日々進化を遂げるAI。キーワードを入力するとAIが自動で一瞬でイラストを描いてくれるというアプリも登場していて、これまで人間にしかできないと思われてきたクリエイティブ分野にまでAIが進出しつつあります。果たしてAIは人間の仕事を奪うのか。イラストレーターを目指す専門学校生に話を聞きました。

専門学校生の不安「積み上げてきた技術も無駄になるのかな」

 漫画家やイラストレーターを目指す「大阪アニメーションカレッジ専門学校(大阪府吹田市)」の専門学校生。ポーズを取ったモデルを前に筆を走らせます。
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 最近、主流になってきたデジタルイラストも授業に組み込まれています。
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 しかし専門学校生たちには不安があります。

 (19歳の専門学校生)
 「AIが考えてくれてイラストが出てくるみたいな。思っていたよりすごい出来ですごくびっくりしましたね」
 (19歳の専門学校生)
 「AIはワンクリックでできると思うので、自分の技術よりも(AI技術が)上がっていったら、今まで積み上げてきた技術とかが無駄になるのかなと」

 ワンクリックで絵を描くとは一体どのようなサービスなのでしょうか。

文章を送るとAIが一瞬で絵を描いてくれる

 LINEアカウント「お絵描きばりぐっどくん」に文章を送ると、AIが描いてほしい絵を描いてくれるということです。
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 例えば「スパゲッティを食べる熊」と送ると…。
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 (記者リポート)「すごい。すぐ出てきた!」

 AIが描いた「スパゲッティを食べる熊」には、ミートソーススパゲッティのようなものを小熊がつまみ食いしている様子が描かれています。AIを使えばイラストが一瞬で出来上がるのです。
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 仕組みはこうです。まず世の中にある何十億もの画像を言葉と結びつけてAIに学習させます。そのAIに「スパゲッティを食べる熊」と送ると、AIが言葉を解析し、スパゲッティや熊の画像の特徴を元にイラストを作り出すのです。
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 さらにこんな使い方も。「ひまわり」が代表作のオランダの画家・ゴッホ。「ゴッホが描く通天閣」と入力すると、ゴッホ風のタッチで通天閣のようなタワーが描かれました。左下にはひまわりも咲いています。
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 続いては「富嶽三十六景」で知られる浮世絵師・葛飾北斎。「葛飾北斎が描くアイドル」と入力すると、江戸時代には存在しないアイドルの浮世絵が出てきました。

『AI』と『専門学校生』がイラスト対決!

 専門学校でキャラクターイラストを専攻している前原羽希さん(20)。将来の夢はゲームのキャラクターをデザインすることです。
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 (前原羽希さん)
 「(Qこのイラストでどれくらいかかる?)これは7時間ですね。急いで描いたやつなので、割と速いと思います」
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 一瞬でイラストを描けるAIに仕事が奪われるのではないか、と心配している前原さん。AIと人間、どちらが優れているか試してもらいました。お題は『絵を描いている犬』です。
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 前原さん、犬の写真を参考に筆を進めていきます。

 (前原羽希さん)
 「(Q素早く描いているように…)見えますか?でもAIだったら秒単位で出てくるじゃないですか」
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 前原さんが描くのはベレー帽を被った犬と筆を持った犬。

 (前原羽希さん)
 「このへんでやめておきます。もっと線きれいにできたかなとか、もうちょっと要素入れられなかったかなと思っています、今」

 完成までにかかった時間は約30分でした。

 続いてAIのチャレンジ。先ほどのLINEアカウントに「ベレー帽を被った犬」と送ると、わずか6秒で絵が作成されました。
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 コーギーのような犬が赤いベレー帽を被っているイラストで、毛並みや瞳も細かく描かれています。

 (前原羽希さん)
 「私が『ベレー帽を被った犬を描こう』と思った瞬間にAIに頼んでいたら、AIのほうがたぶん速いので、スピードだけでいえばAIのほうが勝っていますよね」
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 一方で「筆を持った犬」とAIに送って出てきた絵は、よく見てみると筆が変な形になっています。

 (前原羽希さん)
 「モノをモノとして見る力は人の方が勝っているんじゃないかな。人間が描いているから筆は筆の形だし」

 スピードはAIの圧勝ですが、クオリティに関しては人間に分があるようです。
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 ただ、そのクオリティも近い将来、人間を追い越すとみられていて、イラストを教える講師も頭を抱えています。

 (大阪アニメーションカレッジ専門学校 東谷由紀講師)
 「本当はAIとかに負けてほしくないんですけど、でも需要があって『簡単だからこれを使いたい』というのが増えたらもう(AIに)負けちゃうのは仕方ないことなので、ほかにどういう道が残っているかを探さないといけない」

画風を学習してイラスト描くサービスが話題に

 AIが描くイラストが物議を醸したケースもあります。今年8月にサービスを開始した「mimic」。AIに特定のイラストレーターの画風や絵柄を学ばせると、まるでその人が描いたかのような新たなイラストを生み出すことができるのです。
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 (ラディウス・ファイブ 東耕平さん)
 「これは僕が手描きで描いた絵になります」
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 イラストレーターとその画風を学んだAIのイラストを比べてみるとまさに瓜二つ。どちらがオリジナルかわかりません。
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 元のイラストを描いた東さんは。

 (ラディウス・ファイブ 東耕平さん)
 「(QAIが自分の絵の特徴を捉えているなというのは?)ありますね。自分はこの目の描き方をするなみたいな。こういう形をよく描くなとか。目がけっこう縦長だとか、顔の形もだいたいこういう形でよく描くなとか、自分がよく描く構図や癖がすごく出ているなと感じます」

『悪用すれば第三者に画風を盗られる』批判も…現在は厳しい審査を行い運用

 開発責任者は様々な反響があったと話します。

 (ラディウス・ファイブ AIエンジニア 菅原健太さん)
 「賛成意見としては『自身の創作活動の助けになる』『おもしろい』といったご意見をたくさんいただいています。一方、否定的な意見としましては『勝手に自分のイラストを他の人に学習されるのではないか』という声がリリース当初はありました」

 このAIを悪用すれば第三者に自分の画風を盗られるとの批判が相次ぎサービスを一旦停止。現在は利用者本人のイラストかどうか厳しくチェックしています。

 (ラディウス・ファイブ AIエンジニア 菅原健太さん)
 「ご自身で描いたイラストレーターさんしか使えませんという形にして、弊社でツイッターアカウントをひとりひとり審査を行い、許可を出した人しか使えないので、今はそういった不安の声はない状態になっています」

人とAI「こっちはこっち、あっちはあっちでできたらいいな」

 イラストレーターを目指す専門学校生の前原さんはAIを脅威に感じているものの、夢は変わりません。

 (前原羽希さん)
 「『絵を描いていく絵師さん』と『AIを使って絵を描く人』で、違う職業になったらいいんじゃないかなと。こっちはこっち、あっちはあっちでできたらいいなと思います」

 クリエイティブな分野にまで進出し始めたAI。人間の仕事を奪うのか、それとも上手く活用し共存できるのか、今後が気になります。