もし妊婦が新型コロナに感染してしまったら…。出産を前にしてお腹の赤ちゃんへの影響が気になる「ワクチン接種」。大阪公立大学大学院・城戸康年教授によると、妊婦がワクチン接種をしていないと赤ちゃんのリスクが高まるということです。特に「妊娠後期は母体の免疫が赤ちゃんに移行するので赤ちゃんを守ることになる」ということでワクチン接種が有効とのこと。また陽性妊婦の出産はこれまで医療従事者の負担や院内感染の恐れから、ガイドラインでは「帝王切開とすることもやむを得ない」としていましたが、新たに「施設によって臨機応変に対応することが望ましい」と改定されました。城戸教授は「本来、帝王切開する必要のない妊婦にまで帝王切開を強要することになり、自己決定権の著しい制限になっていた」と話します。(2022年8月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
―――妊婦の新型コロナ感染について、厚労省によりますと「妊娠後期に感染すると早産率が高まり、患者本人も一部は重症化するリスクがある」。また「感染した妊婦から胎児への感染はまれだと考えられている」などと報告されています。城戸教授によりますと「妊婦さんがワクチンを接種していない場合、子どものリスクも上がる」と言われているんですか?
(城戸康年教授)
はい。「元々お母さんが感染してしまうと、ワクチンのあるなしに関わらず、感染してしまうと、本人、お母さんも子どもも、リスクが高い。」中でお母さんがワクチンを打つと、本人もお子さんもリスクを下げることができる」というような報告はされています。
――それは、お腹の中にいる赤ちゃんですか?それとも産まれてからですか?
両方です。感染すると、例えば早産であれば、子どもにリスクが高い問題が起きるということですし、産まれた後も「ICUで集中治療が必要な状態になる率が、感染すると高くなるんですが、それがお母さんがワクチンを打っていると低くなりますよ」という報告が世界的にもあります。
―――先生の立場からするとやっぱり妊婦さんも積極的にワクチン接種をした方が良い?
特に妊娠後期だと、お母さんがワクチンを打つと、お母さんの中に免疫ができます。それが子どもに移行するんですね。なので、間接的に子どもを守ることにもつながります。元々そのワクチンだけではなくて、子どもに対してはお母さんの免疫が行って、産まれたばかりの子どもはそれで守られているんです。それがワクチンを打つことで、より子どもが守られるというふうになります。
ガイドラインは「原則、帝王切開」から「臨機応変」へ。しかし現場では
―――陽性となってしまった妊婦さんの出産についてなんですけども、去年12月20日までのガイドラインには「施設によって原則帝王切開とすることもやむを得ない」というふうに書いてあったんですが、現在これがちょっと中身変わっており「施設によって帝王切開するか、経膣分娩(自然分娩)にするか、臨機応変に対応することが望ましい」と変わっていますが、実際はどうなのかといった日本産科婦人科学会の調査があります。
新型コロナを理由とした帝王切開の割合は、第4波までは感染による帝王切開62%でした。第5波になって59%、第6波61%ということで、このガイドラインが改定されても帝王切開で出産する陽性の妊婦さんの比率というのは変わっていないということです。ちなみに感染していない妊婦さんの帝王切開は約2割だと厚生労働省はしています。だから陽性になって、帝王切開で出産する妊婦さんがいかに多いかということなんですけども。
(城戸康年教授)
もちろん、お母さんと子どもの命、出産を守るために帝王切開が医学的に選択される場合は選択されて、従来なら2割程度が行われてるということです。これに対して、コロナ感染が起きると、自然分娩をすると時間がかかりますから、そうすると周りのスタッフも皆、感染の恐れが高くなるわけです。それが理由で、ひとたび院内で感染が起こってしまえば、以降の分娩なりが大きく障害を受けるので、これまで産科病棟というか、クリニックは、コロナに感染してしまった妊婦さんの自然分娩を長時間扱うことをやはり恐れてたんです。それで苦渋の決断として、帝王切開を選択せざるを得なかったというのがあったという側面があります。
―――帝王切開する必要がない妊婦にまで強要することになり、これは自己決定権の著しい制限になっていると、考え方に一つ問題があるんじゃないかという点は。
そうなんです。病院も感染を広げないために苦渋の決断だったわけですが、今後どちらをどうバランスを取っていくかっていうのは、ますます考えていかなければならないことなんだと思います。