家計を苦しめる物価高。岸田文雄総理は高騰する電気・ガス・ガソリン代に対応するため、来年1月~9月に1世帯あたり総額4万5000円程度の負担を軽減する政策を打ち出しました。この支援策について、経済ジャーナリストの荻原博子さんは「遅いし、少ない」と指摘。「全員に10万円給付や消費税減税をしないと実感を得られないのではないか」との見解を示しています。また、年末にかけて日常生活でできる“節約術”について、荻原さんに聞きました。
(2022年10月31日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――11月になりました、また値上げです。

これで止まるんじゃなくて、年末年始もずっと上がっていく雰囲気です。1ドルが150円になりましたよね。実はこの影響が出てくるのは、2ヶ月ぐらい後です。今店頭に並んでいる商品は、1ドル135円程で契約していて、今1ドル150円で契約したものは、船で運んで店頭に並ぶまで2ヶ月ぐらいかかりますから、お正月ぐらいに一段高になるんでしょう。

―――政府は29.1兆円規模の総合経済対策を発表し、電気代支援などに6兆円を充てるとしています。試算では、一般的な家庭の毎月の電気代、ガス代、ガソリン代、合計5000円くらい軽減でき、来年1月から9月の期間で合計4万5000円くらい軽減できる見込みだといいます。ただ方法としては「事業者への補助」なので、直接我々に振り込まれたりするわけではないです。

―――これに対して荻原さんの印象は「遅いし少ない」。

はい、例えば電気代を下げるなんていうのは、政府が電力各社に電話して「来月から2000円分安くするから、その分ウチに請求書を回してよ」って言えば終わる話です。それを延々と議論しているわけです。しかも補助金を入れたりなんてやっているから本当に遅いし、小さくなっていくし、残念です。なぜ9月までなのか、一応夏の電力供給を越すという話なんでしょうが、何か見通しがあるのか、という気がします。ちゃんとやろうと思うなら、もう1回みんなに給付するとか、もしかしたら消費税を下げるとか、そういうことをしないと皆さんは実感できないと思います。

―――現金給付については、一方でバラマキにならないか、みたいな話もありますが。

今は本当に家計が逼迫していて、物の値段がどんどん上がっているのに、給料と年金だけは上がらないです。下支えしようと思ったらそのぐらいのことを考えなければいけないと思います。

―――政府の税制調査会で消費税に関する議論が行われました。委員からは「未来永劫、消費税10%のままでは日本の財政が持つとは思えない」「今後の高齢化に合わせて引き上げについて考えていく必要がある」など増税の声が上がっていました。

(豊田真由子元衆院議員)
税制調査会って、学者さんとか、経営者とかなので、政治的に国民がそれを受け入れてくれるかとかいうことは全然考えてなくて、財政再建とか健全化ということから筋としてはこれがいいよねって言ってるだけなので、これをもって直ちに消費増税に政策として実現しますってことは全然ないです。党税調の政治家で、今このタイミングで消費税を上げることが可能だと思っている人はあまりいないので、そこはちょっと切り分けた方がいいと思います。

物価高は、その場しのぎで対策を打っても仕方がない。海外も物価は上がってるんだけど賃金も上がってる。日本には、こっち側がないことが問題なので、もっと競争力を上げるとか、投資をするとか、デジタル化するとか本当はそのことを政府は頑張らなきゃいけない。

―――消費税に関して荻原さんは「そのままか、減税か」このどっちかということですが。

(経済ジャーナリスト 荻原博子氏)
コロナの時は、皆さん本当に疲弊していたので、イギリスとかドイツは消費税下げました。アメリカはかなりのお金を給付したんですけど、日本はそういうことをやってこなかった。いまはコロナに引き続いての物価高で家計がめちゃめちゃになってるわけですから、やっぱりこれは消費税を1回下げると、なにしろ今は史上空前の税収です、あのバブルを超えるような税収。それも消費税が稼ぎ頭で、史上空前の税収になってるわけですから、これを皆さんに戻すのは普通じゃないですか、って私は思うんです。

―――消費税の税収が今どんどん上がってるってことですか。

一番です。史上空前のバブルを超える税収になっていますから、ちょっとぐらい返すべきだと思います。期間限定でもいいけど、やろうと思えばできると思うけれどもやらないですよね。

―――減税からのトリプル安ということで混乱したイギリス。トラス前首相は歴史上最も短い在任期間ということになりましたけども、減税で日本はこんな事にならないでしょうか。

G7の中でイギリスというのは、イタリアの次に破綻リスクの高い国なんです。日本はG7の中で、ドイツに次いで破綻のリスクの少ない国。まず財政状況が全く違うというのと、あと対外純資産、日本が海外に貸しているお金が411兆円もあるんです。これって海外から見ると「日本ってすごい金持ちじゃん」っていうそういう話なんです。

こういう日本が、イギリスのようになるということは、すぐには考えられないんじゃないでしょうか。いずれ、50年後とかはわからないですけどね。

―――日本はずいぶん借金がある国だという話もよく聞くんですけどもそのあたりどうなんですか。

その借金は誰の借金でしょう。借金は国が発行した国債ですね。その国債の半分は日銀が持っています。こんな国ないですよね。借金1兆円と言いながら本当は子会社が持っているわけだから半分の500兆円でしょうって話ですよね。

―――では、日常生活レベルで我々は一体何ができるんでしょう。クリスマスケーキは、小麦、生クリーム、フルーツ、価格高騰食材の塊とも言えます。年末にかけてはおせちもあります。荻原さんは「ウラ技はないので別のところで節約を」と。

例を3つ挙げましょう。『①ふるさと納税の活用」です。いまは小麦だけでなく、お米も値上がり傾向、特に新米はちょっと上がっています。だから古米を上手に食べるということも必要です。

『②輸入冷凍海産物は早めに購入してください』。いま並んでいるものは、2ヶ月前に契約したものということで円安の影響が今後出てくる可能性があります。

―――そして『③家電の購入はクリスマスの後がおすすめ』だそうです。
12月に始まるボーナス商戦で、その中でもクリスマスの後は新商品が安くなるそうなので、特に30~31日が狙い目です。年末は人が店に来なくなるので、値引きしてくれるかもしれません。お店側も年内に売り切りたいじゃないですか。物価高に対策できることは少ないけれども、こういったこともチャレンジしてみてはいかがでしょうか?"
(2022年10月31日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)