8月10日に行われた旧統一教会・世界平和統一家庭連合の会見。田中富広会長は会見で、「過去に霊感商法は行ったことはない」「祝福結婚のカップルは円満である」などと発言をしました。旧統一教会を長年取材する鈴木エイト氏は会見について、「論点のすり替え」「同情を引く姑息な作戦だ」と述べました。また、霊感商法について『組織ぐるみで行われていて、献金をさせた見返りに教義などを提供する商品を介在させない霊感商法に移行している』とも話しました。

 また、両親も信者で合同結婚式で出会い生まれたいわゆる“祝福2世”について、「恋愛などが抑えつけられる」「疑問を持っても親に逆らえないことも」あると苦悩についても解説しました。

岸田改造内閣でも接点が判明「深い付き合いだと断ち切るのは難しい」

 (8月10日に内閣改造が行われましたが、岸田改造内閣で7人の閣僚が接点があったということを認めています。どんどん政府側の人間に接点が増えてきているなという印象あります。そんな中、旧統一教会と政治家との関係が根深いんだなというのを感じますが、どう思われますか?)
 「あらゆるところに旧統一教会側が触手を伸ばしている証左だと思います」
 (完全に断ち切るというのは大変なことでしょうか?)
 「付き合いの浅い人は関係を立ち切ることはできると思うんですが、深い付き合いでいろんな協力関係にある人というのは簡単に断ち切ることは難しいと思います」

田中会長の会見「世間の同情引こうと…論点すり替え」

 (8月10日に行われた旧統一教会、現在の世界平和統一家庭連合・田中富広会長の会見。田中会長は『過剰な報道により教会側が被害を受けている』『高額な献金を行わないよう徹底している』『霊感商法なるものは、過去も現在も行ったことがない』という主張でした。これらの主張に関してですが、エイトさんによりますと、教会側が被害を受けているということに関しては『論点のすり替えだ』『同情を引く姑息な作戦だ』と見ていらっしゃるんですね?)
 「明らかにメディアの報道で行き過ぎたものってなかったと思うんですよね。そんな中で、行動によって教会員がこんな被害を受けているという、そういう世間の同情を引こうというのが非常に姑息なものを感じました」

 (田中会長の言葉を聞くと、旧統一教会側が被害者だと言わんばかりの感じのように受け止められましたが?)
 「そうですよね。何かこれだけ多くの被害を与えてきた団体が、なぜ自分たちが被害者なんだというふうに論点のすり替えができるのか、そのズレというのが教団のおかしさであると思います」

 (高額な献金を行わないよう徹底ということなんですが、エイトさんは高額な献金ノルマは課してきたと、これは事実であるということなんですね?)
 「本当にどの口が言っているんだと思いましたけれども、当然、2005年のコンプライアンスの徹底とか、2010年、2011年あたりで信者に年間600万円総額の献金ノルマが課されていたんですね。実際、その経費を引いて300億円近くが毎年、韓国の教祖一族に送られていたという内部文書がちゃんと残っています。そんなところから、高額な献金ノルマをエンドレスに課してきたにもかかわらず、そういうところを隠して、自分たちは高額な献金を求めていないと嘘をついている。そういうところに全く誠実さが感じられませんでした」

「霊感商法は商品を介在させない手法へ…非常に巧妙さを増してきている」

 (霊感商法なるものは『過去も現在も行ったことがない』と主張しています。これに関しては、組織ぐるみの霊感商法、現在は商品を介在させない霊感商法へ移行している、その形が変わってるだけだよと、そういうことなんですか?)
 「実際に2009年の民事裁判で高度な組織、伝道と一体となった組織的な活動と認定されています。しかし、2010年以降は確かに商品と引き換えの消費者契約として、高額な壺を買わせるとか、そういう商品と引き換えにお金をいただくみたいな形は実際取っていないんですよ。高額な献金を課して、例えばこの時期だと、430万円の教典のセットとか言っていたんですが、献金した人、家庭に箱を授けるみたいな、献金と引き換えという形ではないんです。騙して連れてきた受講生に『家系図の講座を行います』って形で受講料として20倍を請求すると。家系図自体は受講生に渡すのではなくビデオセンターが常に預かっているという。霊界の家、善霊堂というものを献金の代わりに授けるみたいな、消費者契約法の消費契約として取り締まれないような形を今もやっているので、そのあたり非常に巧妙さが増してきたなと感じます」

 (売買契約じゃないと取り締まられないということなんですか?)
 「例えば契約書があるわけではない。以前は100万円の絵画を買わせる時には契約書、領収書があったんですよ。今はそういうのがなく、献金の見返りとして何かを授けるみたいなやり方の場合、それをどこまで消費者契約って形で消費生活センターとかが扱えるのか、まず非常に難しいかなと思うんですよね」

祝福2世の苦悩…「疑問を持っても親の意向に逆らえない」

 (そして、旧統一教会の2世信者についてです。いわゆる「祝福2世」は、両親が合同結婚式で出会って誕生した子どものことで、エイトさんによりますと、祝福2世は、教会内で大切に扱われると。しかし、 『恋愛など抑えつけられる』『疑問を持っても親の意向に逆らえない』などの苦悩があるということなんですね?)
 「自由に人を好きになるような気持ちって普通に誰もが持つじゃないですか。そういう自然な感情までも抑えつけられてしまうと、当然いろんな抑圧を受けて精神的にダメージを受けたりとかは当然起こりうるですよね。もちろん従順な2世信者も大勢いるんですけれども、どこかで何か疑問を感じている人もやっぱり多いです。あとは純粋な親子の関係に第三者という宗教団体、別の第三者がいることによって、親と団体の関係、本人と親の関係、本人と団体の関係者の3者の関係になるので、そこでひずみが出てくると思うんですよね」

脱会は「大人になり、経済的に自立できるまでは厳しい」「親に逆らうと…学費すら出してもらえない」

 (2世信者の脱会については、エイトさんによりますと、『大人になり、経済的に自立できるまで難しい』と。やはり経済的な部分が大きいんですか?)
 「そうですよね。例えば中学生、高校生とかも当然疑問を持つ子も多いんですけど、その時に親に逆らってしまうと、学費すら出してもらえないとか、いきなり生活自体が成り立たなくなってしまうんです。そういう気持ちを持っていてもそれを抑えつけて、表面上は付き合っていかなければいけないであるとか、非常に抑圧されてしまうってことがありますよね」

 (本来だったら親に相談したいところなんだけども、それができないという状況がある。カウンセラーなどに相談しても、宗教がらみの問題は断られるケースが多いと。やはり普通のそのカウンセラーではなかなか対応してもらえないという現実があるんですね?)
 「そうですね。例えばスクールカウンセラーに相談したとしても、親とちゃんと話し合いなさいって終わっちゃったりするんですよ。そうなると、相談した結果、絶望してしまうんですよね。せっかく勇気を出して相談したのに『そんなことしか言ってもらえないのか』ってなっちゃうんです。相談を受ける側も、こういうカルト問題、カルトみたいな団体の場合にはどういう背景があってどういうことに悩みがあって、どうすれば解決に向かえるのかってことをちゃんとまず学んでほしいです。相談を受ける側がちゃんとした知識を持って解決策を持っていないと、本当の救いにはならないんですよ。実際に社会福祉士の僕の知り合いで相談にあたってる人は一緒に付いて行って生活保護の申請を助けてあげたりとか、学費でも進学するにあたって、貧困で親が出してくれないケースであれば、返還しないで済むような奨学金の受け方とかをケアしてあげたり、そういう活動をしている方がいらっしゃるので、そういう活動をしてる人に繋げられるような、そういうシステムを作っていきたいなと思います」