彼岸の中日の9月23日。この日、亡くなった人への思いを綴った手紙が寺の境内にあるポストから空に向かって“配達”されました。
きっかけは“亡くなった子どもに宛てた母親の手紙” 故人と心をつなぐポスト
京都府舞鶴市にある大聖寺の境内には「緑色のポスト」があります。亡くなった人に宛てた手紙だけを扱う特別なものです。このポストの存在を知り、手紙を投函しに来る人は少なくありません。
(父に手紙を書いた女性)
「『向こう(天国)に行ってみんなに会えましたか』とか、『下の息子がいま、一生懸命将来の夢に向かって頑張っているよ』というのを書きました」
(夫に手紙を書いた女性)
「こうやって手紙を書いて改めて向き合うことによって、やっぱりまだつながっているな、まだ家族だなということを実感できる」
緑のポストが生まれたのは十数年前。賽銭箱として使われていたこのポストに、亡くなった子どもに宛てた母親からの手紙が投函されたことがきっかけでした。
(大聖寺 松尾眞弘住職)
「『お空の上で元気に遊んでいますか』『お父さんお母さんを見守っていてね』という、早くに亡くなられたお子さん、あるいは水子さんに対する手紙だということがわかりまして、これは何とかしてお届けせなとなって、ポストの前の護摩壇でお焚き上げをして届けた」
それ以来、毎年春と秋のお彼岸にお焚き上げをして空に配達してきました。
神戸市のこちらの一家も8年前に亡くなった家族への思いを届けにきました。
(母・有希さん(34))
「家族で出かけるときはずっと一緒にいるみたいに(写真を持ってきています)」
長男の肴代(こうだい)ちゃんは、1歳1か月のときに原因不明の病で突然この世を去りました。去年、このポストの存在を知り、以来、家族みんなで訪れて肴代ちゃんと心をつなげています。
(母・有希さん(34))
「『9歳のお誕生日おめでとう』と」
(父・真弘さん(34))
「やっぱり姿がないという状況とこの世にいないというところで、ひとつでも向こうの世界とつながっているというのはすごく助けられるポストだなと」
京都府宮津市に住む堀久美子さん(47)は、8年前に肝臓の病で弟を、3年前には母親を肺がんで亡くしました。共に暮らしていた母親とは、よく買い物や温泉などに一緒に出かける仲良し親子でした。
母親が亡くなり、憔悴した堀さんを救ったのが緑のポストでした。3年間、毎月欠かさず母と弟の2人に手紙を書いてきました。
(堀久美子さん)
「ほんまの普通の日常的なことなので、別にこれといってないんですけど、そういうことを聞いてほしいんですね、やっぱり私が。手紙で思いを吐き出すということは精神的に楽になりましたね」
そして9月23日、緑のポストに投函された手紙の供養が行われました。配達の時を、長男を亡くした神戸の家族や堀さんも見守ります。
(堀久美子さん)
「この手紙はきっと母と弟に届いていると思います」
これまでで一番多い215通の思いが風に乗って天に上っていきました。