安倍晋三元総理が銃撃され死亡した事件。逮捕された山上徹也容疑者(41)は「手製の銃」を使用して殺害した疑いがもたれています。ネット上には“銃の作り方”に関する情報もありますが、銃器評論家は銃の製造について「自らの命を危険にさらす」と強く警鐘を鳴らします。
「喉から手が出るほど銃が欲しい」
警察によりますと、逮捕された山上徹也容疑者は、事件前日の7月7日にあった安倍元総理の岡山市での演説会について、7月3日以降にインターネットで把握していたことが新たにわかりました。また、7月6日にJR奈良駅で新幹線の切符を購入していたこともわかっていて、警察は、山上容疑者が7月3日~6日の間に安倍元総理殺害を最終決断としたとみて調べています。
今回犯行に使われたのは「手製の銃」です。山上容疑者は事件前日に岡山で投函したとみられる手紙でも、銃を手に入れることへの執念を記していました。
【山上容疑者が投函したとみられる手紙より】
「私は『喉から手が出るほど銃が欲しい』と書きましたが、あの時からこれまで銃の入手に費やして参りました」
また、手製の銃について山上容疑者は「YouTubeで作り方を調べてインターネットで材料を買った」と話しているということです。
「火縄銃と変わらない構造」「黒色火薬は不安定。静電気でも発火」
安倍元総理の命を奪った「手製の銃」。銃器の専門家はその製造は難しくないと言います。
(銃器評論家 津田哲也さん)
「一般の人たちは現代銃の連発式の高性能のものを想像されるから、手作りじゃ難しいとお考えになると思うんですが、今回の犯行に使われたのは極めて原始的な火縄銃と変わらない構造なんですよ」
YouTubeに投稿されている「銃の作り方」と題した海外の動画では、実際に発砲できる様子まで紹介しています。こうした投稿はインターネット上にあふれていて、知識さえ手に入れれば銃を誰でも作れてしまうといいます。
(銃器評論家 津田哲也さん)
「(Qどんな資材が必要?)材料で必要なものは金属製のパイプ、鉄ないしステンレスの強度のあるものです。あと後方を閉じるための部品。火薬の方はといいますと、市販されている花火をほぐせば手に入りますし、そうでなくても材料になるものは通信販売で全部そろうんですよ。資格がいるようなものはありませんし、特殊なものもありませんし、どこにでも出回っていて、誰が買ってもおとがめがないようなものばかりですから。数千円、まず1万円を超えることはないと思います」
実際、今回の事件に限らず、2018年には拳銃や実弾を製造したなどとして兵庫県姫路市の会社員が逮捕される事件も起きていて、動画サイトが参考になったとされています。
しかし、津田さんは、銃の製造は法を犯すことにとどまらず、自らの命を危険にさらすと強く警鐘を鳴らします。
(銃器評論家 津田哲也さん)
「火薬そのものが、黒色火薬は不安定なんですよ。静電気でも発火することがあるんですよ。だから事故のもとです。下手をすると本当に作った本人が爆死する可能性もあるわけですし、できあがったものも火薬の量を誤ったら銃が破裂して大けがをする、そういうリスクがあります。だから安易にいたずらで真似をするようなものではないです」
銃の密造行為については、武器等製造法という法律により、製造で3年以上の懲役(※営利目的を除く)となっています。津田さんは手製の銃への有効な対策について、ネット上にある銃の作り方の情報を規制して遮断するのは難しいとして、この法律の厳罰化が効果的だとしています。