新型コロナウイルスの感染爆発で高齢者施設では陽性者が陽性者をみる『陽陽介護』が起きています。
7月31日、岸田文雄総理は、現在2類相当としている新型コロナの感染症法上の位置づけについて、第7波収束後に本格的に見直す議論に入る考えを示しました。現在は治療費などが公費負担である一方、医療機関などが全ての感染者の情報を届け出なければならず、業務ひっ迫の一因となっています。そのため、全ての感染者を確認する「全数把握」の見直しも検討されています。
(岸田文雄総理大臣)
「今後、時期もしっかり見極めながら変異の可能性等もしっかり判断したうえで、2類として規定される項目について丁寧に検討していく。感染症法上の分類については考えていきたいと思っています」
第7波の影響で医療現場は深刻な状況が続いています。大阪府内にあるグループホームではクラスター(感染者集団)が発生し、深刻な人手不足となっていました。この施設を水野クリニックの水野宅郎医師が訪れ、職員に様子を尋ねます。
【訪問の様子】
(職員)「利用者さんは9人です」
(水野医師)「何人が陽性ですか?」
(職員)「6人陽性で1人が入院。今ここにいるのは5人です」
(水野医師)「5人?」
(職員)「はい、陽性者は5人です」
(水野医師)「みる人は何人?」
(職員)「日勤者はゼロですね」
(水野医師)「えっ?」
(職員)「日勤できる人はゼロですね」
(水野医師)「ゼロ…」
このグループホームでは入居者9人のうち6人が感染。職員も15人のうち6人が欠勤となり、9人となりましたが、全員が陽性となりました。
この施設について水野医師に話を聞きました。
(水野クリニック 水野宅郎医師)
「(Q現状の受け止めは?)勤務している従業員の方も感染してしまうということで、かなり規模の小さい施設のほうが、入居者をみる人がいなくなるので、かなりしんどい状況に追い込まれているなというのは今感じています。(Q小規模施設でスタッフが感染した場合はどのように運営されている?)(陽性の職員で)若い方とかで症状がほとんどない方が、一部、みんなの負担を背負って泊まり込みで働いているような場面も遭遇しますね。陽性の方が陽性の方をみるという形です」
陽性になった職員が陽性の利用者を介護する『陽陽介護』という現実。クラスターが発生した高齢者施設に対して大阪府は医師が往診する体制をとっていますが、現状は追いついていません。
【訪問の様子】
(水野医師)「ちょっと大変やんな」
(職員)「大変なんですけど、もう…」
(看護師)「泊まり込みでベッドで休んでらっしゃるみたいで…」
この職員も陽性が確認されましたが、徘徊などが心配される入居者のケアのため、泊まり込みで勤務を続けていました。
【訪問の様子】
(水野医師)「限界ありますよね」
(職員)「そうですね。ほんとね、なかなか応援の手が届かないんで」
(看護師)「言ってくださいね、なんでも」
水野医師は、今一度、基本的な感染対策の徹底を呼び掛けています。
(水野クリニック 水野宅郎医師)
「僕の外来でも、高齢者の方が感染して重症化する方も結構増えてきている。今は感染対策をしっかりしてもらった方がいいかなと思います」