毎日200便を超えるバスが出発する大阪・なんばの「湊町バスターミナル」。行動制限のない今年の夏休み、人々はここからどこへ、なにをしにいくのでしょうか。バスターミナルの1日を見つめました。
「ナガシマリゾートへ」「インターハイを見に」「研究で徳島へ」
大阪・なんばにある「湊町バスターミナル」。始発の時間である午前6時、取材班が最初に出会ったのは、男性3人組。
(高校1年生の男の子)
「いまからナガシマリゾート行きのバスに乗ります」
3人は高校1年生。なにやら特別な関係なんだそう。
(高校1年生の男の子)
「(Q同じ学校ですか?)いまは全員違う学校です。小学校のクラブチームからずっと中学校まで同じで。コロナの影響で遠いところにみんなで行くことがあんまりできなかったので」
「バスとか全部楽しみです」
高校生になって初めての旅行。たくさんの思い出ができるといいね。
ターミナルではこのあと、北近畿や四国、中国地方へ向かうバスが続きます。
(香川・高松へ行く人)
「インターハイを見に。(Q何の競技を見に?)自転車競技を。昔、自分も乗っていたこともあって興味があるんでね、応援に」
(徳島へ行く人)
「(大学で)民俗芸能の研究をしていまして、民俗芸能の中でも地域の人がなさっている人形浄瑠璃について研究をしております。徳島県に(人形)細工人の方が多くいらっしゃる。その中で懇意にしている方に資料を見せてもらいに行きます」
3年ぶりの開催となる「よさこい」に参加する男の子
そんな中、ひとり大きな荷物を持ち高知行きのバスを待つ男の子がいました。目的を聞くと…。
「よさこいを踊りに行くんです。朝5時15分ぐらいに家を出て、電車に乗ってきて、それで急いでこっちに来ました。(Q朝起きるのは大変じゃなかった?)まぁ全然いけましたよ」
こう話す小学3年生の村島海友くん(9)。3年ぶりに開催が決まった高知の「よさこい」に踊り子として参加するため、お母さんと向かうといいます。6歳離れた姉の影響で2歳から大阪の「よさこいチーム」に参加している海友くん。今年はじめて憧れの高知のチームで踊れることになったんだそうです。
(母・歩さん)
「前もって練習に行かないといけないんです。本番は(8月)10日からなんですけど、きょうからもう練習に参加して」
(村島海友くん)
「(Qはじめての高知は緊張する?)はい」
願いが叶った海友くん。ドキドキとワクワクを胸に高知へ向かいました。
「長野県で物件探し」「祖父母や友達に会いに」
午前7時30分。ギターを背負い大きなスーツケースを持った女性がいました。どこへ行くのでしょうか。
(ギターを背負った女性)
「長野県です。もうすぐ長野に移住するので家を探しにいきます」
でも、「移住」とはなんとも思い切った決断ですね。
(ギターを背負った女性)
「最近(長野県に)遊びにいったときに、すごく良いところだなと思って。空が広くて、山と空と田んぼみたいな風景にすごく感動して、『毎日これがいいな』と思ったので決めました。きょう車買うんですけど、それで物件を探しにいきます。(Qきょう車を買う?)きょう車を買います。着いたらすぐ車屋さんに行って、そのあと不動産屋さん行って」
刺繍の仕事を続けながら、9月には長野での新生活を始める予定です。
午前8時10分。帰省のためにバスを利用する人の姿もありました。
(小学5年生 服部紗和さん)
「徳島県へ。おばあちゃんの家に行きます」
(母・綾さん)
「私はこの子を預けて帰ってくるので。お盆はこの子だけ実家でお願いして」
(服部紗和さん)
「(Q徳島では何をしようと思っている?)だらだらする」
今回の帰省では、おじいちゃん、おばあちゃん以外にも会いたい人がいるといいます。
(母・綾さん)
「(実家の)前の家に同じくらいの年代の子がいるので。(Qその子と会うのも久しぶり?)めっちゃ久しぶりやな?去年はコロナだったので顔も合わせてないので、(家に)こもっていたので。だから久しぶりやな?4年ぶりぐらいちゃう?もうでっかくなってるで」
4年ぶりの再会に期待と不安が入り交じります。そしてこの2日後、紗和さんはその友達と無事に会えました。最初は少しだけぎこちなかったけれど、すぐに打ち解けたんだとか。家ではおじいちゃんが釣った鮎を食べ、カメラに話してくれたとおりだらだらと過ごしているんだそうです。
コロナ前の6割まで回復 この日の利用者は約5300人
正午。バスターミナル唯一の土産物店がオープン。乗車前に駆け込みで帰省先の家族などへのお土産を買う人たちも多く見られます。
午後になってもバスターミナルには絶え間なく利用客が訪れます。今年は3年ぶりに行動制限もなく、利用客はようやくコロナ前の6割まで回復しました。
午後8時。この時間になると東京や東北、九州へ向かう長距離の夜行バスが増えてきます。発車した東京行きのバスを追いかけて手を振り続ける女性の姿がありました。
(見送りをした女性)
「(Q誰がバスに?)娘です。東京に1人で」
ダンスをしている中学2年生の娘がレッスンのため1人東京に向かったといいます。
(見送りをした女性)
「(Qやっぱり寂しい?)そうです」
午後9時20分。ひときわ大きなリュックを背負った女性がいました。どこに行くのでしょうか。
(リュックを背負った女性)
「山梨県の方に行って八ヶ岳の山に。(Q朝バスが到着したらそのまま山に登る?)そうです、山は朝早く登ったほうがいいので。(Qバスで眠れますか?)バスは大丈夫です。快適ですよ、いまのバスは」
目指すは標高2715mの八ヶ岳連峰「権現岳」。その後、いただいた連絡によりますと、見事に登頂成功。天気にも恵まれて山頂からは絶景を見ることができたそうです。
午後11時25分。最終便となる関東方面行きのバスは満席で出発しました。この日の湊町バスターミナル出発便は233本、利用者は約5300人でした。
「よさこい」に参加した男の子『踊るのが楽しかった』
そして8月10日、高知で3年ぶりとなる「よさこい」が始まりました。出番を待つよさこいチームの中に、バスターミナルで出会った村島海友くんの姿がありました。
(村島海友くん)
「はじめての高知のイベントなんで、ちょっとだけ緊張します」
海友くんが参加するチームは「ほにや」。これまでに何度も大賞をとっている伝統あるチームです。海友くんは今回、チームの踊り子募集に応募して参加が決まりました。高知市内には12か所の会場が設けられ、チームは1つの会場だけでなくいくつかの会場をまわりながら演舞を披露します。海友くんたち「ほにや」はこの日、7か所で演舞を披露しました。
初めて経験した高知のよさこいはどうだったのでしょうか。
(村島海友くん)
「踊るのが楽しかったです。ステージで笑顔満点で元気よく踊ったから(メダルを)もらいました」
(母・歩さん)
「100点満点やな?」
(村島海友くん)
「よしっ!めったに100点満点でえへんからな」
バスでやってきた高知で忘れられない思い出ができました。