ついに「鹿せんべい」の自動販売機が登場しました。飲み物とともに売られるのは全国初ですが、なぜ必要なんでしょうか?
時代とともに…これまでに様々な自動販売機が登場
いつの日も人々の暮らしとその時代の空気を映し出してきた自動販売機。1970年代には成人向け雑誌が売られ夜な夜な大人たちがこっそり購入。
1990年には牛肉の輸入自由化に伴いアメリカ産牛肉を売る自販機が登場しました。
その後も、音楽CDやお墓参り用の花、養鶏場の卵などなど様々なものが売られ、うどんやカレーライスなど温かな食べ物の自販機も時に心と身体にぬくもりをもたらしてくれました。
奈良公園に『鹿せんべい自動販売機』が登場
そんな中、また新たな自販機が奈良の観光地にお目見えしました。
それは「鹿せんべい自動販売機」です。『I LOVE シカ自販機』と書かれていて、箱入りの鹿せんべいが売られています。
飲み物とともに鹿せんべいが売られるのは全国で初めてで1箱10枚入りで販売されています。
MBSの前田春香アナウンサーが「鹿せんべい自動販売機」で実際に購入してみました。
(MBS 前田春香アナウンサーリポート)
「しっかりした箱に入っていますね。かわいい。『ずっと大好き』という言葉とイラストが書かれていますよ。入っていました、鹿せんべい」
奈良公園の中に2台設置されるということですが、観光客は…。
(観光客)
「鹿が売店の前に集まってきていたので、自動販売機やったらあんまり集まってこないかな。買う環境としても買いやすいかな」
(子ども)
「いっぱいさ、来てさ、パパの服食べられた」
(観光客)
「おばちゃんからもらって少しだけ会話して人間味があるけど、自動販売機やったら買うかもしれへんけど、もうええかな」
ただ気になるのはそのお値段。露店などで販売されている鹿せんべいは1つ200円ですが、自動販売機は1箱500円。容器などの分、割高な値段設定となっています。
(観光客)
「(Q自動販売機で買うと鹿せんべいが500円だが?)えっ、そんなに高いんですか」
「えっ、500円か。だいぶ高いかな」
自販機ならいつでも購入可能…他の食べ物をあげることを防ぐ狙い
ではなぜ強気の価格設定ながらも鹿せんべいの自販機が設置されたのでしょうか。
(記者リポート 2020年11月放送)
「男性が鹿に弁当をあげました」
弁当のおかずや食パン、トウモロコシをあげる人たち。実はコロナ禍で「鹿せんべいをもらえず鹿が痩せている」といったデマ情報が広がったことなどが原因で、本来禁止されている鹿せんべい以外の食べ物を与えるルール違反が多発したのです。
身勝手な餌やりで、お菓子の包装紙やレジ袋などを飲み込んでしまい、栄養失調などで鹿が死ぬ危険もあります。
奈良公園では鹿せんべいを売る露店が多く出ていますが、観光客の多い日中しか営業されていません。いつでも購入できるようにすることで他の食べ物をあげる人がいなくなるようにしたいという狙いがあるのです。
(奈良ビジターズビューロー 中西康博専務理事)
「100年後にまだ奈良公園はあるでしょう。そこで普通に座って草を食べている鹿がいる未来を僕たちは保証しなければならないと思います。次の世代のために」
“鹿せんべいのあげ方マナー”を箱に記載…鹿と人間との共存へ
自販機が設置された理由はそれだけではありません。鹿せんべいを求める鹿は体当たりや噛みつくこともあり、観光客とトラブルになることもしばしばあります。
実は、鹿と長く触れ合いたいという思いから鹿せんべいをじらして与える人が多く、その結果たまりかねた鹿が噛みついて人身事故につながっているといいます。
【奈良の鹿との人身事故件数】
2017年 180件
2018年 217件
2019年 192件
そんな問題に対応するため、自販機で販売される鹿せんべいの箱の側面には『小さい子はおとなと一緒に!』『じらさないであげてね』『鹿せんべい以外はあげないで』『手をひろげてもうないよ、のサイン』といった鹿せんべいのあげ方の“マナー”が書かれています。
また鹿せんべいの箱は「kome-kami」という捨てられるはずだったお米を混ぜた紙素材が使われていて、万が一鹿が持っていってしまったとしても安全だということです。
鹿の食べ物問題の解消と、鹿と人間との共存につながる鹿せんべいの自販機。売り上げの一部は鹿の愛護活動の資金にもなるということです。