自民党の副大臣が旧統一教会や関連団体が求めた「推薦確認書」に署名していたことが相次いで発覚しました。この推薦確認書は事実上の政策協定とされ、旧統一教会が掲げる政策に賛同の意思を示したことになります。副大臣という与党の要職が選挙協力を引き換えに一宗教団体との根深い関係を結んでいた実態が改めてクローズアップされる中、消費者庁の霊感商法検討会委員を務める菅野志桜里氏は「自民党のあさましさが可視化された」とバッサリ。また日本の信者から搾取した献金を韓国に送金したり、日本の女性を韓国に嫁がせたりきた旧統一教会と自民党との関係の深さを指摘し「どうやって関係を絶つかが問われている」と厳しい視線を向けました。(2022年11月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――岸田内閣の支持率はJNN世論調査で3ヶ月連続で最低支持率を更新していて、不支持が57.7%、支持が39.6%で初めて40%を割り込みました。菅野さんはどのように分析されますか。

そうですね。旧統一教会問題で被害者を救済し、自民党との関係を明らかにして関係を断つという方針の腰が定まらない現象が次々に起きているということが支持率の低下にも繋がっているんじゃないかと思います。特に法改正については、54項目の質問というように、難しい理由を主張するんですけれども、自民党としてそれを乗り越える解決策や提案がないというところも響いているんじゃないかと思います。

―――方向性は見えているが、なかなか定まらないのはどうしてでしょう。

やはり、自民党総裁である岸田さんと、政党としての自民党、そして選挙協力を結んでいる公明党、この方向性が一致してないような気がします。これは岸田内閣のリーダーシップの問題もあるんじゃないかと考えます。

―――豊田真由子さんはどう見ていますか。

そうですね、与野党を公正中立に見て今の法案の状況は両方に問題があると思っています。ただやっぱり岸田内閣自民党これ圧倒的に説明が足りないです。今菅野さんもおっしゃったように今の野党の法案に問題があることも事実なんです。

一般国民に対しても人権侵害が起きる可能性があるっていう懸念があって、それが具体的にどういうことなのかを具体的に説明をした方がいいと思います。一方で、被害者の方の救済には絶対に必要なので、そのために自分たちは政権としてこういうふうに救済したいと思っている、ちょっと時間がかかるけど、こういうスケジュールでやりたいと思っているっていう道筋を示すことによって、理解を得るっていう努力をしないと、今のままだと宗教団体との関係があるからやりたくないんじゃないの、と見えてしまうので、きちんとした事情と展望を被害者の方と、国民の側に寄り添った形の説明をしないと、これは本当に支持率がどんどん下がると思います。

―――さて、井野俊郎防衛副大臣は、教団関係者を国会見学に招いたとか、ご自身の後援会は「俊世会」にしているとか指摘されています。そして旧統一教会や関連団体との推薦確認書にサインをしたとして、山田賢司外務副大臣も大串正樹副大臣も署名しました。署名イコール事実上の政策協定となります。菅野さんによりますと「旧統一教会と関係を結ぶのはあさましい」「推薦確認書に署名をすれば政策への影響がある」ということです。やはりサインすることは非常に重いということですね。

その通りだと思います。旧統一教会は宗教団体ということ以上に、これまで民事の確定判決で繰り返しその組織的な違法行為を指摘され続けてきた団体で、そういった違法性が明らかになっている団体と票のためとはいえ、推薦確認書などでかなり濃い連携をしていくっていうのは、やはり選挙至上主義のあさましさが可視化されてしまったという気がします。また、外務副大臣ですとか防衛副大臣ですとか、国家の要となる省庁の副大臣という要職にある方が、かなり特異な対日思想をもとに日本の信者さんから金銭を搾取して韓国に流すだとか、日本の女性を韓国に嫁がせるだとかそういったことも指摘されている団体で、そことの関係の深さ、これを今後この根深い関係を本当に断っていくのかっていうところは問われていると思います。

―――推薦確認書を交わすということ自体はあるんですか。

宗教団体に限らず、様々な団体と「こういう政策を実現してください、わかりました。その努力をしますので選挙の応援をください」いうような形で推薦確認書を交わすということはあることです。それ自体が悪いわけではないけれども、違法な団体とやるのはもちろん駄目ですよね。そしてまた政策内容も、自分の政策と全然違うのにとか、推薦を求める団体側にすごく有利に働くようなそんな政策誘導に乗っかるのは駄目だと様々な問題点があると思います。

―――そして、JNN世論調査では教団との関係について、説明のない大臣と党幹部に関して辞任すべきだという人が65%、辞任する必要はないが25%でした。豊田さんはどう見ますか。

(豊田真由子元衆院議員)
私も元国会議員だったので、やっぱり政策協定を結ぶとか、会合に出席するときは、私は必ずどういう方でどういう団体で主張をしているのか、それが自分の思想信条とどうかと必ず調べてからやる行為なので、それがよくわからないままです、みたいな話はちょっと筋が通らないと思うんです。これが国民の側からどういうふうに見えているか、どれほど誠心誠意説明しなきゃいけないか、っていうところがやっぱり国民感情とズレができてしまっていて、本当にどうにかしないと永田町の人が思ってるほど状況は甘くないと思うんですよね。

―――菅野さんはどう思われますか。

やはり、政策協定を結んだかどうかって遅かれ早かれ事実が表に出てくることだと思うんですよね。教団側は把握をされてると思いますので。そこはしっかり説明をした上で、プラスアルファどれだけ自民党がこれまで放置してきた被害者救済に、政権与党として努力をするのか、成立させてみせるのか、そこも合わせて問われていると思います。

―――今国会で議論が進んでいるのは被害者救済法案の行方です。自民・公明と、立憲・維新でかみ合っていません。マインドコントロール下での高額献金に関して、野党側は「被害者救済新法」で禁止すべきだ。一方の与党は「マインドコントロールの定義が難しい」としています。

―――第三者による取消権に関して立憲・維新は「第三者が悪質な献金を取り消せる新法を認めるべき」そして与党側は「財産権の侵害に当たるので難しいのではないか」かみ合ってないんですよね。

(菅野志桜里弁護士)
マインドコントロールの定義は難しいからこそ、今まで放置されてここまで被害が広がっているわけです。マインドコントロールされているのかどうかではなくやはり自由な意思決定を奪うような正体隠しをしたまま伝道するとか、恐怖や不安につけこむような献金要求だとか、マインドコントロール状態を作り出すような行為、あるいはそれを利用するような行為、こういう行動が駄目なんですよという客観的な定義づけをすることで一点目はクリアできると思いますので、難しいというだけでなく、やはり解決策を提示して欲しいと思います。

―――財産権の侵害はどうでしょうか?

これは確かに財産権の侵害にあたりうるっていう自民。公明の主張には理由があると思うんです。だからこそどんどん信者さんが献金していく行為が、信者さんの家族に損害を与えるような場合、それこそ奨学金やバイト代を搾取するとか、家族のお金を勝手に献金してしまうだとか、家族の損害にあたるような場合には、家族が損害賠償請求できると、この方向性は多分自公から出てると思うんですけれども、これは悪くないと思うので、むしろ損害賠償請求をやりやすくするような督促を具体的に提示して欲しいと思います。

―――豊田さんはいかがですか?

(豊田真由子元衆院議員)
野党の出された法案も全部熟読したんですけれども、私かつて役所でたくさん法案を作ったり改正したりした経験からすると、このような状態のものはかなり厳しいです。具体的に申し上げると、「困難な状況下で献金とか寄付とかをした方については、家族とか後見人が取り消しができるとか、同意がなければ行為ができない」ってことを定めているんですが、これは民法の成年後見の中の補助っていう制度を参考に作られてると思うんですけれども、大原則は「精神上の障害があるということで判断ができないとか不十分だという認定を医師がする」っていうことが必ず条件に入っているんです。だってそれをしないと、例えば組織や家族の中で揉め事が起こったときに、いやこの人は精神障害があるから駄目なんです。と勝手に周りが決めて裁判所に申し立てができることになってしまうんで、それはご本人の人権を侵害する恐れがあるので、そういうことを司法や行政がしないように、要件をものすごく厳格に法律は定めるんですね。さらに今回は懲役刑とか、3億円の罰金刑とか刑事罰が法案に入っているので、罪刑法定主義って厳格に要件を定める必要があって、特に人権を制限する法律のときは、非常にたくさんの関係団体の方や専門家や一般の方の意見を聞いて、関係省庁と全部調整をした上で、たぶん関連法案が何十とか何百とか出てくるんですよ。それを全部精査して法律案を作って出すっていう数か月とか数年単位の話です。

人権を守るという点から言うと、被害者の方の人権を守るのも必要だし、あなたはそういう行為ができない人なんですよっていう認定をするにあたって宗教だけの問題ではなく、慈善団体や学校法人に高齢者が多額の寄付をするっていうことはいっぱいあって、それをご家族が「うちのもうおじいちゃんは認知症だからその行為は駄目なんです」みたいな例も山のようにあるわけですよ。それをすべからく精神障害がある方だというふうに国家が認定をしなきゃいけないんですね。では教義を信じて献金をしている方は皆さん精神障害がある方っていうふうに国家が規定をするんですか、って話になるので、緻密な議論をしなきゃいけなくて、これはもちろん救済すべきなんだけれども、ちょっとこの法案一本では実務は運用できないし、著しく一般の方の人権を侵害する恐れがあるので、ちゃんとやらないといけない。

―――つづいて「質問権の実効性について」。質問権の行使の基準は、8日などの専門家会議で決まる見通し。その後、具体的な質問を検討して年内に質問権を行使する予定だということです。菅野さんによると「反論の機会を与えて、相手側が疑いを晴らすことができるのか、説得力がなければ解散命令の請求へ」ということですが。

(菅野志桜里弁護士)
そうですね。質問権行使の基準というのは、実はもう法律に「法令違反そしてまた公共の利害を著しく害する」というように、こういうときに質問権が使えますよっていうことはもう既に決まっているんです。どうやら2回の専門家会議っていうのは何だか岸田総理が言った「継続的で悪質で、組織的な場合には質問権が使えるんです」っていうような発言も専門家を使って裏付けをするような、そういう役割を担わされてしまっているのかなっていうことを懸念してます。

そういうことをやることで、時間を使うよりは、法律上本当に必要だと言われている宗教法人審議会を早く立ち上げてですね、まさに今問題となっている旧統一教会について質問権を使うにあたってはどんなことをどんな基準で気をつけるべきなのか、この具体案に早く入っていただくことが必要じゃないかと思います。

―――年内を目指してるということですけども間に合いそうですか。

そうですね、文化庁の主務課が8人から大幅増員をして38人になり、法律家や金融の担当もいるということなので内側はずいぶん固まってきたんだと思います。それプラス弁護団の方やジャーナリストのように、これまでも長い期間、裁判資料や証言をしっかり集めてちゃんと読める形で文章にしてきた。こういう資料がありますので、早く外部の方のサポートを受けて、万全の準備を整えて質問権行使ということは頑張れば可能ではないかと思います。