8月6日に滋賀県東近江市の神崎川で沢登りツアーに参加していた男女ら約50人が増水した川の中州に取り残され、消防隊員の誘導で救助されました。日本気象協会によりますと、前日はこの川の上流付近で猛烈な雨が降っていたということです。こうしたキャンプ場での「天気の急変」をどのようにして知るのか、そして中州でどのような行動がNGなのかについて、山岳ガイドの橋谷晃さんに話を聞きました。

アウトドアやキャンプで気を付けなければならない“天気の様子”

ーーーこれからアウトドアやBBQを予定してる方がいらっしゃると思います。8月6日の午後、滋賀県東近江市で中州に沢登りツアー客ら約50人が取り残されるということがありました。橋谷さんによりますと、「下流が晴れていても上流で雨が降ると水難事故の危険性がある。気象庁のホームページなどの活用をしてほしい」ということなんですね?
「これからちょうどお盆休みの方が多いと思いますので、夏のアウトドアを楽しむにはどうしたらいいのか、そんなお話をさせていただきたいと思います。例えば川でしたら、この場は降っていなくても、上流で豪雨のような雨が降れば一気に増水してくるということはあります。今はこういう時代ですから、いわゆる普通のニュースと一緒にやっている天気予報って範囲が広いんですよね。なので個別の、特に山についての予報ではありませんので、やはりこういった所に行かれるにはいろんなアプリを見てほしいです。例えば、代表的なものは気象庁の『ナウキャスト』とかですね。今どこでどれぐらいの雨が降っていて、これからどうなりますよ、雷が今ここで落ちていますよということが全部画面の中に現れますので、そういったものを活用していただくといいかなと思います」

スマホの電波が入らない…「上流・風上の雲を観察して」

ーーーただし、キャンプ場などアウトドアに出かけた時に、例えばスマートフォンが見られない、圏外で電波が入ってこないといったことも可能性としてありますので。その場合は、上流方面の空を見て「黒い雲」がかかっていたり、雷があれば安全な場所へ行って下さい。
「特に山の中の場合、電波が圏外になっていることって多いんですよね、両岸が障壁になりますから。そういった場合は雲を観察する。川にいらっしゃるんでしたら上流の雲、山にいらっしゃるんでしたら風上の雲を必ず常に観察してほしい。そこで雲がちょっと黒い雲になってきたりとか、あるいは山の上にいたら積雲が積乱雲になって、モコモコと発達してきたりとか。そのモコモコした雲がちょっと黒くなってきて、こっちにやってきそうな風向きの場合は要注意ですね。そういった“雲を読む力”といったものも身に付けていただければと思います」

中州では「テントはNG」「BBQも避けるべき」

ーーーただし、中州での注意点としてテントは100%NG、BBQも避けるべしということです。また、増水に気付くのは難しいが川の濁りや木々などの流失物に警戒をしてください。そしてもう1つ気をつけてほしいことが急な増水です。天気は悪くないのに急に増水することが実際にあるのですか?
 「そうですね。先ほど申し上げましたように上流で降っている場合。しかも、よく事故があるときに言われるのが、一気にあっという間に1mぐらい増えたという場合は、ただ上流に降っていただけではなくて2つの要因が考えられます。1つは、この川の今いる地点から上流が大きく枝分かれしていて、『流域面積』と言いますけれども、この扇形の面積が広い川の場合は上流で降った場合に増水しやすい川ということになります。それからもう1つ、これが要注意なんですけれども、上流で豪雨があった場合に雨が激しいと木の枝や石ころなんかが斜面から落ちてきますよね。川で流されて途中の少し岩が出っ張ったところに引っかかって、引っかかるとまた次に来た枝が引っかかりそこに積ができてしまうんですね。そしてそこに水が溜まる。でも、そうやってできた積だからそんなに強いわけじゃないので、水が溜まるとその水圧で積が壊れて一気に下流に濁った水が押し寄せると。これが一番怖い事故の元ですので、そういうこともあるんだなということはぜひ頭に入れてアウトドアでの遊びを楽しんでいただければと思います」

「風通しの良い広場にポツン」「木陰のある木の下」にテントを張ると落雷の可能性

ーーーキャンプに出かけるとテントを張ることがあると思うのですが、皆さんがテントを張るとしたらAとBどっちに張りますか?「風通しの良い広場にポツンと張る」か「木陰のある木の下」のか。どちらがいいかというと、正解は「どちらも雷が危険」ということで不正解なのです。雷は高いものへ落ちるので、黒い雲が来た時点で撤収してください。テントはキャンプ施設や避難できる建物が近くにある場所に設置してくださいということですね?
「必ずしもこういう場所が絶対に悪いという意味ではないです。もしキャンプ場じゃなくて自然の中にテントを張るということであれば何を選択しますかという意味で。キャンプ場などではこういったシチュエーションは確かにあります。ただ、そういった場所では危ないなと思ったらすぐに安全な建物に避難してください。例えばキャンプ場の管理等とかそういったところに避難できますので、基本的にはそういった所でキャンプをしてくださいということなんですね」