今年もあと数日。クリスマスや新年を迎える準備と街が華やかに彩られる時期。そんな雰囲気に包まれた大阪・梅田の中心部、細い路地を入った場所に“そこ”はありました。「貸し自習室」です。そこに集まる大人たちに聞きました。『あなたはなぜここに来たのですか?』。貸し自習室の1日を定点観測しました。
「大人が集まる自習室」…勉強する人たちの様々な目標
大阪市北区にある「勉強カフェ大阪うめだ」。12月11日(日)の午前7時前、1人目の利用者がやってきました。朝が早いうちはスタッフが来ていないので、利用者は専用のアプリで部屋に入ります。
2人目は不動産関連の仕事をしている西浦慎一郎さん(30代)。
(西浦慎一郎さん)
「(Qなぜここに来たのですか?)試験が来年5月にあるのですが、やっぱり朝型に合わしていこうと思いまして。休みの日はこちらで勉強するようにしております」
西浦さんが目指しているのは「不動産鑑定士」。来年5月の試験に向けて現在猛勉強中です。
(西浦慎一郎さん)
「休日だとやっぱり8~10時間くらいしないと、不動産鑑定士の合格者の皆さんはそれくらいしているので。それに合わせてピッチを上げていこうと思っております」
西浦さんの20分後にやってきた清水明夫さん。
(清水明夫さん)
「我々は年寄りだから、朝早く起きているわけだから、むしろ行くところがないような感じですよね。図書館ですと午前9時でしょ。家で勉強してもいいんだけれども、ここに来るとみんなピリッとしているから集中度がちょっと上がりますわな」
清水さんは御年71歳。現役で「船の設計士」をしていますが、ここ数年は「行政書士・司法書士」など法律を扱う資格の勉強を続けているといいます。
(清水明夫さん)
「(Qなぜ勉強するのですか?)韓国で訴えられてね。設計外注の会社からね。刑事事件で3年くらいもめたわけですよ。それとか他にもいろいろあって、法律も勉強しておかないと太刀打ちできないなと」
家や他の場所でも勉強を欠かさない清水さん。ここに通う理由がもう1つありました。
(清水明夫さん)
「ここのコーヒーがうまいんやな。他はインスタントやから。おいしいんです、意外と」
午前9時50分、スタッフがやってきました。テーブルの除菌に清掃、コロナ対策にも気を遣います。
午前10時すぎ、ブースは半分ほど埋まっていました。
(中小企業診断士を目指す岡部泰光さん(25))
「いい環境を作ってくれている中でしっかり勉強ができているので、合格につなげられるような結果を出せたらと思っています」
(保険会社に勤務する石川修也さん(23))
「皆さん各々自分の資格を目指している感じがあって、話すわけじゃないですけれども刺激を受けて、こちらも頑張ろうという気になるので」
不安定な社会情勢で『スキルアップ/学び直し』をする人が増加
「勉強カフェ大阪」の料金は、時間無制限で使える「フルタイム会員」が人気で月額1万1550円。ほかにも、平日夜のみ利用できる「ナイト会員」は月額9570円、月2回利用できる「フレックス2会員」は月額4620円など、さまざまな料金体系があります。
会話も飲食もOKなラウンジもあります。勉強カフェ大阪うめだ店の場合、平日は午前5時~午後11時まで、土曜日は午前5時~午後9時まで、日曜日は午前5時~午後8時まで開いています。
コロナ禍や物価高など社会情勢が不安定になる中でスキルアップを図る人が増えているといいます。
(勉強カフェ大阪 荒井浩介オーナー)
「学んでリスキリング(学び直し)することによって自分の能力が増えて、こういうこともできますよこういうこともできますよとなれば、仕事の選択肢を増やしていけるので、安心感にもつながりますし」
休日はお昼過ぎにピークを迎える
午後0時。日曜日はお昼を過ぎるころに利用者のピークを迎え、混雑してきました。ただ西浦さんの姿が見えません。休日は10時間勉強すると話していたのに…。
時間を巻き戻してみると、午前9時30分に西浦さんが荷物をまとめていました。
(西浦慎一郎さん)
「(Q今日は10時間勉強しない?)今から料理教室に行ってきます」
西浦さん、勉強の合間に料理の腕前をあげるため料理教室に通っています。ベテラン主婦とともにフライドチキンやブロッコリーのポタージュなどを作ったといいます。
(作った料理を食べる西浦慎一郎さん)
「これで午後からも勉強頑張れそうです」
午後1時、西浦さんが自習室に帰ってきました。
(西浦慎一郎さん)
「結構楽しかったですね。(Q眠たくならない?)正直ちょっとやられそうなんですけれども、眠気が来そうなんですけれども頑張ってやっていきます」
飛び込みで「1時間550円」で利用することも可能
午後3時、スタッフから説明を受けていたのは広告代理店に勤める杉山千穂さん(40代)。この日は飛び込みで利用することになりました。1時間550円で利用することができます。
(杉山千穂さん)
「(Qなぜここに来たのですか?)大学院の社会人コースがあるんですけど、授業で課題が出るので。買い物のついでにちょっとだけ勉強して帰ろうかなと思って、調べて来ました」
『自宅は誘惑が多い。自習室に行くと自分もやらなきゃという気になる』
午後4時、ラウンジの奥の席でひときわくつろいでいた女性。声をかけてみました。
(女性)
「(Qなぜここに来たのですか?)今は全然勉強していなくて、ここにある本を読んでいただけなんですけど」
証券会社で営業の仕事をしている内堀加奈さん(31)。自習室に通い続けて4年ほどにもなるといいます。
(内堀加奈さん)
「自分の“第二の家”みたいな感じで。家で私勉強できないので、遊んじゃうので、なのでここに来て気分転換というか」
なぜ勉強できないと言い切るのか?内堀さんの“第一の家”である自宅にお邪魔しました。
(内堀加奈さん)
「(Q自宅での過ごし方は?)普段はベッドでゴロゴロしているか、ここでこうやって座ってコーヒーを飲んだりテレビを見たりとか」
リビング脇の寝室は参考書の横にマンガがずらり。
(内堀加奈さん)
「家は誘惑が多いですね。だめですね。こんな感じです」
内堀さんが“第二の家”を頼りにしている理由が垣間見えました。
(内堀加奈さん)
「そんなできた人間じゃないので、やっぱり誘惑があるとそっちになだれ込んでしまうので。でも勉強カフェに行くと周りの人たちも勉強していらっしゃるので、自分もやらなきゃという気になって、勉強したりという感じですね」
午後8時、閉店時間です。転職のため、スキルアップのため、自分磨きのため。それぞれ夢や目的は違いますが、同じ空間・時間を共有するため、この日30人がここに集いました。