アメリカで変わろうとしている「銃」と「大麻」。銃に関して、州ごとに購入・販売に条件があり、例えばカルフォルニア州では21歳以上・犯罪歴を調査済・訓練コース終了などの条件を満たしていれば銃の購入が可能です。一方で銃撃事件が多発していて、去年、銃が原因で死亡したアメリカ人は過去最悪レベルの2万803人に上っています。大麻に関しては、現在21の州とワシントンD.C.では完全合法となっています。その一方で医療用のみに使用可能の州もあります。こういったアメリカの最新事情を知るべく、毎日放送の大吉洋平アナウンサーが現地取材を行いました。
1か月に約60丁が売れる郊外の銃販売店…オーナー『自分の身をどう守るか』
11月19日、アメリカ西部コロラド州のナイトクラブで5人が死亡、25人がけがをするという銃乱射事件が発生しました。今年5月にはテキサス州の小学校で乱射事件が起きて21人が死亡。教育現場が惨状になりました。
アメリカで止まらぬ銃撃事件。銃による死者数は2022年1月~11月初旬にかけて1万7000人以上(自殺を含まず)となっています。年間の死者数が過去最多レベルだった去年に迫る勢いです。
「銃規制」に関する課題は今回の中間選挙でも大きな争点となりました。民主党のバイデン大統領は規制を強化する考えを示していますが、「自衛のためには銃は必要」だという声も多く、国内の意見は分断を深めています。
そんな銃の取り扱いに関して、実はここ最近新たな動きが起きているということで、今回取材班はロサンゼルス郊外の銃販売店「FORTUNE FIREARMS」へ向かいました。
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「銃だらけですね。これは全部本物ということですよね」
日本人にとっては見慣れない光景だと思うのですが、どんな価格帯で販売されているのでしょうか。
(銃販売店オーナー ブランディ・ジョセフさん)
「平均的な銃は500~600ドル(約7万~8万4000円)ぐらいね。高いのは1000~2000ドル(約14万~28万円)かな」
この店では1か月で約60丁が売れるそうです。一般的に都市部よりも人口密度が低く警察の数が少ない田舎に住んでいる人、白人男性、そして共和党支持者などに銃所持者が多いといわれるアメリカ。関係者の多くを白人男性が占める銃産業ですが、オーナーのブランディさんは黒人女性で初めて銃販売のライセンスを取得しました
(銃販売店オーナー ブランディ・ジョセフさん)
「(Qなぜこの銃販売店を始めたのですか?)以前は女性が銃に関して興味を持っても情報が無い業界でした。そして銃の業界に関わる黒人、さらには女性は圧倒的に少なく、その状況を変えたかった。(Qここ最近、銃を持ちたいという女性の需要は高まっていますか?)その通りよ。パンデミックを受けて、スーパーなどでケンカや暴動などがあって、社会が不安定になり治安が悪くなっているの」
さらにブランディさんは、銃の販売だけではなく、適切な銃の取り扱い方や射撃の指導も行っています。最近は女性の参加者が増えているそうです
(レッスン参加者)
「同居の夫は銃の使い方を熟知していますが、いつもそばにいるわけではありません。自分が家族を守るために扱い方を知っておく必要があります」
(射撃指導を見た大吉アナウンサー)
「大変な振動というか衝撃というか。胸あたりにドーンと響いてくる」
今回の中間選挙においてもそれぞれの意見が分かれる銃規制。銃の販売を行うブランディさんの考え方を聞きました。
(銃販売店オーナー ブランディ・ジョセフさん)
「銃所持に関して私は中間の立場です。持ちたいと思う人には持てる権利があってしかるべき。それが危ないことかどうか誰にも言う権利はない。例えば、誰かが家に侵入してきたときに、(銃を持たずに)クローゼットに隠れてただただ祈るべきとも誰も言う権利はない。自分の身をどう守るか、その選択はみんなにあるべき」
『友人の誕生日を祝うため』『ステロイドの代わりに』嗜好品や医療用として大麻を吸う人々
続いて取材したのは日本とは大きく異なるアメリカの大麻事情です。
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「2018年にカリフォルニア州で大麻に関するルールが緩和されたことを受けて、ロサンゼルスでは大麻を取り扱うお店がオープンしているんですね」
バイデン大統領は10月6日、大麻の単純所持で有罪判決を受けた人全員に恩赦を与えると発表。しかし一部の共和党議員はこれに反発しています。大麻を巡ってもそのスタンスは分断。アメリカでは一部の州で既に大麻は合法化されていて、バイデン政権下では大麻の取り扱いに関しては寛容な動きがみられます。
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「雑貨屋さんとかいろんなアロマテラピーなんかを置いているお店のような雰囲気が漂ってますね。ただ、入ってきて真っ先に思うのは香り、匂いですね…。今まで嗅いだことがないいぐさの強い匂いというか、そういう匂いがこの部屋には漂っています。若い方が多いですが賑わっていますね」
大麻ショップ「THE ARTIST TREE」。店内入ってまず目に付いたのが、こちらのピンク色の照明が当てられた部屋。
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「けっこう温度管理としては涼しいです。光が当てられていて、たくさんの植物が並んでいますけれども…」
(大麻ショップスタッフ ブリー・アイクナーさん)
「育てているのは大麻草です」
室温が管理された部屋で大麻草が販売用として育てられていました。
さらに店内にあるのは大麻草だけではなく…。
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「テーブルを見てください。これがマリファナ、大麻ということですよね。ドキっとしてしまうんですけれども、乾燥した葉っぱなのか花なのか、そういったものがガラスケースの中に入っています。このテーブルだけでもいろんな種類があって、それぞれに説明が書かれていますし、奥にもたくさん並んでいますね」
こちらのお店で売られている乾燥大麻の種類は100種類以上。1パッケージで30~80ドル(約4200~1万2000円)という値段で売られていました。
(大麻ショップスタッフ デイビット・ハートストーンさん)
「お客さんがどういうものを求めているのか聞いて、我々が好みに合わせてセレクトします。さらに2階で乾燥大麻を吸うこともできます。安全な環境で楽しめますよ」
アメリカでは嗜好用としての大麻が21の州とワシントンD.C.で合法化。ロサンゼルスでは、自宅で楽しむのは合法ですが、公共の場で吸うことは違法です。特別に許可されたお店に限っては、そこでの大麻の喫煙が認められています。
(客)
「友達が誕生日なんだ。誕生日の友達がお酒を飲まないので大麻で祝うんだ」
「私はNYの出身で、地元に帰ると手軽に買えるこのお店が恋しくなるの。東海岸は取り締まりが厳しい場所が多いわ」
(大麻ショップスタッフ デイビット・ハートストーンさん)
「ここが2階のラウンジです。大麻を購入して楽しんでもらえます」
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「たばこを吸うように大勢のみなさんが席について、喫茶店でコーヒーや紅茶を楽しんでいるような雰囲気が広がっていますが、彼らが吸っているのは大麻です」
(大麻ショップスタッフ デイビット・ハートストーンさん)
「大麻が悪だというステレオタイプは今もなお存在する。しかし、カリフォルニア州では、例えば薬物中毒者がそこから立ち直るために大麻だけの使用は続けて薬物から脱するという人々もいる」
(客)
「嗜好用だけじゃなくて医療用の目的としても使っています。(Q医療用ってどういうことですか?)関節炎などの症状があって、ステロイドの代わりに大麻をつかって痛みを和らげているの。パンデミックになってからよく吸うようになりました。家にいても何が起きるかわからない不安から吸う量が増えたの」
(毎日放送 大吉洋平アナウンサー)
「ロサンゼルスの人々にとって大麻とはどんな存在なのでしょうか?」
(大麻ショップスタッフ デイビット・ハートストーンさん)
「大麻は重要なものです。リラックスするためのものが他の州だとアルコールやたばこだったりしますけど、大麻は新しい選択肢です。新しく選ぶことができる自由はとても大切です」