猛暑のコロナ禍で24時間勤務の救急搬送の現場はどうなっているのでしょうか。兵庫県の尼崎市北消防署で「救急救命士を目指す5年目の救急隊員」と「勤務歴25年の救急救命士」に密着しました。

『24時間にわたる救急活動』を密着取材

 午前8時。尼崎市北消防署の救急隊員・赤松佳樹さん(26)。いつも少し余裕を持って出勤します。

 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「今日も結構暑いので、おそらく救急件数多いかなと。頑張るしかないですね」
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 午前8時45分、24時間にわたる救急活動が始まります。準備を進めていると、最初の出動指令がかかりました。いざ出発です。
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 赤松さんに指示を出すのは救急救命士である救急担当係長の田中正俊さん。この道25年の尊敬する先輩です。
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 患者は20代の男性。熱は40℃を超えていて、解熱剤を飲んでも熱が下がらず、搬送要請をしました。コロナの疑いがあり赤松さんが声を掛けます。

 (赤松さん)「ここ1~2週間、熱とかコロナの方に会ったりしていないですか?」
   (患者)「ないです」
 (赤松さん)「家族さんも含めて熱ないですか?」
   (患者)「ないです」

 心配している家族も救急車に乗り込みます。

 (電話する田中さん)「発熱患者さんの収容依頼になります」
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 田中さんの素早い対応で搬送先の病院を確保することができました。

署に戻ると…間髪入れずに次の指令

 搬送を終えて消防署に戻ります。車を停めようとしたそのとき、間髪入れずに次の指令が出ました。休む間もなく出動です。
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 救助要請したのは、がんを患っている60代の男性。症状は発熱とのどの痛みです。

 (田中さん)「解熱剤とか使ってないですか?」
   (男性)「解熱剤は服用しています」

 患者の少しの変化にも気を配りながら病院に無事搬送しました。

愛妻弁当を食べる休憩時間「食べてる途中に出動がかかっちゃう」

 午後0時15分、つかの間の休憩時間です。赤松さんの手元にあるのは手作りのお弁当。

 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「嫁さんが作ってくれました。愛妻弁当ですね」

 今年5月に結婚したばかり。毎日、愛妻弁当に癒されているそうです。でも落ち着いて食べられることも少ないようです。

 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「食べてる途中に出動がかかっちゃうんで、基本的にゆっくり食べていないですね。流し込んでいます」
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 そう言った直後にまた出動の指令が。急いで現場へ向かいました。

 今年は猛暑による熱中症や新型コロナウイルスの発熱事案が多く、尼崎市の救急出動件数は過去最多を更新するペースです。

 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「ベッドの数が足りていなくて受け入れできないケースが多くて、もちろん尼崎市外の神戸とかにも行ったりしますし。神戸で決まったら(患者さんにとって)ラッキーやったなという感じ」

過呼吸の女性…悩みに寄り添い話を聞く

 午後1時半、4度目の出動は過呼吸の70代の女性。田中さんは落ち着かせるためにゆっくりと話しかけます。

 (田中さん)「今も頭痛いですか?」
   (女性)「痛い」
 (田中さん)「どの辺が痛いです?」
   (女性)「ここからここ。手がしびれている」
 (田中さん)「息を早くするとしびれてきますから。とりあえず息を整えたら、このしびれは改善しますからね」

 話を聞いていくと、その原因は夫の介護にあるようです。ここで田中さん、女性の悩みにも寄り添います。

 (田中さん)「旦那さんなんですけどね、認知症も強いって言っていましたよね」
   (女性)「デイサービス行く日に『俺がおったらあかんのや』って。なんぼ話してもわかってもらえない。救急隊の人がいたら落ち着くんです。精神的なものやと思うんですけど」

 少しずつ症状も緩和していきました。しっかりと話を聞くことは救急救命士の重要な仕事の1つです。

 (尼崎市北消防署・救急担当係長 田中正俊さん)
 「本人さんにとって楽になっていただきたいので、お話を伺いながら搬送させていただいた」

発熱男性に“空きベッドがない”ことを説明

 午後10時。夜になっても指令は止みません。救急車に乗り込む赤松さん、濡れた髪をぬぐっています。指令がかかったのはシャワーを浴びている途中でした。
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 救急車に乗ったのは発熱と関節痛があるという50代の男性。とても辛そうな様子です。

 (隊員)「39.2℃。頭痛はないですね?」
 (男性)「頭痛はないですわ」

 ただ比較的症状が軽ければ入院できないこともあります。

 (田中さん)「(ベッドが)もう足りていないですね。それだけの余裕が病院にないです。(搬送しても)もう間違いなく帰宅になります」

 田中さんが空きベッドがないことを説明すると、男性は自宅療養を受け入れました。
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 (尼崎市北消防署・救急担当係長 田中正俊さん)
 「せっぱ詰まって緊急度の高い方はもちろんそんないとまはありません。先ほどの方は落ち着いておられたので、一番いい方法をご自身で選んでいただきました」

 医療に余裕があれば搬送する案件でしたが今のコロナ禍では致し方ありません。
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 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「(Q今の事案だと田中さんと同じ説明した?)できました。ある程度、自分の中で『こういう状態かな』と思いながら活動しています」

活動報告をして仮眠…日が昇ると再び指令

 日付が変わると出動も落ち着きました。そこで待っているのは活動報告です。

 (赤松さんに話す田中さん)「置いておいてください、サンキュー。処理終わったら寝や。ありがとう」

 午前2時半、平穏を祈りつつ仮眠をとります。
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 午前5時半、日が昇ると立て続けに指令が。街が動き出すのに合わせて朝の出動ピークを迎えます。

24時間勤務が終了…出動は11回

 午前8時45分、24時間の勤務が終わります。出動は11回、署に居た時間はわずかでした。
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 (尼崎市北消防署・救急隊員 赤松佳樹さん)
 「いつもと一緒で疲れました。生命にかかわる仕事なので、責任とプライドを常に持って、夢である救急救命士の資格を取得できるように自身の勉強に取り組んでいきたいと思っています」
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 (尼崎市北消防署・救急担当係長 田中正俊さん)
 「本当に期待の星だと私も考えています。これからさらに伸びていってくれることと信じています」

 これまでにない救急搬送数を記録しそうな夏。出動を経験するごとに救急救命士の夢に近づいていきます。