連続強盗事件への関連を疑われて、フィリピンの収容所に収容されていた4人について、元収容者だったというY氏が独自告白しました。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏の取材に答えたもので、4人のうち今村容疑者は「金持ちリストやタタキ(強盗)のリストを持っていた」と証言し、今後は「金を使って脱走を計画していたのではないか」と話しました。また「金がないと地獄」「2、3千万円で脱走を黙認してもらえる」といった収容所の内情についても証言しました。(2023年2月6日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

「食事はコメと肉のない唐揚げ…収容所は金がないと地獄」

小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト、元神奈川県警勤務、国際捜査課の捜査員など30年勤務)

「2000万円か3000万円払って脱走を黙認してもらう」

---犯罪ジャーナリストの小川泰平さんです。今回、小川さんが直接取材をされた元収容者のY氏です。ビクタン収容所に4年半収容されていた人物です。Y氏が収容中に今回の4人が入ってきたということですが、まず藤田容疑者小島容疑者そして渡辺容疑者の3人は非常に絆が強いとY氏が話しました。渡辺容疑者はボスと呼ばれているということですね。今村容疑者は「一匹狼」で違う時期に入ってきたということでした。渡辺容疑者と今村容疑者は北海道出身ということですが、「仲が良い」という印象はないとY氏は話しています。今村容疑者は収容所内で特殊詐欺グループの収容者に「オレオレ詐欺」をやらせていた。金持ちのリスト「タタキ」つまり強盗のリストがあったと。「カケ子」には残虐なビデオ見せて裏切らないように脅していたというふうに話しています。小川さん、この今村容疑者ですけども一匹狼ではありますが、こういった力でコントロールしていたということなんでしょうか?

そうですね恐怖政治のような感覚で動いていたと。中にはですね、渡辺容疑者と今村容疑者が仲良く親しくしていた時期もあったようなんですね。それがやはり中でどうしてもトラブルがあったんだと思うんですけども。お金の話ですかね。ちょっと離れている期間もあったようですね。

---ビクタンではお金がないと地獄だというふうにY氏は話しました。毎日の食事は主に米だけ、おかずは肉のない唐揚げ、衣だけということなんでしょうかね。何をするにもお金が必要、物価も高いので、お金がなくなる人が多い。物価が高い。例えばテレビ39インチ、フィリピンでは通常、およそ2万ペソ、大体5万円ぐらいで販売されているものなのですが、収容所の中では約5万ペソ、約12万円ということで倍以上の値段が収容所の中ではしますよ。ちなみにフィリピンの平均年収は48万円。お金を持っていたら何でもやっぱり手に入れることができる。

 私がY氏から話を聞くと、Y氏は4年半ずっと前からいたのですが、その頃はVIPルームも個室にしてもそれほど高くなかったのですが、この振り込め詐欺の集団36名が入ってきた時点でベッドが足らなくなる。中にはこの渡辺容疑者はじめこの4名はお金を持ってますから、個室に入りたい、エアコンのついてる部屋に行きたいとなると、どんどんどんどんこのビクタンの収容所の中の物価がどんどん上がっていく。お金を数百万って預けているものですから、この職員もですね、お金を持っているやつからはどんどん取ってやろうというところで、もう何でもかんでも物価が倍以上に上がってきたといったような話をしておりました。

---この容疑者がお金を持っていたのはもしかしたら詐欺で奪われた金が原資になっていたという可能性は考えられますか。

いやもちろんそうです。そのお金を日本からどういう方法かわかりませんけども、ハンドキャリーで持ってきているのか何かわかりませんが、お金がある程度ここに入る。入っているから、この者たちも収容所の中から振り込み詐欺なりの指示を出したりしてるわけですね。

「4人より上の、黒幕的な人間がいる」

---例えば職員にお金を渡して自由にする、そういったワイロも横行していたということだそうです。このお金に関してなんですけども、Y氏は日本に帰るにもお金が要るというふうに話しています。手続き渋滞が起きていた。手続きする人が大勢いたということですよね。お金を払えば順番を優遇してもらえるが、払えない人は滞在が延びてしまうと自分はコロナの影響もあり帰国まで4年半かかったと話しました。ギリギリの生活をしていたが、トータル4年半で1000万円使った。
私は帰国前に小島容疑者と会話をして、今後どうするのというふうに聞いたら、小島容疑者は「ここにいると金ばっかり取られるから、何とかして場所移りたい。日本にはもう帰らない」というふうに話していました。帰らないというのはどういうことなのかということですが、可能性として逃亡は可能なのかっていう話なんですが。Y氏は「僕がいる間に逃げた人がいた。脱走があると収容所内はロックダウン状態になるんだけどもその人が逃げたときはロックダウンがなかった。聞いた話によると、2000万円か3000万円を払って脱走を黙認してもらっている」とかやっぱりもうその管理が全然行き届いてないということはわかります。さらに国外脱出もということで、フィリピン人のパスポートは結構安く買える。ちょっと日焼けをしていてそれなりの体型ならフィリピン人として船の関係の仕事などで外国に出ることもできると聞いていたということで、このあたりがやっぱりフィリピンの抱えてる問題が浮き上がりましたね。

そうですねフィリピンだけじゃなくてですね、他の国でも実際にあるんですけども、現地の政府が正規に発行するパスポートですから、そのパスポートで国外に出ても、偽造のパスポートではないんです。ただ取り方が違法、写真は本人の写真が写ってますけども、他の国に入国するときにフィリピン人だからといってタガログ語をしゃべってみろなんていう入国管理局はないので、日本人が成りすまして第三国に出国するってことは可能ですね。

---この4人の容疑者はこの収容所の中から様々な詐欺を働き掛けていたわけですけども、この後どうする計画だったとか、どんなことが考えられますか

これは中に入っていたものの話を鑑みて考えるにはやはりここでもっと事件を起こして、お金を貯めて、2000万なのか3000万かわかりませんけども、そのお金でこの収容所から出て、本当の自由を得るためにこの収容所からお金を払って出て、偽造パスポートなりを購入し、第3国に行くということを考えていたのではないかなというふうには思っています。

---今後の捜査でそのあたりどこまで追及できそうですか。

この4人が指示役であったか、首謀者であったり主犯格だったのかということですね。間違ってもこのビクタンの収容所の中から今回の連続強盗事件が完結するとは思いません。当然ですけどリクルーターがいたりとか闇のアルバイトですね、アルバイトを雇うものいたりとか、この情報をちゃんと統括する者がいたりとか、あと実際にお金を運搬ですね、そういったことを指示する者がいなければ今回のこの犯罪は成立しないので、当然ですけどこの4人ではない4人よりもっと上にですね、黒幕的な人間がいる、いてもおかしくない、いるはずだと私は思っています。

---今後の捜査のポイントを教えてください。

現在、逮捕状出てるのは詐欺事件のこの窃盗事件ですね。キャッシュカードを盗んだ件ですけども、この本丸にはですね、強盗致死ですね強盗殺人事件があるのでそれを見据えて、この4人だけではなくてその黒丸黒幕ですね、その黒幕を追うあぶり出す作業、なかなか当初は完全黙秘で来るのかなと思いますけども、そのあたり押収した携帯電話、面会の簿冊、送金の記録等をですね、あらゆる捜査を経て解明していく、究明していくことが必要かなというふうに思います。