近鉄が来年4月からの大幅な運賃値上げを申請したことをめぐり、7月14日に国の公聴会が大阪市内で開かれました。値上げに反発してきた奈良県知事と理解を求める近鉄側。折り合いはついたのでしょうか。

 7月14日午後に開かれた国交省運輸審議会の公聴会。そこに現れたのは奈良県の荒井正吾知事です。平成元年以降で鉄道運賃に関する公聴会に都道府県知事が出席したのは初めてだといいます。
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 ことの発端は今年4月。コロナ禍の影響で収支が大幅に悪化した近鉄は、需要回復が見通せないことや大規模な設備更新を控えていることから、来年4月からの運賃値上げを国に申請しました。値上げが認可されれば、大阪や京都と奈良を結ぶ主要区間は100円以上の値上げとなり、大阪難波~近鉄奈良は570円から680円に、京都~近鉄奈良や大阪阿部野橋~橿原神宮前は640円から760円になります。ところが…
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 (奈良県 荒井正吾知事 今年4月)
 「公聴会を要求することにしたいと思います。私が出かけて公聴意見の陳述をさせていただきたい」

 多くの近鉄ユーザーを県民に抱える奈良県の荒井知事が、「すでに関西の他の私鉄と比べても運賃が高い水準にあるのに一方的に値上げされるのは納得できない」と即座に不満を露わにしたのです。

 その後も荒井知事は“近鉄批判”を繰り返します。

 (奈良県 荒井正吾知事 今年5月)
 「鉄道経営の仕方に不備があったのではないか。それを安易に鉄道運賃に転嫁されては困りますよというのが地域の声です」

 また、近鉄の大型投資が大阪や特急車両に集中し、奈良が置き去りにされているような状況も不満の一因のようです。

 (奈良県 荒井正吾知事 今年6月)
 「近鉄の場合、(地域との)共存共栄の精神が低いように私は思っております」
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 一方で奈良の自治体からは値上げに理解を示す声も上がっていました。

 (奈良市 仲川げん市長 今年5月)
 「もちろん値上げをするということ自体は喜ばしいことではないかもしれませんが、インバウンドが減るなどのいろんな経営環境の変化がある中で、安全性を絶対に守らなければならないという公の事業の難しさというのはすごく共感をしております」
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 私鉄では最長の営業距離501.1kmを誇り、田園部にも多くの路線を抱える近鉄。人口減少の影響を最も受けてきた鉄道でした。今回の値上げ申請も実現すれば、消費税率引き上げに伴う改定を除けば、約30年ぶり。四半世紀以上踏ん張ってきたとも言えるのです。
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 そして迎えた7月14日の公聴会。折り合いはついたのでしょうか。

 (奈良県 荒井正吾知事)
 「今後とも対話をしようという回答がありましたので、それは大きな一歩だと。沿線のいろんな需要開発・需要開拓をしていただく。近鉄だけではできない面がありますので、私たちが協力したいと」

 近鉄が奈良の沿線開発に前向きな考えを示したことに納得したのか、荒井知事は対決姿勢を転換。値上げに初めて理解を示しました。

 (奈良県 荒井正吾知事)
 「『一緒にやろうよ』と、『地域との共存共栄のラインでやろうよ』という話が将来出てくるかもしれません。それはそれで歓迎でございます」
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 (近畿日本鉄道 都司尚社長)
 「他社との状況の違いなんかを今日できるだけ説明を申し上げて、一定のご理解を賜れたのではないかなと」

 運輸審議会は年内には値上げを認可するかどうか決める見通しです。