星野リゾートの星野佳路代表が「よんチャンTV」に特別出演。大阪・住之江区のウォーターフロントに新たに展開するホテルブランド「リゾナーレ」のコンセプトや狙いを聞きました。星野リゾートといえば、大阪・浪速区の新今宮駅前に開業した「OMO7」に続く第二弾で、さらに関西空港にホテル開業を予定しているとのこと。リゾナーレのコンセプトはコラボ。大手外資系ホテル「ハイアットリージェンシー大阪」の建物に入居する形でお互いの強みを生かした集客を狙います。また復活の兆しを見せている外国人ツーリズムについては「単にインバウンド復活を目指すのではなく、かつてのオーバーツーリズムを解決するための地方分散の施策が必要」「地元の共感を生む観光」を提唱しています。(2022年9月14日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

ホテルの中にホテル

―――2022年12月16日に開業する、星野リゾートの「リゾナーレ大阪」は、「ハイアットリージェンシー」の中に「星野リゾート」ができる。ホテルの中にホテルができるって、今まで聞いたことがないような話です。

ハイアットリージェンシー大阪は、300室以上ある大きなホテルです。建てられたときには、それなりの市場規模があって、そこに見合うように建てたわけです。ただコロナ禍において、大きく需要が変化しているのと、今後のことを考えたときにも、ビジネスで出張する人より観光客の方が伸びてくるんですね。一つの建物は何十年も使えるんですが、マーケットは変化していくんです。

大阪は供給過剰で、ホテル競争は大変ですから、300室をどうやって埋めていくかというときに、二つのブランドがコラボレーションしていく。ハイアット大阪が強い市場もあれば、リゾナーレは全く違った市場に強いんです。子ども連れやファミリーに強いブランドなんです。この2つが協力することによって、300室全体が埋まるような手法を私はトライしてみたいと思って、今回スタートさせました。

―――ホテル業界ではこういったことって他でもやっていますか?

日本では一番新しいです。コロナ後もマーケットが大きく変わってくる中で、私は一つの考え方としてあり得ると思います。多くの部屋を持っているホテルがいくつかのブランドで一緒になって埋めていくっていう作戦は、これがうまくいくと、もしかして他でも採用していただくチャンスがあるんじゃないかなと期待しています。

―――何か、フードコートでいろんなものを食べられるみたい。

おっしゃる通りです。まさに社内ではそういう説明しているんですけど、外の方でおっしゃった方は初めてです。ホテル内にある「アトリエ」には「レッジョ・エミリア教育」という、今ニューヨークとパリでも非常に注目されている子どもの想像力を高めるという教育プログラムをそのまま持ってきていて、日本初・最大面積のアトリエを作っています。

超円安!「ルイ・ヴィトン、タイで買うより安い」

―――水際対策の今後について。来月にも適用か?と言われているのが①入国者数上限の撤廃、②個人旅行の解禁、③訪日ビザの免除ということですが?

2019年度に海外からいらした方の90%は個人旅行です。ツアー団体は10%以下なんです。個人旅行がダメというのが一番大きな制限だったんです。日本政府は世界に対して、G7並みに行きやすい国にするって今年になって何度も約束しています。これをやらない限り、G7並みにはならないということです。日本も解禁せざるを得ない時期に来ていますし、やらないと日本の観光、ビジネスに課題が残ると思います。大阪は万博が2025年に控えてますけど、すぐなんですよ。そういう意味でも早めに準備にかからないと万博にも大きく影響すると思います。

―――続いて、海外から来ていただくインバウンドの皆さん、円安の恩恵を受けているのは観光客の皆さんです。街で聞きました。

「円安は本当にいい」(フランス人観光客)
「ルイ・ヴィトンのジャケットを買いました。45万円」「タイで買うより安い」(タイ人観光客)
「私たちがたくさん買えば日本にお金が入るので、日本にとっても良い事だと思います」(フランス人観光客)

―――今後のインバウンドはどうなる?

2019年、コロナ前の日本の観光は、全てが良かったわけじゃないんです。悪い課題も実はあったんです。例えば京都はオーバーツーリズム(人が来すぎて困る)って言われていたわけです。ところがですね、日本の高知県とか、福島県とか、福井県なんていうのは、まだまだインバウンドが全然来てないんです。僕は「インバウンド格差」って呼んでいます。日本のトップ10の都道府県でインバウンド客の85%を集めちゃっているんです。

もっと地方に行ってもらえる工夫をするってのは大事。一つ日本が強いのは文化観光なんです、東京・大阪・京都なんですけども、ただ日本には30もの国立公園があって、例えば大阪にいらしていただいたら、すぐ関空から帰っちゃうじゃなくて、やはり地方に一泊二泊してもらえるような、地方と都会が組んでいくようなコンテンツを作っていくことは、私は2019年の問題を解決しながら戻していく大事なポイントだと思っています。

今は、とにかく戻そうという機運が高まっちゃってるんですけど、私は数字を追うよりも、「問題を解決しながらゆっくり戻していく」っていう工夫、我慢強い戻し方が大事なんじゃないかと思います。

「コロナ前の数ばかり追うな」星野氏の新戦略

―――地域別の訪日外国人、コロナ前は46%が中国から、韓国、台湾、香港、アメリカ、タイの順でおよそ8割はアジアということになります。(大阪・2019年)

日本は8割以上アジアに依存しちゃっていたんですね。それは日本の観光の姿としては弱いです。東京は30%が欧米からですが、大阪の場合10%しかないんです。世界の旅行市場は実は欧米から情報が発信されています。アジアで調査しても「欧米人が憧れるところに行きたい」って言うんですよ。ですから、欧米にもっと大阪のブランド力をプロモーションしていくってことは、長期的にはサステイナブルな観光の力になっていくんです。アジアに依存しすぎていたってことをもう1回認識して、ここを戻そうと数字ばっかり言うんではなくて、やはり長期的に、今こそ欧米にいらしていただけるような予算の配分、力の入れ方が大事だと思います。

―――今後の話、星野さんが描く、観光業の未来は「レスポンシブルツーリズム=地元の共感を生む観光へ」これは?

そうですね、アフターコロナになるときに世界中の有名観光地は、2019年に戻ろうとしているんじゃなくて違った観光の姿を求めようとして、そのキーワードがこちらです。何を言っているかっていうと、地元のためになる観光産業になりたい、そのために地元の文化をしっかりと理解してくれる観光客にしよう。一泊で次の場所へ行っちゃうんじゃなくて、ニ泊三泊して、地元のレストランやバーに寄ってくれる観光客を呼んでこようと。

人数を昨年比で増やしていこうという発想よりも、どんな人たちに来てもらえるかそれが地元の人たちの共感を得る。ホテル業界とかバス電車だけじゃなくて、地元の人たちに、観光産業が強くなって良かったよねと言ってもらえるような観光産業を育てようじゃないか、世界中が今そっちの方向へ行っているんですね。私は大阪も日本もそっちに行くべきだって思っています。

ちょっと懸念しているのは、2019年の数字に戻そうとして、今日本は3000万人を超えて6000万人のインバウンドを目標にしているんですけど、数を目標にするんじゃなくて、「どこにどんな人がいらしていただきたいかってことを目標にしなきゃいけない」と思っています。