旧統一教会のカルト性を語るうえでよく取り上げられる『合同結婚式』。その実態を元信者で自ら合同結婚式に参加したジャーナリスト多田文明氏に話を聞きました。多田氏によると、合同結婚式には参加資格があり、「最低でも3人の信者を勧誘、献金140万円、7日間の断食」といった条件をクリアした者だけが、神の祝福である合同結婚式に臨めるのだといいます。また結婚式が終わった後にお互いがバットでお尻をたたき合う儀式あるといい、旧統一教会の特異性がうかがえるエピソードを語ってくれました。(2022年9月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――文鮮明氏から祝福が受けられる結婚式は、信者にとっては最大目標ということで、やはり信者は合同結婚式でパートナーを見つけたいと、皆さん思われるのですか?

 (多田文明氏)
 そうです。教義上、私達はずっと罪を持っている、それを清算する道が、神様が決めた相手と結婚すること。文教祖が決めた相手と結婚することって言われるので、これに向けて、とにかく必死です。

―――式には参加条件があるそうです。多田さんによると「最低3人の信者を勧誘しなさい、そして金銭的なノルマを果たす」?

 そうですね、文教祖のために必死にお金集めを、上からいくら必要と言われたら、もう絶対にやる、そういう日々でした。毎日のノルマも毎月のノルマもありますから、本当にクタクタになり、私も出家したときは、1日平均3~4時間睡眠で、朝から晩まで路上に立ち、風邪をひいたって立たないといけない。風邪を引いたら「心にサタンが入った」って言うから、それをはらうために「やれ」と。

―――当時は信者でしたから、それぐらいしてでも合同結婚式を挙げたいと強く思っていらっしゃった?

  そうですね。罪を清算する、いわゆる人類を救うためにはまず自分が神の子にならんといかんと思っていましたので、参加する資格を得るために必死。

韓国側の参加者は「信者でない」人も

―――韓国では結婚相手を見つけるイベントとして、信仰心がない男性も参加して、日本人の女性信者が結婚することになって苦労しているということもあるそうで、日本と韓国において合同結婚式のイメージも違うようですね。

 日本人女性で、韓国に嫁いでから帰ってきた人の話を散々聞いてるんですけど、まあ向こうの人は信仰心がないと、ほとんど教義なんか信じていないと、ただ結婚相手を日本人にしたいから来たっていう人たちがいっぱいいるって話は聞いています。

―――韓国の男性でいわゆる旧統一教会の信者じゃない人もここで結婚することもあるってことですか?

 そういう方はおそらく大勢いらっしゃったと思います。もちろん信者もいるんですけど、韓国はキリスト教の国で、統一教会は異端とされていますから、なかなか普及は難しいんじゃないでしょうか。

事前に相手写真 拒否したら「地獄の地獄へ」

―――実際に多田さんは1992年の合同結婚式で式を挙げられました。参加資格を得るために通常の勧誘、献金、そして7日間の断食?断食はどういう意味があるんですか?

 合同結婚式に参加するには7日間断食しないといけない。92年の前年に私は数人の信者と一緒にやった、水だけ飲んで、ご飯を一切食べずに7日間過ごす。ただ、寝てればいいわけじゃないんですよ。普段の生活の、いわゆるお金集めはちゃんとしてこそ、7日間の意味があると言われるので、何も食わないで水だけ飲んで街頭でても後半フラフラです。それでもやらなきゃいけないっていう感じでした。最後は寝込んだ人もいるし、もう本当に怖いけど、必死にやるという感じでしたね。

―――さらに140万円の感謝献金があって、合同結婚式にやっと参加OKになり韓国行きの航空チケットが渡されるということです。多田さんは結婚式の前日に文鮮明氏に決められた女性と初めて会ったと。

 事前に相手の写真は送られて来ているんです。昔は前日に本当に会うだけだったんですけど、当時は報道がすごかったので、事前に写真は送られてきて、教会でこの人だよって全員渡される。で、渡されるときに見てるとわかりますね。すごく喜んでる人と、写真見た瞬間にすっとひく人と。ただ拒否したら「地獄の地獄に行く」と言われるんです。いわゆる相手を拒否したら地獄の地獄に行くんで、その恐怖心との戦い。

新郎新婦が“尻を叩き合う”

―――当日になります。ソウルオリンピックスタジアムに3万組が参加。式の後は「棒で互いの尻を叩き合う」儀式がある?

 韓国の儀式らしいんですけれども、バットみたいなもので、私は相手の女性を、女性は男性の尻をですね、もう、力いっぱいやるのが信仰なもんですから、優しいのは駄目なんです、思いっきってバーンという感じで叩き合うんですよ。痛いですよ。ホテルは男性3人部屋だったんですが、3人とも尻を抱えて帰ってきたし、みんな痛い痛いと言って、もう部屋に入った瞬間全員笑っています、笑うしかない。お尻を叩くことで罪が何か清算されるという。

―――で、多田さんはその女性とは一緒にならず、家族との話し合いで脱会したということですね。

 相手のご家族のところに1回挨拶に行きました、その方は二世だったんです。ただ、女性の方が私の家には来られなかった。なぜかって言うと、うちの家庭は統一教会に対しての反対がものすごかったから、近づけることができなかった。逆に言えば、家族はそのぐらい反対して、相手を寄せ付けなかったという作戦だったかもしれないんですが、おかげさまで親と話をして、辞めるという決断をした。

―――そして旧統一教会と政治との繋がりです。多田さんは岸田総理のお詫びは効果的だったんじゃないか、国民に向けただけでなくて党内を引き締めたんじゃないかと見ています。

 そうですね。おそらく繋がりが深い人ほど調査をいい加減に書こうと思っていたと思うんです。岸田総理が、トップがお詫びしたってことは、内部的にプレッシャーがかかりますよね。そのあとの茂木幹事長の言葉もあって「もっとやらないといけない、党は出たくない」ということで調査して一生懸命書いてるのではないか。ただ中には書かない人もいるかもしれませんので見極めは必要ですね。

 (三澤肇解説委員)
  問題は氏名を公表する線引きです。何人か自民党議員にも聞いてみましたけれども、関与の度合いの濃いのはどれなんだ、客観的に見ると資金的な手当を受けているかどうかと、選挙応援してもらっているかどうかが線引きになってくるのかなと思うんですが、まだ明らかにされていません。「おそらくアンケート全部を見て、幹事長や役員で決めるんじゃないか」とその自民党議員は言っていました。また、アンケートが終わった後に別の話がポロポロ出てくるという可能性もあるので、そうなるとまた問題が拡大することになります。