今後の捜査。一番大きいのはお金の流れだと思います。日本とフィリピンの警察は非常に友好な関係になっています。そういった意味では捜査はある程度順調に進むのかなと思います。組織図を書くとやはり一番トップは、その国にいないことが多いです。今回もそうですが、ただ警察的には捕まえることはできないんですが、誰がトップかはある程度わかってるんですね。わかってるんですけど、そこにたどり着いてるんですけど、その者を逮捕するための逮捕状をとる逮捕状を請求するまでの資料がないというね。本当に歯がゆい話なんですけど、そういうことが組織犯罪にはよくあることです。

---黒幕がいるのかどうか。いたらどうやってたどり着くのか、そこまでいかないと本当の解決には繋がらないのかなとも思いますが。

(立岩陽一郎氏)そうですね。だから小川さんがおっしゃってる部分で非常にわかるのは、つまり手足になってた人間がなんでそんなにビクビクしながら受けられないのかっていうと、フィリピンに渡辺容疑者だけが怖いっていうのはちょっと理屈に合わないんですよね多分そういう指示をしている人間が他にも日本国内にはいるかもしれない。うんそれが渡辺容疑者より上なのか下なのか、それはわかんないよね。あとね、もし本当にもっと上がいるとしたら、
日本に連れてきて逮捕するじゃないですか。彼らを守らなきゃいけないっていうのもあるんですよ。例えば自ら供述できないような状況に自分を追い込むことってありうるわけですから。日本の警察は何度も失敗してるんでね。ちゃんとしっかりと管理できるのかっていうことも問われますよね。だから供述も大事でしょう。あともう一つやはりちゃんとお金の流れを追えるかどうか。そういうところをしっかりやる上ではフィリピンの捜査当局との協力は不可欠。だから場合によっては日本の捜査員がフィリピンに行ってフィリピンの捜査機関と一緒に、極めて異例ですけど捜査するということもありうるでしょうね。そのぐらいやらないと多分解決しないですよ。

「黒幕へ---カギ握るスマホデータの解析」

---今後の捜査のポイントは
証拠品になるんですね。携帯電話などおよそ15点がフィリピン側から受け取られるということですが、こういったテレグラムのように匿名性の高い通信アプリが使われていた可能性も指摘されていて、テレグラムの中で「シークレットチャット」と呼ばれるようなものもあり、これは一定秒数ごとにメッセージが消える仕組みになるようなものもあります。ではメッセージが消える場合、警察に対抗手段はあるのか。ITジャーナリストの三上さんにお話を聞きました。警察はフォレンジックという作業技術を持っている、と。データを抜き取り、分析する作業で、警察はこれまで15年以上培ってきたので技術も向上している。なのである程度は復元が可能だそうです。ただし、アプリごと消されるとうまくデータが取れないという話もります。もしテレグラムのアプリが消されていたとしても、スマホがあれば様々な痕跡が残っている可能性があると。例えばターゲットの住所、マップアプリで調べた履歴とか、強盗に入るときのレンタカーの検索履歴。さらには指示内容に関するメモ、スクリーンショットなどもあるのではということですこういった情報がどこまでスマホなどから得られるかというところがポイントになってきそうですか。

そうですね。この4名の名前が浮上してからも日本と連絡が取れてるんですね。その中でどのぐらいこの4名が危機感を持っていたかなんですけど、中にはもう処分しているスマホもあるかもわからないんですね。そのあたりも非常にこれから証拠品の扱いっていうのは非常に重要になってくると思います。(了)