旧統一教会をめぐりまた新たな問題が浮上しました。信者間で子どもを譲り渡す『養子縁組』の実態について、元2世信者の小川さゆりさんにも話を聞きました。
(岸田文雄総理大臣 11月8日)
「(救済法案について)今国会を視野にできる限り早く法案を国会に提出すべく、最大限の努力を行うことと致します」
旧統一教会の被害者救済に向けて、悪質な献金などを規制する法案について、11月18日にも政府与党案が示される中、教団を巡って今また新たな問題が浮上しました。
11月16日に開かれた野党のヒアリングに参加した元2世信者が口にしたのは…。
(旧統一教会 元2世信者)
「旧統一教会では『家庭は子どもがいて初めて完成する』という教えがあり、すでに複数人子どもがいる家は、新たに妊娠した場合、子どもに恵まれない信者家庭へ養子へ出すことを推奨されることがあります。初めから子どもを養子に出す前提で妊娠する人もいると聞いたことがあります」
旧統一教会の信者間で子どもを譲り渡す実態があるというのです。旧統一教会関連の出版社から2014年に出されたハンドブックについて全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は次のように話しました。
(全国霊感商法対策弁護士連絡会 阿部克臣弁護士)
「『天から子宝の恵みを受けた家庭は、その恩恵を子女の授からない家庭にも分かち合う責任があります』『誕生の前から子女を捧げようと心がけることが大切です』『捧げる家庭は妊娠前、あるいは妊娠後のできるだけ早い時期に相手の家庭と約束を交わし、養子の準備を進めていくことが理想的です』ということが書いてあるんですね」
つまり、信仰や教義の下、生まれる前から子どもに恵まれない家庭へ養子に出すことを推奨するかのような記述が確認されたというのです。阿部弁護士には複数の2世信者などから養子縁組についての相談が寄せられているといいます。
(全国霊感商法対策弁護士連絡会 阿部克臣弁護士)
「一言でいうと異常だと思いますね。子どもの権利とか子どもの福祉とかそういうことが先ではなくて、まず神に捧げるという教義・教えがあって、そのために養子に出す、そのために子どもを作るということですから」
教団側にこの養子縁組について取材すると、教団が紹介する形で「1981年から去年末までに745人が養子となった」と明らかにしました。
(教団側)
「養子が欲しい人がいて、子どもをわけてもいいという信者がいる。そのそれぞれを紹介しているということ。あっせんしているつもりがない。大半の家庭が幸せになっている」
11月16日の野党ヒアリングに参加していた元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は次のように話しました。
(旧統一教会・元2世信者 小川さゆりさん(仮名))
「子どもたちの人生がこんなカルト教団に左右されていいのかっていう、私はすごく怒りを感じています」
実は、さゆりさんの家でもきょうだい2人が養子に出されていたというのです。改めて11月17日にMBSはさゆりさんに話を伺いました。
(旧統一教会・元2世信者 小川さゆりさん(仮名))
「(Qきょうだいは何人だった?)私は戸籍上6人ですね。実質6人きょうだいでして。ただ育ってきたのはずっと4人きょうだいで育ってきましたね。(Q養子に行ったきょうだいのことは覚えている?)おなかにいた頃からおなかを触ったりだとか、きょうだいが生まれてきてくれることがすごくうれしくて、早く会いたいなという気持ち。生まれた赤ちゃんもかわいいし、一緒に暮らしたいなという気持ちは強く思っていたので、(きょうだいを)養子に出すということが自分にとってすごく悲しかったなという思いはありますね」
きょうだいが6人から4人へ…。幼いながら養子へ出されていくきょうだいの記憶は鮮明です。
(旧統一教会・元2世信者 小川さゆりさん(仮名))
「(Qなんだかちょっと異様な…)普通ではないですね。すごく腹が立っていて。そこに子どもの事情や気持ちは一切なくて。3人まで普通に生んでいて、『それ以降は養子に出します』とか、そういうことって子どもの人権が無視されている問題だなと思います」
数年前に養子となった妹にも会ったことがあるというさゆりさんですが、教団側がすすめた「養子縁組」は正常な家族のあり方なのか。今も怒りは消えないとしています。