新型コロナウイルスの感染が急拡大している第7波で、コロナ患者を病院へと搬送する『民間救急』。連日2万人を超える感染者が確認されている大阪府の民間救急では、1日に約100件の問い合わせがあるなど依頼が急増しています。「入院先が見つからない」といったケースも増える中で、日夜奮闘する救急現場の現状を取材しました。
“青色の救急車”…コロナ患者を搬送する「民間救急」
第7波に入り連日2万人を超える新規感染者が確認されている大阪府。7月27日、街に“青色の救急車”の走る姿がありました。
その車両にストレッチャーで運び込まれたのは、新型コロナウイルスに感染した82歳の女性です。女性は普段から寝たきりで、基礎疾患があるといいます。同居する家族と隔離する必要もあるため、入院が必要です。
(対応する救急救命士)
「ちょっと指1本お借りしますよ。(血中酸素飽和度は)95%取れています。お布団かけておきますね」
患者には救急救命士が付き添い、容体の確認など声をかけながら病院へと向かいます。
そして、約10分後。無事、女性は病院に到着。
(救急救命士)
「いまね、病院の方に到着しました」
ストレッチャーで中へと運ばれました。
今回、コロナ患者を搬送したのは自治体の消防局の救急車ではなく「民間救急」でした。民間救急は本来、緊急性が低い患者の転院や退院時の移送などを請け負っていますが、コロナ禍では自治体の消防局の救急車などでは手が回らず、自治体からの委託を受けてコロナ患者の搬送も担っています。
問い合わせは1日約100件にも…搬送車両数を約2倍に増やすも既に足りず
第7波の急激な感染拡大を受けて、7月下旬、大阪市旭区で民間救急を運営する「関西メディカル民間救急」ではひっきりなしに電話が鳴っていました。
(電話対応をするスタッフら)
「ちょっとごめんなさい。いまは案件をさばくのに(予約が)溜まっている状態なので、順番に配車してからの時間になるので」
「ちょっといまね、夕方くらいまではもう詰まっておりまして。ちょっときょうの対応は難しいです」
この会社では第6波の経験を受けて、7月から大阪市内の車両数を4台から9台に増やして対応しています。ところが、大阪で1日の感染者が初めて2万人を超えたころから依頼が急増。搬送車両は既に足りていない状況となっていました。
(関西メディカル民間救急 畔元隆彰社長)
「圧倒的に私たちが(多く)搬送しているのが高齢者。高齢者の中でも超高齢者といわれるような方々。問い合わせでいうと(1日)100件くらいはいっていると思うんですけれども、実際に搬送しているのは直近だと最多で70件です」
発熱して2日以上経過する高齢者…容体の悪化で受け入れ先がなかなか決まらないケースも
第7波の現状はどうなっているのでしょうか。この日、民間救急の車両に運ばれた79歳の女性。救急救命士が酸素飽和度を測ると90%前後でした。「中等症2」に該当するレベルまで低くなっていたことから、すぐさま酸素の投与が行われました。
(対応する救急救命士)
「(血中酸素飽和度は)いま94%。(酸素流量を)3リットルまで上げました。搬送時間はどれくらいですかね?20分?了解」
隊員が駆け付けた時点では入院先は決まっていましたが、いまの容体を病院側に説明すると…。
(対応する救急救命士)
「受け入れ、ダメでした…。『(病院の受け入れが)中等症1までなので、意識レベルが低いと無理です』みたいな」
容体の悪化で病院の受け入れが白紙に…。すぐに保健所に連絡して他の病院を探してもらいます。
しかし、時間とともに女性に変化が。
(対応する救急救命士)
「だいぶ体が熱いですもんね…。もう1回ちょっと熱を測りますよ。熱が39℃を超えてきて、いま39.3℃。上がってきているな…」
搬送先が決まらない中、女性の息子も心配そうに隊員に話しかけてきました。実は2日前から発熱していたものの、入院先が見つからない状況だったといいます。
(隊員と話す女性患者の息子)
「病院にかかるまでに2日以上かかっているんですよ。たぶんそんなすぐに(病院は)見つからへんと思うんですよ。栄養状態も悪いし、だいぶ弱っていると思うので」
その後、日は落ちて、あたりはすっかり真っ暗になりました。そして…。
(対応する救急救命士)
「病院が決まって、いまから病院に向かいますね。長い間お疲れさまでした」
車の到着から約4時間、ようやく病院に入ることができました。
救急救命士『第7波が始まったばかりでこの件数を走っているのが一番怖い』
こうしたケースは最近では珍しいことではありません。大阪府によりますと、府内での「救急搬送困難事案」は7月に入って急増し、7月24日にはコロナ禍以降で最多となる1日300件にまで上りました。
【車内のやりとり 7月25日】
(女性患者)「ゴホゴホ」
(救急救命士)「せきが止まらんね」
(女性患者)「もう病院に入りたい」
こちらの女性も1時間以上病院が見つからない状況が続いていました。いつ入院できるかわからない状況に不安がこぼれます。
【車内のやりとり 7月25日】
(女性患者)「しんどいです、あてがない…。病院がなかったら…」
(救急救命士)「病院がなかったら…決まるとは思うんですけどね」
狭い車内で長時間待つと負担になるとして、女性は一旦自宅に戻りました。結局、女性も病院が見つかったのは救急車を依頼した約4時間後でした。
過去最多の感染者数を大幅に更新する第7波。まだ見えぬピークを前に救急の現場では「非常事態」が続いています。
(救急救命士)
「まだ(第7波が)なにより始まったばかりで、いまこの件数を走っているのが一番怖いところ。これがどんどん中盤や終盤になったら想像ができないくらいの数になってくるのではないかなと、すごく懸念するところではあります」