広瀬アリスさんとあいみょんさんが出演するCMで脚光を浴びたツリーハウス。ピンチだった絶景スポットをチャンスに変えようとする町おこしの舞台裏に迫りました。

 京都府の北端・日本海側に位置する京丹後市久美浜町。夏は海水浴客で賑わい、冬はカニや牡蠣などの新鮮な海の幸を楽しむことができる豊かな自然に囲まれた町です。一方で人口は今年9月時点で8976人。そのうち40.93%が65歳以上で過疎と高齢化に悩まされています。

 そんな久美浜町で密かに話題となっている場所があるといいます。

 【Instagramより】
 『最高のロケーションでした』
 『子どもの頃に憧れた絵本の世界そのまま』

 取材班がさっそく向かってみました。なんと話題の場所には陸路ではなく、久美浜町にある宿のツアーに申し込んで、シーカヤックでしかたどり着けないのです(※シーカヤックでの上陸は現在(冬期)は行っていません)。学生時代、カヌー部のマネージャーだったという記者ですが…。

 (岩の間をシーカヤックで進む記者)
 「かなり狭いです。あーやばい」

 漕ぎ続けること20分、ついに話題のものが見えてきました。日本海を見下ろす場所にある高さ約16mのツリーハウスです。らせん階段や展望台など思わず冒険心をかきたてられる空間がSNSなどで話題を呼んでいたのです。
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 その人気に火をつけたのが広瀬アリスさんとあいみょんさんが出演して去年5月~11月に放送されたキリンビールのCM。さわやかな緑に囲まれた開放的なこのツリーハウスが商品のイメージにぴったりだったためロケ地に選ばれ、CMが放送されてから美しい景色を一目見ようと全国から観光客が海を渡って訪れるようになったのです。

 地元でツリーハウスを管理する蒲井・旭活性化協議会の古橋五郎会長に案内してもらいました。

 (蒲井・旭活性化協議会 古橋五郎会長)
 「(Qこの手すりは?)手すりはキリンビールが付けてくれたんです。CMで使うために。デッキや階段も付けてくれたんです。(Qロケ地に選ばれた理由は?)僕が聞いている範囲では、海の近くのツリーハウスがここにしかない」

 (記者リポート)
 「ここでCMに出演していた広瀬アリスさんと同じように飲んでみたいと思います。きれいな景色を見て飲むビール、最高です」

 元々この久美浜町のツリーハウスは、2008年に京丹後市が町のシンボルにしようと830万円以上かけて整備したものです。しかし、気があったのも束の間、やがて客足は途絶え、潮風の影響などで徐々に劣化が激しくなり、陸側からアクセスできる遊歩道も土砂崩れで通れなくなってしまいました。行政や地元で取り壊しも検討していたところにCMの話が舞い込み、ビール会社が撮影のためツリーの修復費用を出してくれたのです。

 (蒲井・旭活性化協議会 古橋五郎会長)
 「(市が)活性化のシンボルということで建ててくれたんで、それをつぶすということは寂しいなと思って」

 今、久美浜町ではCMで脚光を浴びたことをきっかけにツリーハウスを再び町のシンボルにできないかと考えています。子どもはもちろん大人の憧れを満たしてくれるツリーハウス。実際に全国の自治体などが名物として町おこしに取り組んでいるのです。

 (蒲井・旭活性化協議会 古橋五郎会長)
 「キャンプ場を作ろうかなと。キャンプをしてもらって、前の海で泳いでもらったりして、思い出作りをしてもらおうと計画しているんです」

 古橋さんたちは今年9月から目標額155万円のクラウドファンディングで資金を集め、ツリーハウスへつながる遊歩道やキャンプ場などを整備しようと計画しました。

 地元で観光業を営む住民も期待を寄せています。

 (風蘭の館 濱上誠オーナー)
 「CMが終わってからは電話がものすごくあったんですけど、『カヤックに乗ったことがないので』とかで(ツリーハウスに)行けない人がたくさんいたので。キャンプ場ができることで、たくさんの人にツリーハウスのよさを知ってほしい」

 ツリーハウスを再び町のシンボルに。起死回生の一手であるクラウドファンディングは目標金額を達成したということで、今後楽しみ方の幅が広がりそうです。