大阪の淀川河口付近で発見され、その後、死んでいることが確認されたクジラ。1月18日には、流れ着いた河口付近から移動させ、ガス抜きや学術調査などが終わりました。19日にも紀伊水道沖へ出航し、海に沈められる予定です。この「海洋投棄」はどういった作業が行われるのか。海洋生物の専門家で大阪市立自然史博物館外来研究員の鍋島靖信さんに聞きました。
海洋投棄は「1例もない」「手間が非常にかかる」
ーー大阪市はクジラを海に沈めるというものになりましたが、どのような受け止めでしょうか?
「陸上の方が処理が早く済むっていうことと、骨格は後で掘り出せば標本にもなるし、そっちの方がいいのかなと思っていたんです。今まで流れ続けたクジラは全部陸上へ埋めて処理していました。今までのノウハウが揃ってるので早いかなと思ったんですが」
―ー海に沈める処理は今まであまりやってこなかったということなんですか?
「1例もやったことがないです。海に沈める方法ですと、漁業してない海域まで行って沈めないといけないので、手間が非常にかかるんですね。腐った肉片や油が沈めたところから上がってきますので漁業をやっているようなところでは非常に漁業の支障になるということがあったから陸上処理したことが多かったんです」
体内に溜まるガス…一気に噴き出す恐れ「一刻も早く処理を」
ーークジラの体内ではどんどんガスがたまってきている状態なのでしょうか?また爆発する可能性もありますでしょうか?
「皮の腐ったところからガスが噴き出したり、肛門辺りからガスと腐った中身がダラダラと出てきたりする状態が起こるんですね。一刻も早く処理せないかんっていうことがあったんです」
“底引き網漁”に影響「少なくとも300~500kmぐらい沖へ」
ーー19日にクジラを紀伊水道沖に沈めるということなんですが、どれぐらい沖まで持っていく必要があるんでしょうか?
「大阪からですと、少なくとも300~500kmぐらい沖へ行かないと、ダメだと思います。紀伊水道って(地図上に)書いているところは深さが70mより浅い。色々な漁業がされていて、そこに沈めると、底びき網に引っ掛かり、腐った肉が網に入ってきたりします。できたら黒潮のあたりまで行くと、深さも1000mぐらいあると思うので、その辺まで行って重りで海底に沈めれば、問題はないんじゃないかと思います。大体は費用的にも安くて骨格を標本に利用できたりするので、陸上の処理の方が早いですね。あと、和歌山県や徳島県が沖合で漁業していますので、大阪市が和歌山や徳島県と調整をして漁師さんたちの了解も得られているのかなと思うんですけどもかなり法手続きも大変です」
冬に”荒れる海”良い気象条件での出航を
ーー海洋投棄なんですが、する際はどのような設備や体制が必要でしょうか?
「太いロープや鎖で重りをつけるなど作業する際に、えい航している間、他の船が突っ込んでこないよう注意を見回る警戒船などが必要だと思います。海上保安庁がいろんな航行の安全のために指示をすると思うのですが。今から冬に入ると海上の風が強く海が荒れます。家が見えないぐらい大きな波が起こるんですね。よほど良い天気を選んで作業をしないとやっている船も危険です。すぐに出港するということですが、天気などを見て、出航しないとダメですね。時化などが予想されるとしばらく港の中で出航を見合わせて待機しないといけないと思います」