軍のクーデターをきっかけに、内戦が2年にわたり今も続いているミャンマー。去年まで祖国のために銃をとり命がけで軍と戦っていた男性が、難を逃れて大阪に。ミャンマーの悲惨な現状をカメラの前で初めて語りました。

国軍や警察によって2900人以上の市民が殺害される  「自由のために」民主派勢力の兵士として戦った男性

 2021年2月1日にクーデターが起きたミャンマー。政権を掌握した国軍は、民主化を求める若者たちに容赦なく銃を向けました。これまで国軍や警察によって2900人以上が殺され、1万7000人以上が拘束されたといいます(政治犯支援協会AAPP調べ)。
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 民主派勢力がPDF(People’s Defence Force)=国民防衛隊を結成して地上戦で対抗するなか、国軍は空爆や村の焼き討ちを行い、全土に広がる内戦状態が続いています。

 2年経っても民主化への道が見えない祖国を思い、大阪の街頭で訴えるのはポーチョーさん、31歳です。

 (ポーチョーさん 今年1月31日)
 「現地で戦う仲間たちと、無事に生きて再会する約束をしています」

 ポーチョーさんは、4か月前までミャンマーで民主派勢力の兵士として国軍側と戦っていました。もとはミャンマーの銀行で働いていたポーチョーさん。2年前の2月、突然のクーデターに驚き、平和的なデモに参加。民主化を訴えていました。
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 ところが2021年3月14日のデモで信じられないことが起こりました。ポーチョーさんの目の前わずか2mで、国軍が友人を撃ったのです。

 (ポーチョーさん)
 「クーデター後、私たち国民は平和的にデモ抗議をしていました。(デモが始まって)1か月後、私の目の前で17歳の男子医学生が銃撃され死亡しました。他にもけが人や死者を見ました。だから私は決めました。自分たちの命を守るため、自由のために、武器を持って戦わないといけないと」

 ポーチョーさんは2021年5月、民主派が設立したPDFに入りました。国軍と戦うため、ジャングルでのトレーニング、銃の組み立てや射撃訓練を重ねます。

 (ポーチョーさん)
 「初めて銃を持って、とても怖いものだと感じました。指一本で人の命を奪えることを知りました。このような銃を平気で国民に向けて殺害している国軍に対して、怒りと恐怖を感じました」
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 慣れないジャングルで国軍と相対し、弾丸が飛び交うなかでの戦い。

「日本でも飛行機の音が聞こえたら逃げようとしてしまう」

 去年10月、かつて国軍に抵抗し、日本で難民として暮らしていた父親が突然亡くなったため、来日を決めました。今は支援者の力も借りながら、大阪で難民申請をしています。

 (ポーチョーさん)
 「日本でも飛行機の音が聞こえたら、ジャングル同様に逃げようとしてしまう。それで、ここは日本だ、と思い直すことが何度もありました。空爆は直接当たらなくても、その衝撃で心臓が止まったりもしてしまう。その恐怖は忘れられません」

 日本に来てから、部隊の仲間が国軍に捕まり、銃殺された知らせが届きました。平和な日本に来た自分と、祖国で戦い続ける仲間たち。複雑な思いがあります。

 取材中、一本の電話がかかってきました。ジャングルで戦う兵士、23歳の後輩からです。

 (ポーチョーさん)「今の状況はどう?」
      (兵士)「国軍からロケット弾が撃たれている」
 (ポーチョーさん)「国軍が攻めて来たのか?」 
      (兵士)「1か月前に侵攻してきた。国軍側は300人ぐらいだ」
 (ポーチョーさん)「今いる地域はPDFと国軍、どっちが優勢なのか?」
      (兵士)「我々は地上戦は強いが、国軍は戦闘機があるから有利だ」
 (ポーチョーさん)「勝利するのは時間がかかりそうか」
      (兵士)「国際社会から(国軍への)圧力と(民主派への)支援を得られたら時間はかからない。必死に頑張っているよ」

国軍は非常事態宣言の半年間延長を発表

 クーデターから2年、今年2月1日に国軍は、クーデター時に民主派を抑え込むために発令した2年間の非常事態宣言を、半年間延長すると発表。国軍支配の長期化が懸念されています。
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 ポーチョーさんは今、平和への祈りを込めて、遠い日本で手を合わせます。

 (ポーチョーさん)
 「銀行で働いていたけれど、クーデターの後、仕事も失いました。人生を取り戻したいのです。今、私の人生は何もありません」