“ウィズコロナ”ですっかり定着した『飛沫防止のアクリル板』ですが、かつて大手家電メーカー『シャープ』で働いていた技術者集団が“目に見えない空気のカーテン”で飛沫を遮断する画期的な商品を開発しました。その仕組みと実力とはいったいどのようなものなのでしょうか。

元「シャープ」技術者らが開発したアクリル板の代替品

 7月1日、東京で新型コロナ対策で見慣れたアクリル板の代替品として注目される新商品が発表されました。

 (カルテック 染井潤一社長)
 「アクリル板が邪魔だと、コミュニケーションが取りにくいと。ぜひこのテーブルエアーを皆さんに活用していただきたいなと」
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 飛沫感染を防ぐためのアクリル板に代わる空気のパーティション「テーブルエアー」。小さな穴から独自の技術で除菌・消臭したという空気が吹き出し、見えないベールを作って飛沫を遮るというものです。

 (カルテック 染井潤一社長)
 「もうちょっと早く出そうと思ってたんですけど苦戦しましたね。特に風の出し方が難しくて。(会社の)ステップアップになるような商品になったらいいかなと思っていますね」
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 開発したのは大阪市中央区にあるベンチャー企業「カルテック」。社長の染井潤一さん(61)が4年前に立ち上げました。独立前は大手家電メーカー「シャープ」のエンジニアでした。
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 10年前にはLED照明などの開発者としてメディアにも対応していました。

 (取材を受けるシャープ時代の染井潤一さん 2012年)
 「世界初、非常に特徴的な技術でございます」

“光触媒”に惚れこみ起業を決意…社員8人→62人に成長

 そんなシャープの第一線で活躍していた染井さんがなぜ独立を決心したのでしょうか。

 (カルテック 染井潤一社長)
 「シャープさんは『プラズマプラスター』という有名な技術があったものですから、それと少し対抗するような技術だったので。“光触媒”という技術が気に入って、これは世の中に出すものだと自分でも強く思ったので。周りの反対もいろいろあったんですけれども思い切って起業しようかなと」
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 染井さんが惚れこんだ光触媒、それがこの白い液体です。
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 酸化チタンを主原料とする物質で、LEDなどの光をあてるとウイルスや臭いのもとを「水」と「二酸化酸素」に変える働きがあり、除菌や脱臭の効果があるとされています。
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 この光触媒を応用した独自技術こそカルテックの生命線とも言えます。起業した翌年に発売した「壁掛けタイプの除菌脱臭機」は、新型コロナウイルスを減少させる効果があるとして15万台を売り上げる異例のヒット商品になりました。

 (カルテック 染井潤一社長)
 「カルテックといえばこれですね。創業して自社ブランドで出したのがこの“壁掛け”が最初なんです。これはカルテックのエンジニアの思いがこもった商品なんです」 
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 たった8人で立ち上げた会社は現在は社員62人を抱えるまでになりました。この成長を支えているのも実はシャープ出身者です。

 (カルテック 染井潤一社長)
 「シャープ出身者は手をあげましょう。技術者は多いんですよね。愛というよりも、僕らはシャープで育ててもらったので、それを違う形で世の中に貢献したいというのが僕らの思いなので。みんなそういう気持ちでやっています」

“見えない”だけに『どうやって効果を認識してもらうか』

 開発担当の畑澤健二さんもシャープ出身の一人で、今回のテーブルエアー開発の中心を担っています。実験室では空気のパーティションの肝となる空気のデータ測定をしていました。

 (テーブルエアー開発担当 畑澤健二さん)
 「ここからのパイプの穴からの風速、ようは風の強さですよね。それがそれぞれの高さでどれくらいまで来ているか」
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 光触媒で除菌された空気がパーティションとして必要な高さまで均等に出ているか確認する重要な作業です。この形状に至るまでも苦労の連続でした。

 (テーブルエアー開発担当 畑澤健二さん)
 「これが試作の山です。これは全部ボツですね」
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 今年6月、畑澤さんたちはできたばかりの試作品を手に、大阪・中央区にあるお好み焼き店「千房」に来ていました。ニーズはあるのか、改良すべき課題は何か、実際に使ってもらい把握する狙いです。
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 設置するのは現在はアクリル板が置かれているレジのカウンターそば。

 (千房・千日前本店 岩田結衣店長)
 「アクリル板とマスクがあると(声が)少し聞き取りづらい部分はありますね。耳を傾けないといけない場面も多くなるので、空気で遮断してくれるならだいぶクリアになりそうですね」
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 カウンターの枠に沿うようにテーブルエアーを設置していきます。10分ほどで作業は完了しました。

 (千房・千日前本店 岩田結衣店長)
 「スッキリ感はすごくありますね。でも、それ(感染対策)がどこまで伝わるかですよね、お客さまに」

 目に見えない空気のパーティションだけに、どう効果を認識してもらうかが課題です。
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 “効果の見える化”はできないか。そこで協力を求めたのが「理化学研究所」でした。電子タバコを使い、人間の呼気のマイクロ飛沫がどのような動きをするか、撮影を試みることに。
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 何もしないと対面の人に届いてしまいますが、稼働させると吐き出した呼気が空気のパーティションで遮断されて沿うように上がっていくのがわかります。
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 (理化学研究所 斎藤徳人さん)
 「思ったよりきちんと遮断できているなと思いましたね。もっと拡散するかと実は思っていたんですけれども。意図的に強めに吐いている状況ですね、その条件であれだけきちんとシールド(遮断)してくれていることがわかりますので」

 畑澤さんたちも手応えをつかんだようです。

 (テーブルエアー開発担当 畑澤健二さん)
 「けっこうキレイにできているんじゃない?いいと思います」

『安心安全な生活ができるようなものを出していきたい』

 (スタッフと集会をする染井社長)
 「おはようございます。暑い中で大変な時期なんですけど、ぜひこの新製品で勢いつけてね」
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 いよいよ発表会が始まりました。

 (カルテック・広報 落合平八郎さん)
 「いつもの(会見)だとアクリル板があると思うのですが、ここに実は見えない空気のカーテンがあります。実は今日はこういう変わった商品を皆さまにご紹介したいと思っています」

 開発開始からわずか半年余り。ベンチャーらしくスピード勝負で開発に取り組んできたテーブルエアー。『目のつけ所がカルテックでしょ?』、そう言われるよう総力戦で挑んできました。
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 商談会には約150社が訪れて反応も上々だったようです。

 (エネルギー関連会社)
 「今のニーズに合うなと思ったので。うちの事務所にも使えそうだなと思うので」
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 (ファミリーレストラン関連会社)
 「考え方が斬新というか。お客さまとの会話を重要視するレストラン業界では非常にありがたい。(アクリル板の弊害で)金銭の受け渡しの間違いがあったりとかのトラブルも発生しているので、そういうところが解決できたら非常にいいかなと思っています」
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 (カルテック 染井潤一社長)
 「光触媒が役に立つように、喜んでもらって、安心安全な生活ができるようなものを世の中に出していきたいなと思っております」