いま、子どもから大人まで「カプセルトイ」にハマる人が続出しています。一般社団法人日本ガチャガチャ協会によりますと、カプセルトイの市場規模は450億円となっていて、ここ10年で1.5倍だということです。そんな中、最近話題になっているのが、“おじいちゃんが書いた”という「豆知識メモ」です。人気のワケを探るため、おじいさん“本人”に話を聞きました。
『富士山には川が少ない』『カバの汗は赤い』 話題の商品は“手書きのメモ”
兵庫県尼崎市にある「#C‐pla あまがさきキューズモール店」。こちらのカプセルトイ専門店は平日にもかかわらず年齢問わず多くの人で賑わっています。ラインナップには、人気アニメ「鬼滅の刃」のグッズやお菓子のミニチュア、そして「ギャルが折った折り鶴」といったクセの強い商品も。
(客)
「ちょっと寄って、『おっ』と思ったらまわす。気晴らしにもなりますし」
「好きなアニメのガチャガチャとかが入ったらしにくるという感じです。ガチャガチャでしか手に入らない、そういうのがあるので」
「くるってまわしたり、出てくるのが楽しみ」
売り場には約500台設置されていて、値段は1回200~300円ほど。それでも1日に30万円ほどを売り上げる日もあるといいます。
中でも最近話題になっているというのが、『本当に手書きシリーズ おじいちゃんのクソどうでもいい豆知識メモ』。1回200円ということですが、どんなメモが入っているのでしょうか。購入した人たちに見せてもらいました。
(購入者)
「『富士山には川が少ない』『幽霊に足がないのは日本だけ※諸説あり』…おもしろい」
「『カバの汗は赤い』『バターは昔塗り薬だった』…まあ、ためになります」
記者も買ってみました。内容は…。
『しげひろの豆知識。松竹梅、植木だと松より梅の方が高い』
そのほか、『タラバガニはカニではなく実はヤドカリ』『浅草の雷門は正式名称ではない』などの豆知識が5つ書かれていました。「手書き」ということもあってか、よく見ると、修正テープがはられている部分もあります。
書いたのは“しげひろおじいちゃん”とのこと。一体どんな人なんでしょうか?
「おじいちゃんは実在する?」企画者に聞く!
手がかりを求め、記者はカプセルトイを片手に、企画した人物を訪ねました。話を聞いたのは、「手書きシリーズ」企画チームの村上正昭さん。去年、あるおもちゃ会社の社長に頼まれたことが商品誕生のきっかけだったといいます。
(「手書きシリーズ」企画者 村上正昭さん)
「ガチャガチャが、原油が上がっていたりとかいろんな事情でどんどん値段が上がっているんです。安くておもしろい企画が何かできないかなと」
こうして誕生した『おじいちゃんのクソどうでもいい豆知識メモ』。今年6月に発売すると、たちまちSNS上でも話題に。
【SNS上の投稿より】
「あきらおじいちゃん!!トリビアっぽくて面白かった!!!!」
「笑い殺されるとこだったわw」
「手書きシリーズ」はほかにも『お母さんの秘伝カレーレシピ』などがあり、温かみのある手書きが受けたのか、シリーズ累計生産枚数十数万となる大ヒット商品になりました。
肝心の“しげひろおじいちゃん”について村上さんに聞いてみました。
(「手書きシリーズ」企画者 村上正昭さん)
「(Qしげひろさんは実在する?)写真はイメージにしていますが、本人は実在しています。『友人』と言ったら失礼ですが、知っているおじいちゃんです。浅草の行きつけのカフェも知っているので、そこに行けばつかまえられると思います」
記者も“しげひろおじいちゃん”に豆知識を教えてもらう
写真はまさかの別人とのことですが、実在する人物だといいます。さっそく、記者は行きつけだという東京都内のカフェに向かってみることに。すると、いました!“しげひろおじいちゃん”こと青木繁弘さん、64歳です。この日は仲間と読書会をしていました。“しげひろ”さん、ヒット商品の立役者になったわけですが、どのように豆知識は生み出されたのでしょうか。
(青木繁弘さん)
「村上さんに頼まれて。(Q頼まれたのはいきなり?)いきなりでした。村上さんと話し合いながらですね。『あれ、ほんとだったかな』っていうのは検索もしてみて」
普段は弁当の配達の仕事をしているという“しげひろ”さん。仕事の中にも豆知識のネタが転がっているのだとか。
(青木繁弘さん)
「職人さんが多いんですよ、お客さんに。勉強になりますよ」
配達中にも豆知識を教えてもらいました。
(青木繁弘さん)
「あそこに『神谷バー』ってあるでしょ。これが日本で最初のバーです」
浅草を案内してもらったときにも…。
(青木繁弘さん)
「このちょうちんで700kgあります。京都のちょうちん屋さんが作って、ここまで運んできている」
とにかく物知り。極意は、気になることは何でも直接聞くことなんだそうです。そんな“しげひろ”さん、「豆知識メモ」の人気ぶりをどう感じているのでしょうか。
(青木繁弘さん)
「不思議です。手書きの方が意味が伝わるんじゃないですかね。久しぶりに手紙を書きたくなりました」
「手書きのカレーレシピをガチャガチャで買う人いる?」
話題の「手書きシリーズ」。豆知識に劣らず人気なのが『お母さんの秘伝カレーレシピ』。ということで、レシピを提供した1人の内田美保さんを取材。内田家の秘伝カレーを教えていただきました。
(内田美保さん)
「うちは娘ばかりなんですよ。ダイエットとか気にするじゃないですか、太っちゃ嫌だとか」
娘のダイエットメニューとして考えたカレーとのこと。今回、特別に作ってもらいました。
まずは野菜を切って、豚肉と一緒に炒めていきます。火を通し、煮込んだらカレールーを入れてと、ここまでは一般的なカレーと同じようです。
すると内田さん、突然キャベツを千切りにしはじめました。
(内田美保さん)
「太い千切りじゃおいしくないの、じゃりじゃりいって」
そして、大量に千切りされたキャベツをカレーに投入。豪快に混ぜ合わせていきます。
これで、たらふく食べても罪悪感がない?内田家特製の「千切りキャベツカレー」が完成です。そのお味は…。
(記者リポート)
「キャベツが本当にカレーになじんでいて、しゃきしゃきで、カレーが絡んでいてすごくおいしいです」
斬新なレシピですが、内田家ではあくまでこれが普通。まさか自分のレシピが話題商品になるとは夢にも思わなかったそうです。
(内田美保さん)
「『こんな手書きのカレーレシピをガチャガチャで買う人いる?』ってさんざん言った。『いいの?うちのカレーレシピで』と。ちょっと楽しんで普段と違うカレーを作ってもらえたら、それもOKかも」
予期せずヒット商品となった「手書きシリーズ」のカプセルトイ。考案した村上さんはすでに次を見据えています。
(「手書きシリーズ」企画者 村上正昭さん)
「僕は『くだらない』ってすごく大好きで、大人が言う『すごく凝って精巧』=『いいもの』ではない場合もある。『くだらないんだけれども、ぎりぎり成立している』みたいなものを(今後も)生み出していけたら」
「くだらない」ようで奥深い。ヒットの秘訣は、にじみ出る人の温かみなのかもしれません。