ロシアのプーチン大統領が150万人という大幅な兵員増加を示唆するなどウクライナ戦線はさらに長期化・激化の様相を見せようとしています。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は「1月から2月上旬までにロシアがベラルーシ側からキーウを再攻撃する」と分析。すでにアメリカ国防省はロシアがウクライナに総攻撃をかけようとしているとの情報をキャッチしているといいます。(2023年1月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――大胆予測は《ロシア、近くウクライナへ総攻撃か》一つ目の理由は「西側諸国から戦車などの武器供与が本格化するから」とありますが、中村名誉教授。

きょう二つの大きなニュースが入ってきました。一つは、「アメリカのCIAの長官が首都キーウを訪問してロシアの総攻撃に関する情報を直接伝えにいった」というニュースが先ほど。もう一つは(放送)30分前にアメリカの国防省が、「クリミアをウクライナが取り戻すためにあらゆる手段で支援します」と発表したんです。ですから4つの州を強制的に併合したロシア、そして2014年に併合されたクリミアまで今度は取り返し、それをアメリカが支援するというニュースが入ってきて、いよいよウクライナへの総攻撃に対して欧米も黙っておれないと。

これまで欧米から主に軍事支援として出てきたものは「旧ソ連製T72」という古い戦車でウクライナ兵士たちが慣れて使いやすいっていうことだったんですけれども、イギリスがイギリス製の戦車などを送り込むということで総攻撃に対し欧米も対抗していくというメッセージが出てきているわけですね。

―――CIAが伝えているということは信憑性が高いということですか。

総攻撃の情報をCIAがなぜ持っているのかというと、ロシアの連邦保安局職員の中にも反戦の人がいるんです。そういう人たちがどうも情報を流してるんじゃないかということも疑われています。

―――武器の供与はイギリスは「チャレンジャー2」という戦車、ポーランドなどは「ドイツ製のレオパルト2」を検討中だという情報もあります。

(三澤肇解説委員)「レオパルト2」はNATOに輸出され各国で採用されていますが、ドイツ政府の承認が要るんです。過去にもサウジアラビアにレオパルト2を輸出しようとしたときにサウジアラビア政府が反政府系の弾圧に使うんじゃないかということで、輸出断念した経緯があるんです。それぐらい厳格に審査しますんで、今、審査をしているところでしょうが、ドイツは過去に他国を侵略した経験もあって、世論も非常に厳しいです。

―――中村名誉教授、大胆予測の二つ目の理由は「ドローン兵器を提供するイランがロシア離れの動き」か。

ウクライナのインフラを攻撃しているのは、イラン製の「シャヘド136」が多いというのですが、そのイラン外相が先日「クリミアなど一方的に併合した地域は、ロシアと認めない」とトルコメディアに発言をしたそうです。昨夜入ってきたニュースで私もびっくりしました。

国際的に孤立するロシアを支援しているのは北朝鮮とイランと言われていて、ドローンがロシアに輸出されてたわけですけども、このタイミングでおそらく総攻撃を仕掛けるであろうロシアに対して、イランはちょっと距離感を持とうということだと思うんです。これはロシア国内でも大変な話題になっています。

イランがなぜこんなことを言い出したかっていうと、アメリカからイランに対して非常に厳しい経済制裁かかってますので、もっと経済制裁がかかるんじゃないかというところを、どうやら危惧したのではないかというふうに考えられます。ロシアには痛手、あとは北朝鮮しかいないっていうことになりますから。

―――ロシアはベラルーシと非常にいい関係を築いていて、ベラルーシからキーウを攻める、という話もありますけれども、ベラルーシとはどうなんですか。

ベラルーシの動きが悪いんです。昨日だったと思いますが、ラブロフ外相が直接ルカシェンコ大統領に会いに行ってるんです。ですからおそらく首都キーウへの総攻撃をベラルーシからもう1回狙っていく。その調整にラブロフ外相がルカシェンコ大統領のところにこのタイミングで行って説得しに行ったと思います。ベラルーシからキーウに出ていくことは認めるんでしょうけれども、ベラルーシ軍が関わることに対しては、ちょっと躊躇している状況なんですね。

―――三つ目の理由は「ロシア軍の内部に不協和音」。ロシア軍の兵士は現在115万人で、2026年までに150万人にするとプーチン大統領が決定するも、既に970万人のロシア人が国外に脱出して、深刻な兵士不足に陥りつつあります。970万人というと東京23区の区民ぐらいの人数だそう。

昨年2月からもう970万人、これはロシアの労働人口の13%に相当するんです、そんなに出ていってるんです。今週入ってきたニュースなんですけども、ロシアの連邦議会の下院で、出ていった人の残った財産、例えばアパートとか自動車とかを国が没収するという法案を今準備始めたというニュースも入ってきています。

脱出者の半分の人たちが、住んでいるアパートを売り払ってから出ようとしていて、いまモスクワの都心の分譲マンションが、6割も安く売られるようになった、つまり買い手がつかない状況なんでしょう。モスクワの空港に行くと、もうチェックインで長蛇の行列らしいです。

―――そしてロシア軍の中では「民間軍事会社・ワグネルが囚人などをリクルートして戦場に送っている」という話もありますが、その家族からの問い合わせが国防省にあってもゲラシモフ参謀総長は「そんなことは知らない」と言ったといい、もしかするとプリゴジン氏の「ワグネル」とゲラシモフ総長のいわゆる「正規軍」に溝があるんじゃないかと。

大きな溝があるみたいです。実はロシア軍といっても二つの組織、ワグネルと国防軍が両方戦ってるようなイメージで、指揮系統は全く別なんです。ワグネルには約5万人の兵士がいてその中の4万人が囚人とされ、恩赦として半年間従軍すれば罪を赦すということでリクルートされているといいますけれど、その家族や親族からすれば、戦地に行った息子たちが行方不明になったりするわけです。

国防省の方に問い合わせてもゲラシモフ参謀総長が「自分たちとは何も関わりのない組織で知らないよ」ということです。ロシア正規軍だと亡くなったときや怪我をしたときに補償があるんです。でもワグネルの場合はないですね。そういった違いがあるわけなんです。対立しています。ゲラシモフさんは、プリゴジンさんに対して、自分たちとは全く別の組織であると明言しているぐらい。戦果を自分たちのものにしたいんでしょうか。

―――そして、ウクライナメディアが伝えたゼレンスキー大統領の発言が話題になっています。18日の世界経済フォーラム・ダボス会議で「プーチン大統領が生きているかどうか確信が持てない」と発言したと報道されています。

記事によると「私は誰と何について話すべきかよくわかりません。時々、クロマキーに登場するロシアの大統領が何者なのかわからない。彼が生きているのか、彼が決定を下すのか、誰が決定を下すのか、私にはよくわかりません」と。中村名誉教授によると「プーチン政権は既に機能していない」の比喩表現ではないかと。

実は19日、ロシア正教会で「神現祭」という洗礼の儀式があるんですね。冷たい水に入って魂を清める儀式で、これまでプーチン大統領は毎年ずっと出てきたんですけども、ペスコフ大統領報道官は、「プーチンさんは儀式に参加しましたよ」って言ったんだけれども、写真も動画も出てこない。ということでゼレンスキーさんが話した。そういう発言の裏には、いずれにしてもプーチン政権はもう崩壊状態にあり、中でぐちゃぐちゃしてるんじゃないかということなんです。

―――さて、日本との関係です。西側諸国、内部から追い詰められたプーチン大統領が敗戦濃厚となれば、「核攻撃、日本に向けた新ICBMも」という話があるんですか。

非常に怖い話が今出てきていまして。問題、G7会議です、5月に広島であるんですね。そこで当然、ウクライナ支援問題が出てくるわけで、日本は主催国ですからまとめ役なんです。ゼレンスキー大統領がもしかしたら広島を訪問するかも知れない。そのタイミングで最悪の場合、もしかしたら日本に対して、サルマトに核弾頭を乗せて打つんじゃないか、という危険性が指摘されてるわけなんです。

―――メドベージェフ前大統領も日米首脳会談を巡って「岸田総理は切腹するしかない」と発言しています。日本も決して無関係ではないということですね。