安倍元総理の銃撃事件で問われている宗教と政治の問題。山上徹也容疑者の母親の多額献金で浮かびあがった旧統一教会関連の訴訟を長年手掛けてきた紀藤正樹弁護士が「政治と宗教」の関係をリアルに解説。政治家にとっては旧統一教会の信者は選挙活動において「24時間一心不乱で働いてくれる」「普通の宗教団体とは異質のもの」と表現。一方の旧統一教会にとっては政治家とのつながりを示すことで、「信者の士気が上がる」→「統一教会の献金額が増える」→「韓国の本部に送金額が増える」という仕組みを解説。さらに安倍政権になってから政治家は旧統一教会との関係を隠さなくなったということで、旧統一教会との関係について紀藤弁護士は「自民党として調査すべき」と話します。

(2022年8月1日 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

有名政治家との繋がり…旧統一教会側のメリット『広告塔』信者の士気向上に

ーー次々と明らかになる旧統一教会と政治家の関係。これまでに自民党の国会議員で関係が報じられています。7月末に岸田文雄総理が「政治家の立場からそれぞれ丁寧に説明をしていくことが大事だ」と話しました。この旧統一教会と政治家の繋がりなんですが、それぞれのメリットとは一体何なのでしょうか。旧統一教会にとってはどういうことが考えられますか?

(紀藤正樹弁護士)
「やっぱり広告塔ですよね。つまり教会員に著名な政治家が来てくれることによって信者の士気が上がる。信者の士気が上がれば旧統一教会の活動が活発化できると。そして最終的には旧統一教会の売り上げが上がる。つまり霊感商法等の被害者が増えるということになりますので、我々被害者から見たら問題ですが、旧統一教会側から見たら売上が上がれば旧統一教会の韓国本部とかに貢献できるということになると、そういうような図式の中で今回、安倍元総理がビデオメッセージを寄せたということです」

ーーその売り上げは献金ということでしょうか?
(紀藤正樹弁護士)
「そうです。旧統一教会は韓国とアメリカに本部があるんですけども、年間で数百億円単位の金額で送金してるんですね。その送金額は目標値があって、目標値に達しないとまた問題が起こるんですけども、送金をすることが日本の旧統一教会の使命なので、当然信者の士気が上がることは売上が上がることを意味します」

政治家のメリットは選挙での「票」と「無償の労働力」

ーー一方で政治家側のメリットはどんなことが考えられますか?
(紀藤正樹弁護士)
「これはやっぱり票ですよね。選挙でギリギリ当選しそうな人に関して見ると、やはり大体組織票が約8万票ちょっとあると言われていて、その票で最終的に当落線上の議員を当選できるというメリットがあります。もう一つは無償の労働力ですよね。旧統一教会員というのは本当に一生懸命働きます。選挙の応援や動員、電話掛けをやってくれる。選挙は基本的にお金は使ってはいけない仕組みになっていて、選挙スタッフは基本的にボランティアじゃないといけないですよね。ボランティアスタッフを大量に動員できるというメリットが政治家にとっては非常に大きいと思います」
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ーースタジオにいる豊田さんも国会議員を務めていらっしゃいましたが当時はどうでしたでしょうか?
(豊田真由子さん)
「旧統一教会との関わりも一切なかったので、お恥ずかしいんですがこういう実態があることを知らなくて、今回いろいろ見てむしろびっくりしました。色々聞いてみると、与野党を問わず関わりがあったり、選挙の応援をしてもらってるという議員さんがいるってことですね」

「ここで話を整理した方がいいと思うのは、宗教法人やその信者の方はいろんな信仰の自由があるので、その方たちが候補者を応援すること自体は別に憲法とか法律に反することではないんです。今回の話の問題は、高額の寄付や霊感商法とか社会的に国民の中に被害を出されている方が大勢いて、本当に困っていらっしゃるという社会的な問題がある団体に応援をしてもらう、そこに行って挨拶をするということが適切ではないことだと思います。それについては、私ももっと慎重であるべきだったというふうに思うので、政治の世界って私は本当に入り口にしかいなかったんだなと」

「多分もっと大きいのは、結局、信仰心に基づいて応援するので、信者の方って多分どの法人さんでも上から言われて『うちの宗教法人はこの人を応援してるんだよ』ってなったら一心不乱にものすごく応援するし、票も入れるし、運動員じゃなくても『この人よろしくね』と周りの方に言ってもらったりするんです。一般的にそれってものすごく大きな票の力になるので、1票でも欲しいと思っている候補者の側からしたら、もらえるものは何でも欲しいみたいな感じに多分なってしまっていて、その際に何十何百という数の宗教法人さんがそういうことを日本中できっとやっておられると思うので、そこの見極めをすごくしなきゃいけないんだと思うんですよ。一方でこの候補者を応援しないよと上が決めたら去っていくんですよ。だから個人の思いで応援するわけじゃなくて、あくまでもその信者としての信仰心なので」

旧統一教会の信者は“一生懸命の度合いが違う”『一心不乱に24時間働く』

ーー信仰心みたいなものがやっぱり強いんですね?

(紀藤正樹弁護士)
「一般の宗教団体でも確かに一生懸命応援するんですよ。一生懸命応援するんですけども、その一生懸命の度合いが旧統一教会の場合はちょっと違うんですよ。もういわゆるカルト的な団体なので24時間働くんですよ。しかも無休で。大体お小遣い1万3000円ぐらいなんですよ。今の青年でも、そのぐらいだけ24時間、深夜も眠らず本当に数時間の単位しか眠らずですね。一心不乱に働くんです。ですから、一般の宗教団体の信者さんは確かに熱心なんだけども、そこまで働かないですよ」

「しかも若い人たちがたくさんいるんですよ。やっぱり選挙は労力がかかるんですね。結局、色々なところに電話掛けというデスクワークだけじゃなくてポスター貼りも含めてかなり力仕事もあるわけですよ。そのときに若い人たちが一心不乱に24時間働いてくれるスタッフがいればメリットはとても大きくて、選挙をやっている人だったら誰もがわかると思うんです。その時に旧統一教会の信者は宗教団体の中でも質的に最も使い勝手がいい人たちということを前提としています」

ーーということは我々が想像以上に政治家側には大きなメリットがあるっていうことですか?
(紀藤正樹弁護士)
「そうですね。想像以上だと思います。だから旧統一教会の信者と付き合ったことがある人であれば誰しもがわかることだと私は思います。宗教団体の応援は当然あるわけですけど、そのこと自体を否定してるわけじゃなくて、旧統一教会の信者の応援は普通の宗教団体とは異質なものだというふうに考えてもらった方がいいと思います」

「自民党内でもきちんとした調査を」

ーーレベルが違うということですね。旧統一教会と政治の関わりについて自民党の茂木敏充幹事長は「自民党と教団は組織的な関係はない」と話しています。そして、自民党の福田達夫総務会長は「正直何が問題か僕はよくわからない」と発言し、その後に発言について釈明をしています。他の政党が調査を進めている一方で、自民党は調査に後ろ向きなんじゃないか?と、いろんな人が今この旧統一教会に関してコメントしていますが、紀藤さんはどのように見ていらっしゃいますか?

(紀藤正樹弁護士)
「私は旧統一教会のことをご存知ないこと自体が問題だと思っているので、やはり福田総務会長の話は旧統一教会への認識の甘さを自民党の議員の1人として象徴的に示す言葉だと思うんですね。その間に勉強してほしいんですよまず。我々はもうずっと前から資料を提供したんです。ちゃんと読み込んでいただければ旧統一教会の反社会性をある程度わかったと思うんですよね」

「やはり福田さんにお願いしたいのは、これからきっちり勉強して、自民党の中で自浄作用として、岸田総理が丁寧にというふうにおっしゃったんですけど、丁寧に個々人が説明するというレベルを超えて、維新がやられているように党内調査をきちんとすべきだと思います。あまりにも多くの自民党員の議員さんが関わってることは大きな問題があるというふうに思います」
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ーーただ幹部の皆さんのコメントを聞いていると本当にそこまで踏み込んでやってくれるのかなと疑問に思うんですが紀藤さんどうでしょうか?
(紀藤正樹弁護士)
「その通りですね。だからその岸田総理もですが、茂木幹事長と岸田総理の話では、より岸田総理の方が一歩踏み込んでるんですね。ですので個々の議員への丁寧な説明とまでは言ったわけですから、今度は党を挙げて調査をするというところまできっちりしていただきたいし、検討がなければまた同じような事件が起きてもおかしくないんですよ。結局、膨大な被害者が旧統一教会の過去の事件を背景に埋もれていて、これを掲載しないからこそ問題が起きた。逆に言うと放置したからこの問題が起きたという面があるわけですから、自民党としては真剣に考えて、調査・検討した上で、旧統一教会との付き合い方だけではなくて、こういう団体を日本でどういうふうに考えているのかをきちんと党内あるいは超党派で検討する場を設けていただきたいなと心から思います」