増え続ける新型コロナウイルスの自宅療養者。大阪府で夜間往診を行うファストドクターに密着しました。

 大阪府は8月3日、20代~40代の軽症者を対象に医師がオンライン診療を行い自宅に薬を配送する仕組みをスタートさせました。

 (大阪府 吉村洋文知事)
 「週末までには約5000人対応できるように日々増やしていきます。症状の軽い方についてはオンラインスキームを作ったのでぜひそれをお願いしたい」

勤務とは別に夜間往診に向かう『ファストドクター』

 8月2日の大阪府の新型コロナウイルスの新規感染者は2万5134人。陽性者の急増によりファストドクターと呼ばれる医師たちは対応に追われています。

 循環器内科医の利根川玲奈医師。普段は大阪府内の病院に勤めていますが、ファストドクターに登録して夜間の往診も行っています。医師らは医療体制ひっ迫を避けるためにオンライン診療も合わせながらコロナ患者の対応にあたっていて、往診は高齢者や基礎疾患がある人などリスクの高い患者が中心です。

 取材した日、午後7時に往診開始。1件目に訪れたのは70代のコロナ患者男性です。

 (利根川玲奈医師)
 「今日は兵庫県内ですけれども、1週間前に発症、発熱と咳で発症されて、その後は自宅療養されているという70代の方ですね」

酸素飽和度は正常値でも…感染以降『1人で歩けない』

 利根川医師、到着して患者から話を聞きます。

 (利根川医師)「息苦しいですか?」
 (70代男性)「しんどいね」

 この70代男性は入院を希望していますが、ベッドの空きがないため調整が難航しています。取材した日は呼吸の苦しさを訴えて往診を要請しました。

 (利根川医師)「(酸素の値は)96%はある。時よって98%くらいに上がるので改善傾向なのかもしれないですね」

 酸素の値は正常値ですが、それ以外の問題がありました。この70代男性は元々要介護認定を受けていて、新型コロナウイルスに感染して以降は1人では歩けない状態になってしまいました。抗ウイルス薬の投与を受けるために通院しなければなりませんが、同じくコロナにかかってしまった妻の負担となっています。

 (患者の妻)「車イスに乗せるのが大変で、車イスから車に乗せるのも大変」

 診療を終えた利根川医師は改めて保健所に入院が必要だと訴えました。

 (電話で報告する利根川医師)「肺炎自体は一応中等症に入らないのかもしれないんですけれども、介護がかなり困難になっていて、肺炎の重症度だけで見ちゃうとちょっとかわいそうかなという印象です」

家族3人感染で“陽陽介護”…エアコンなく熱中症の危険も

 2件目に訪れたのは80代の女性患者です。夫と娘の3人暮らしですが、3人とも新型コロナウイルスに感染していました。そしてこの患者も…。

 (利根川医師)「トイレは歩いて行けています?」
  (患者の娘)「行けていないです。紙(おむつ)で替えています」

 認知症があるものの、以前は1人で歩くことができましたが、コロナにかかった後はほぼ寝たきり状態になってしまいました。

 (利根川医師)「介護用ベッドでもない。ケアを頑張らないと褥瘡(床ずれ)ができてしまうかもしれないですね」
  (患者の娘)「それまでは動けていたんで安心していたんですけれども」

 さらに…。

 (利根川医師)「エアコンはないんですか?」
  (患者の娘)「ないです」
 (利根川医師)「かなり暑くなりますよね」
  (患者の娘)「そうですね」
 (利根川医師)「他の部屋もないんですか?」
  (患者の娘)「あるんですけど壊れている」

 このままでは熱中症となる危険性もありそうです。

 (利根川医師)「入院が必要ですと誰も医者からは言われていないってことですよね?」
  (患者の娘)「(医師に)診てもらえていないので…」

 この80代女性の酸素飽和度を計測すると…。

 (利根川医師)「今95%です(正常値96%以上)。入院したほうがいいとは伝えるんですけれども、入院適用が酸素の値によって決まってしまうところがあって、酸素の値は悪くないんですよ。95%を超えているんで」
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 酸素の数値自体は悪くないためすぐに入院することができません。しかし自らもコロナに感染しながら看病と介護を一手に担う娘さんの体調が心配です。

 (利根川医師)「大丈夫ですか?」
  (患者の娘)「はい」
 (利根川医師)「熱中症っぽい?暑いからね」

 “陽陽介護”のギリギリの状態が続いています。入院が決まるまでこれ以上体調が悪化しないよう、解熱剤や抗生剤の点滴などの処置が行われました。利根川医師もようやく診察を終えても汗がとまりません。

 (利根川玲奈医師)
 「エアコンがないみたいなんですよね。扇風機はあったんですけど。あれだとコロナじゃなくても熱中症になってしまう危険性が高いですからね」

「入院適用に関しては総合的に判断していく必要がある」

 利根川医師は重症度を測る酸素飽和度の捉え方にも課題が出ていると話します。

 (利根川玲奈医師)
 「肺炎としての重症度は軽症でも、それをきっかけに動けなくなってしまってほぼ寝たきりになってしまう。総合的に入院適用に関しては判断していく必要が本当はあると思いますね」

 この後も往診は続き、日付を跨いだころにようやく終了しました。

 (利根川玲奈医師)
 「(Qこの後の仕事は?)朝8時からまた診療があるので大変は大変ですね。大変なので早くコロナは収まってほしいなと思っています」