安倍晋三元総理の国葬から2週間あまり。安倍氏のもう一つの葬儀が10月15日に開かれます。実は様々な町にも公的な葬儀があります。

10月14日、政府は安倍元総理の国葬の費用について、当初の見積もりより下回り約12億4000万円(速報値)だったと発表しました。海外からの要人の接遇費に5億1000万円、警備費に4億8000万円かかったということです。

そして10月15日に実施されるのは、安倍元総理の地元だった山口県の「県民葬」です。費用は6300万円で、弔問客は約2000人。細田博之衆院議長はじめ現職・元職含めて110人ほどの国会議員が参列します。遺骨の入場、黙とう後、安倍元総理の生前の姿が会場で流され、遺族を代表して昭恵夫人が挨拶する予定です。

(山口県 村岡嗣政知事 今年7月)
「多くの県民の皆さまから哀悼の意が寄せられているところです。最も深く追悼の意を表する形として『県民葬』を執り行いたいと思っております」

これまで山口県では、安倍元総理の大叔父・佐藤栄作元総理、祖父・岸信介元総理、父・安倍晋太郎元外務大臣ら、5人の県民葬が執り行われています。

一方、この県民葬に対して、共産党や社民党など一部の野党や11の市民団体、地元弁護士会などが弔意の強制につながるなどと反対しています。

(山口県議会 戸倉多香子県議 9月28日)
「安倍元総理の残された負の遺産の数々は、山口県民にとっても後々誇りとなるどころか誇りを傷つけるものとなりかねないと思います」

山口県民にも話を聞きました。

「賛成ですね。やっぱり地元に貢献してくださっていた方なので」
「東京でやっているのにこっちでやる必要はない。そういう考えですね。(税金を)他の方に使ってもらった方が自分らにとってはうれしいですよね」

こうした自治体主催の葬儀は山口県だけではありません。
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大阪市ではこれまでに地下鉄や御堂筋の建設など「大大阪時代」を実現した關一元市長など4人の市長に対して市葬が行われています。

【大阪市の市葬】
▼7代市長 關一氏
▼10代・12代市長 中井光次氏
▼13代市長 中馬馨氏
▼15代市長 西尾正也氏

最後に市葬が行われたのは2008年のオリンピック招致運動のきっかけなどを作った西尾正也元市長の1998年の市葬。当時の横山ノック大阪府知事など3500人以上が参列しました。
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一方、1995年に行われた大阪府箕面市の市葬は物議を醸しました。ボートレースの創始者で「政界のフィクサー」とも呼ばれた笹川良一氏。箕面市出身の笹川氏は、市主催の競艇開催に尽力して財政に貢献したという理由で名誉市民となり、公費618万円が支出されて市葬が行われました。しかし「第二次世界大戦のA級戦犯の疑いもあった人物を税金で弔うのはおかしい」と一部の市民から激しい抗議がありました。

多くの自治体で市葬など公の葬儀開催に明確な基準は設けられておらず、大阪市の松井一郎市長は市葬の基準を定める考えを明らかにしています。

(大阪市 松井一郎市長 10月3日)
「市長に対して否定的な人もいるわけですから、やっぱり市葬という形で儀式を行うならば一定基準を設けないと、今回の国葬のようにまた同じようなことになりますから」

松井市長は“現職で死亡した際”などを基準として検討しているということです。