ロシア軍が占領しているザポリージャ原発をめぐってロシアとウクライナのつばぜり合いが続いています。一方、大和大学の佐々木正明教授によると「ウクライナ軍が原発を急襲し、制圧した」との情報があるということで確認が待たれます。またロシアが9月1日から始める『ボストーク2022(極東軍事演習)』が北方領土でも展開されることについて、佐々木教授は「日本は非友好国となり、プーチン大統領と安倍元総理の関係性がなくなった今、ロシアはより強硬に、より攻撃的になるのでは」と警戒しています。加えて北海道の目と鼻の先の択捉島、国後島の軍事演習に中国軍が参加する可能性もあり、北方領土でにわかに「中露との不測の事態」という、軍事的リスクが高まりをみせています。(2022年9月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――緊張が続くザポリージャ原発にIAEA(国際原子力機関)が調査に入ります。ウクライナ南部の町で、欧州最大級の大きな原発があります。

(佐々木正明教授)
ウクライナは原発大国です。チョルノービリ原発事故があった後も、エネルギーミックスの中のパーセンテージが増え、最も大きな原発がこのザポリージャです。

―――IAEA調査の受け入れをロシアも認めているということですよね?

はい。ロシアにとっても重要な基幹施設です。なぜかというと占領地が南部2州増え、クリミア半島には大事な軍港があります。ここのエネルギー源として最も大事な場所で、ロシア軍もここは失いたくない。そしてもし原発事故があれば被害や放射能漏れが、ロシア側にもやってきますので、ここは絶対ロシア軍が失いたくない、大惨事を起こしたくない意図があるんだと思います。

―――現在はロシア軍が占領。いっぽうウクライナは軍の管理下に完全に戻したい。双方が、攻撃は相手側によるものと主張しています。佐々木教授によりますと、「この原発は国内の半分に当たる電力を生む大事なエネルギー源だということと、これを盾にして攻撃ができるんじゃないか」と?

なぜザポリージャ原発の砲撃が相次いだかと言いますと、背景に、南部のウクライナ軍の反転攻勢があるんです。6~7月になってから強まりました。新しいロシアの報道を見たんですけども、ロシアの国防省が発表したんですが、ザポリージャ原発にウクライナ軍が急襲して制圧作戦を始めたという報道があります。ロシア国防省が発表していますので確認はもちろん取れないですけども、少しきな臭い情報もあります。

―――IAEAの査察はいつくらい?

原発の対岸にザポリージャ市がありまして、そこを出発したという報道もあり、早ければ現地時間の午前中には入っている可能性もありますが、「ウクライナ軍の急襲」という情報もありますので、実際は私もわからないです。

「中露との不測の事態」軍事的リスク

―――続いては、ロシア軍の大規模軍事演習「ボストーク2022」の話です。参加した兵士、4年前は30万人だったんですけども、今年は5万人という規模です。

5万人という数字も実は大きいんです。30万人は、少し多すぎる数字で、実際は10万人ぐらいだったのではないか。5万人に減った理由は、やはり西部でウクライナ軍と戦っていますので、それほど兵士のゆとりはない。

―――演習場所には、北方領土の択捉島と国後島も含まれているということです。非友好国となった日本に対し、北方領土の演習が攻撃的なものになるのではないかというのが先生の懸念ですね。

今年、中国軍の海軍が参加しているんですが、もしかしたら北方領土付近で中国軍が参加して、中露の軍事演習をやるかも知れない。そうなりますと日中国交正常化、今年50年になりますので、中国に対しても少し軋轢が生まれる。そこで中国軍がどうなるかっていうのも一つの注目です。

―――9月3日、ロシアでは対日戦勝記念日です。これまでは9月3日に大規模な軍事演習はしてこなかったんだそうです。なぜか、安倍元総理とプーチン大統領の関係性があったから。

「晋三」「ウラジーミル」という関係を作り上げて、ちょうど9月3日付近にですね、ウラジオストクで東方経済フォーラムが開かれて、安倍さんは4年連続で行ってプーチン大統領と経済的結びつきを強めようとしていた。そこで配慮というか毒消しがされて、9月3日をあまり、ロシア国内でもプロパガンダとして日本の軍国主義をアピールすることはなかったけれど、安倍さんが亡き今、さらに非友好国ということですので、おそらく挑発的な発言、軍事演習を3日にぶつける可能性があります。

―――三澤解説委員によりますと、日本はロシアの「足の長いミサイル」にどう対応するか?

(三澤肇解説委員)
軍事演習の内容にもよると思うんですが、実際に択捉島なんかに、ミサイルを配置していますので、実際にそういったものを打ったときにどうなるのか、中国が台湾周辺で軍事演習したときに日本のEEZ内にミサイルが着水しました。北海道にはとても近く、不測の事態が起こらないのか、非常に心配です。今後、過熱すると日本もミサイルを北海道などに置いた場合、また軋轢が深まる可能性があります。

(佐々木正明教授)
今年はまず、ウクライナへの日本側の支援度によって、おそらく今回の9月3日の演習をやると思いますが、来年以降は、おそらく5月9日の対独戦勝記念日のような、日本への政治的アピールをやるような日になるかもしれません。