「物価の優等生」と言われるたまごも牛乳も値上げが続く中で、私たちの財布にとても優しい『もやし』にも危機が迫っています。
「物価の優等生」と言われるたまごの高騰が止まりません。JA全農たまごの調べによりますと、Mサイズ1kgの相場価格が320円となり、統計を取り始めて以降、最高値を更新。去年の同じ時期と比べて約1.8倍になりました。また、鳥インフルエンザも流行し、値上がりだけでなくそもそもの供給量も不足しています。
(スーパーの買い物客)
「前は190円か200円までやったのにな。ちょっと高かったら300円するやろ」
「ちっちゃい子どもがいるのでたまご料理をよくします」
先週、「セブン-イレブン」はサラダやサンドイッチなどを含む一部商品について規格を見直し、ゆで卵の量を減らして販売することなどを発表。
また、北海道のお土産として有名な「白い恋人」は、原料となる卵白の入手が難しいとして、今年1月下旬からオンライン販売を休止しています。
2月も5000品目以上の値上げラッシュが続く中で、優等生として最後の砦を守り続けているのが『もやし』です。
(スーパーの買い物客)
「もやしは重宝しています。手頃ですし何でも使えるから」
「もやしはよく使います。ビタミン的にも良いお野菜なんでね。お値段的にもありがたいし」
工業組合もやし生産者協会の調べによりますと、私たちのお財布にとーっても優しいもやしは約30年間ほとんど値上がりすることなく、現在1袋200gで全国平均31円で販売されています。
しかし、そんなもやしも実は歯を食いしばって優等生のポジションをキープしているのです。
【日本経済新聞朝刊掲載の全面広告より 2022年11月7日発刊】
「『物価の優等生』として家計に貢献できることはわたしたちの誇りでもありました。しかし、安さばかりを追求していては、もう続けていけない状況です」
去年末、日本経済新聞に掲載された全面広告からもやし生産者の悲痛な叫びが聞こえてきました。一体、もやしに何が起きているのか。取材班は生産現場に向かいました。
茨城県小美玉市にある「旭物産小美玉工場」では1日40トン・20万パックのもやしを製造しています。もやしは原料となる緑豆を35℃のお湯に5時間つけこみ発芽させ、タンクで寝かせるとわずか10日ですくすくと成長します。
(旭物産 林正二社長)
「こちらが出荷間際のもやしです。原料が100kg、それが(約10日で)10倍の1トンになるわけです。これでもうすばらしいもやしです」
工場内で年中栽培できて、天候にも左右されないことから、長年安定した価格で優等生ぶりを発揮してきました。しかし、1992年~2022年8月の30年間で原料の緑豆価格が3倍に高騰したにもかかわらず、もやしの小売価格は約2割下がるという逆転現象が起きています。さらに…。
(旭物産 林正二社長)
「重油でボイラーを沸かして、もやしにかける水を20℃まで上げて、そして成長させるわけです。その重油代も大変な金額がかかるわけです」
温度が低いと成長しないというもやし。生産過程で使う1日1500トンの地下水の水温調整や、さらに育成室を常に25℃に保たないといけないため、多くの燃料費が必要となります。「旭物産小美玉工場」では原料や燃料費などの値上がりで経費が年間で1億円以上も増えているのです。
(旭物産 林正二社長)
「コストは上がっているんだけれども、それを商品の価格に反映することができない。つまり値上げすることができない。このままではもやし生産者が日本からいなくなってしまうんじゃないかと、それくらいの危機感をもっています」