7月8日に安倍晋三元総理が銃撃され死亡した事件。そして7月10日投開票が行われた参議院選挙。これらについて、7月11日のMBS『よんチャンTV』では、弁護士でコメンテーターの橋下徹さんに出演していただき話を聞きました。

「命が狙われて初めて政治家って言える」安倍元総理に言われた言葉

 ―――橋下さん自身も安倍元総理とは近い関係性にあったと思いますが、改めてどんな人物でしたか?
 「僕と比べてもおかしな話なんですけど、やっぱり真逆というか、やっぱりザ・政治家。人との付き合い、それから僕とも考え方はかなり違うんですよ。だけども違うことを前提に一致するところを一生懸命やっていこうと。僕は本当にこの安倍さんの死は納得いかない。本当に納得いかない。2009年、僕は大阪府知事2年目のときに安倍さんと初めて新幹線の中でお会いしたとき、挨拶に行ったんですね。安倍さんちょうどそのとき不本意ながら退陣して野党に下ったかなりどん底というかそういう状況のときに、僕は大阪府知事2年目でお会いして、横に座ってくださいってことでちょっとお話させてもらったらね、安倍さんは僕の大阪のいろんな改革の状況をメディアを通じて見てくださっていて、そのときに言われたのが『橋下さん命狙われてるでしょう』『家族は大丈夫?』ということを言われてね。『でもね政治家ってね、命が狙われて初めて政治家って言えるんだよね』ってことを言われてね。『本当に気をつけてよ』と。『でも橋下さん、それ政治やってる証だから』と。『私もそういう政治をもう1回やりたいと思ってます』という話を聞いたんですよ。でね、だからといって政治家が死ねばいいってわけじゃないんですよ。でも政治家ってやっぱり命かけてやるときあります。僕もかっこつけているかもわからないけど、大阪府政改革や大阪都構想やってるときは、もう最後殺されてもいいやと思ってたんですよ。もう殺人予告もどんどん来るからね。安倍さんも僕なんかよりもっと命を狙われるそういう立場で、その後政治をされていたんだけれども。これ容疑者の今の供述内容を聞くと、どうも政治信条とかそういうことを関係ないって話をして、特定宗教団体との関連性で逆恨みみたいなもので犯行に及んだということを言って、これ全然政治と関係ないやんかと。なんやねんこれと。この最後の死は。これはまたいろんな意見があるかもしれないけど、安倍さんとその特定宗教団体の繋がりの件に関して調べたら、ネットの中でもいろんなことがもうわんさか出ていてね。表現の自由は大切ですよ。だから何でも規制しろとは言わないけど。安倍さんは命をかけて政治をやっていたと思うんだけど、最後この政治と関係のない形での死っていうのは本当に無念だと思うし、僕は納得できないですね」

警備体制への見解は?「問題があったかもしれないが…」

 ―――山上徹也容疑者は犯行の動機について「宗教団体に恨みがあった。その宗教団体と安倍元総理につながりがあると思った」と供述しているということですが、もしかしたら大きなただの勘違いから生まれた殺人だったかもしれません。山上容疑者には、自民党を批判したいとか選挙を潰したいとかそういう主義主張がなかったということが、現段階の供述では見えてきています。一方で警護の部分ですけれども、橋下さん自身も周辺にSPがついた経験があると思いますが、今回の警備体制に思うことはありますか?
 「奈良県警の本部長が『問題は否定できない』と言っていますよね。やっぱり問題があったんでしょう。ただ1つみんなでしっかりベースというか基礎を認識しなきゃいけないのは、2発目が発射されるときに飛び込んでいる警官いるんですよ。もう1m2mの至近距離で銃を向けられてそこに飛び込んで、このカバンの形をした防弾の板、あれをパーンと出して飛び込んでいるんですよ。この職務に対するね、本当に守らなきゃいけないっていう、自分の命をかけてでもっていう、ここは全否定しちゃいけないと思う。フォーメーション、配置とか計画とかそういうところに何か問題があったかもわからないけれども、やっぱりこの現場の末端の警官は本当に命をかけて守っている。僕も襲われたことあるんです。その時も選挙活動中だったんだけど、バーンと来られて『やられた』と思ったときに、バーンとみんながブロックしてくれて助けてくれたりとか。そのときは刃物とかはなかったのかな。あとは周りで日本刀振り回したのが来たりとか、そういうのはちょっと離れてたからやってくれたんだけども、バッと襲われたときにはもう身を挺してみんながブロックしてくれたりとかね。でも今回は本当に警備体制をしっかり検証してもらいたいのと同時に、これも自民党の政治の強さなのかもわかんないけれども、僕はやっぱりああいうミカン箱の上では演説はできなかったですね。僕は臆病だったから。だから街宣車の上で鉄板張られたところで僕はやっていました。警護の方に言われていたのは『とにかく爆発音とか異常な音がしたらとにかくしゃがんでください』と言われていました。ただ本人ではしゃがみきれないから、周りの警護がたぶん僕を崩すんでしょうけど。ミカン箱の上で警護の人間がちょっと離れたところ、1発目と2発目の間に本当にわずかな時間があるんだけども、1発目の銃声の音が聞こえたときに、僕何度も動画見ながら自分で試してみたんだけど、すぐその場でしゃがんで標的の面積を小さくしてたら、僕は本当は安倍さん助かってたんじゃないかなとか。本当に残念でならないです。こんなたらればの話はよくないのかもわからないけど本当に警備の体制ってのはしっかり検証してもらいたいですね」

参院選の結果は自民が大勝…橋下氏が考える“自民党のすごさ”

 ―――選挙の結果のお話に移っていきます。参院選の改選124+欠員分1で125議席の結果ですが、自民党が圧勝ということになりました。一方で、日本維新の会も議席を伸ばしていますけれども、今回の自民の大勝に関してはどう見ていますか?
 「これは有権者の意思ですから、きちっとこれを尊重しなければいけないと思いますが、まあ野党がやっぱり弱い。僕は日本の政治を良くしようと思えば野党が強くならなきゃいけないと思うんで。野党もずっと選挙で自民公明に負け続け負け続け負け続けてきてるんだから、強くなるためにはどうしたらいいのかということを、今までのやり方と同じことやっていても変わらないからね。野党が変わらないと日本の政治は変わらないですよ」

 ―――野党が強くなるというのは具体的にどういうふうにしていくことが野党が強くなっていくことに繋がっていくのでしょうか?
 「1つは、やっぱり自民党の強さっていうのは自民党の中の派閥がすごい権力闘争あるんですよ。これ絶対重要。これみんなでなあなあで話し合って全会一致なんて、これで政治力なんてのはつかないので、みんなでもう激烈に争って権力闘争をやる。ただし権力闘争をやるこのグループがあっても、選挙のときには候補者を一本化するっていうのは鉄則です。自民党のすごさというのは、派閥でものすごい激しい権力闘争をやってもね、最後、候補者は一本化するんですよ。これは政治の技術で、その政治の技術は2つあって、1つは政治家個人の人間関係力。もう『俺が言ったらまあまあ収めてくれよ』ってこれができる政治家がいるか。それからもう1つは、これは結構知られてないかもわかんないけど、自民党は世論調査使ってね、今回の宮城選挙区なんていうのはすごいんですよ。宮城選挙区はね、昔は民主党である程度幹部までやった人材を、今回は自民党が公認してるわけ。民主党の幹部と宮城県の県議会議長、どう考えたって自民党のこの宮城県の県議会議長の方が候補者になるだろうというところを、世論調査で元民主党のこの幹部の方が強いから、この民主党の幹部の方を公認候補にしてるわけ。だからこれを野党間で、野党に『俺のこの顔を立てて収めてくれよ』って言えるような全部まとめるような政治家は僕は野党の中にいないと思ってるから。それだったら世論調査を使いながら、本選挙にいく前に激烈に各党が権力闘争して、1つの党にまとまるなんて無理だから、激烈に権力闘争しながらお互い批判しながら、でも最後選挙の前には世論調査を使いながら候補者を一本化するっていう、この政治の技術を使わない限りは僕は野党は与党に対抗できないと思う。あとね、野党の国会議員勘違いしてるのかなと思うのは、公約を掲げて何か新しいビジョンを掲げれば有権者ついてくるってこれは大間違いだと思う。実行して、この政党は本当にそれを実行してどういう政治をやってくれるのかってことを体感させないことには有権者はついていかないです。国政の与党は実際にこれいろんな賛否両論あっても実際に政治やってるんでね。自民党公明党の政治ってこういうもんだってことを体験してるじゃないですか。野党はいくら口で言ったってそれ本当にできるの?と。それどういうふうになるのっていうのはみんな国民わかってないから。で、維新というのはもちろん賛否あるけれども、なんで自民党と対抗できるような受け皿になってるかといえば、口だけじゃなくて、賛否あるけれども、ちゃんと大阪府政・大阪市政・堺市政というところで現実の行政やってるんですね。大阪府内16ぐらいの首長が維新にいてるから、実際に維新の政治はこういうもんだってことを現実に有権者は体感してるんです。だから野党の国会議員ね、本当にこの公約だけを掲げるんじゃなくて、どこでもいいから首長をとって、実際に野党が考えている政治を有権者に体感させなさいよと。これずっと言ってんだけどやらないよね」

「松井さんがいなくなると大阪の地方議員と国会議員がかなりもめだすのでは」

 ―――そんな日本維新の会は議席を増やしましたが、松井一郎代表は対自民で「完敗」という表現を使っていました。そして松井代表が辞任を表明し、吉村洋文副代表も「府知事の仕事に専念するために代表選には出ない」ということで、いろんな意見が出ています。松井さん吉村さんがいなくなった維新に果たしてどれだけの勢いや求心力があるのかという声も出てますが、どう今見ていますか?
 「やっぱり吉村さん早々と言っちゃったね、代表選に出ないって。いろいろ聞くところによると、もう大阪の地方議員の方は、国政政党を切り離してもいいんじゃないのっていうような意見も多いですよ。だってなんで大阪維新の会が国政政党を持っておく必要があるのか。僕のときには大阪都構想というのをやる必要があったから。これはもう完全に対国との交渉。それから他の国政政党と政治折衝をするというので必要だったんだけど、大阪都構想を今やらないってことになってるから、じゃあ何のために国政政党を持つのかっていう意味を大阪の地方議員が思い出して。それやったら大阪の地方政党で原点に戻ってね、大阪の中の地方政党として大阪の中の国会議員を抱えて、大阪の課題解決ってことを言って、そういう政党が全国に点々と存在してきたら、それが合体していって自民党に対する受け皿になってくる。だから大阪の地方議員の方は、これ以上国政政党を拡大することの意味っていうのは何なのっていうところでみんなちょっと疑問を持ってる。で、そこを抑えてきたのが松井さん。やっぱり今、維新は政党交付金も20億円超えてるでしょ。このお金の使い方について、お金お金って言うなと思われるかもしれないけど、地方議員はかなり不平不満を持ってるわけ。これは基本的には国会議員が使うお金になってるから。これを松井さんがまあまあと押さえてたんだけど、松井さんがいなくなると、こういうことをきっかけに大阪の地方議員と国会議員、かなりもめだすんじゃないのかな」

 ―――橋下さんはじゃあ次の代表はそのあたりどうすべきだと思いますか?松井さんみたいにそこをまとめていく人が代表になるべきなのか?
 「元々僕が維新を作って国政政党を抱えたのは、繰り返しになるけれども大阪都構想をやるため。大阪の改革をやるためにスタートしている。だけども国会議員の方からすると、大阪のため大阪のためって言われるのが嫌なんですよ。やっぱりそれは全国政党化したいというふうに国会議員は思う。だったらもう維新の会ね、国会議員の方はもう自立して、だって維新の理念というのは自立する個人・自立する地域・自立する国家なんだから、自立する政党ということで大阪維新の看板を使わずに、国会議員は国会議員でやっていって、大阪維新の方は自前の大阪の国会議員を抱えるのかどうなのか、そのときには今の国政政党の維新の会の国会議員ともめるかもわからない。選挙で戦争するかもわかんないけど、これは分かれていくっていう方向がすっきりするのかなと思いますけども」

(三澤肇MBS解説委員)「おそらく今、維新は国会議員団と地方議員団で二重構造になっていて、他の政党と違うのはやっぱりヒエラルキーじゃなくて横に並んでるっていうところはありますよね。ただ国会議員の数が相当増えたので、彼らにも自我があって、国政中心に動かすべきだ、つまり東京中心にするべきだという意見があるのですが、2トップは大阪にいる。松井さんは今回辞めますが、吉村副代表は残るわけですよね。吉村さんがいないと維新はやはり選挙を戦えないんですよ、国政政党としても。じゃあそこでどうバランスを取るのか。みんなの意見を聞く人がいるのかというと、なかなか松井さんの代わりはいないというところがあるので、なかなか厳しい代表戦になってくるのかなと思いますけどね」

(橋下徹さん)「三澤さんは今、国政の維新の会と大阪維新の会が横並びというふうに言ったけど、元々は大阪維新の会が上だったんですよ。国会議員が下だった。で、これがいつの間にかこう横に並んできて。国会議員は国会議員でまさに自我、これは否定しませんよ。国会議員は俺たちは国政政党で全国でやっていきたいってなってくると、これは政治闘争になります。またこういう政治闘争で政治ってのは強くなるから僕はガンガンやればいいと思うんだけど、僕なんかより三澤さんの方が詳しいと思うけど、それを収めるのにどの人材がいるかですけどね」

(三澤肇MBS解説委員)「国会議員の中にはまだ我々は下請けだと言っている人はいますけどね。それぐらい地方議員が強いということですよ維新は」

著名人の新人候補が続々当選「有権者が選んだんだからそれは重い」

 ―――参院選の特徴で『著名人が多く立候補すること』が1つあると思うのですが、著名人が当選したときって政治家の皆さんはどういうふうに受け止めているのですか?
 「政治家がどういう能力を積んでから政治家になるかというところで、政治家って番組に出ると政策とかいろいろ細かく語りますけれども、それって基本的にはやっぱり行政職員の仕事であって、政治家はもちろん一定の知識が必要なんだけれども、政治家ってやっぱり大きな方向性を示したりとか、あとは人間を束ねて指揮・命令をしたりとかいうことなので、知識を全部持ってから立候補する必要はないと思います。僕だっていきなり茶髪の弁護士から知事になったわけだから。それは本当に行政職員と同じくらい公務員と同じくらいの知識を持たなくても僕はいいと思うんですよね」

 ―――例えば、今回の参院選で自民党から立候補して当選した元・おニャン子クラブの生稲晃子さん(54)は、全ての選挙特番に出演しませんでした。理由としては「生稲さんは国会議員としての資質や勉強が圧倒的に足りないからだ」と生稲陣営の声を民放の番組が紹介していましたが、橋下さんはこのことについてどう考えますか?
 「陣営の方からも『いやいやこんなこと言ってない』というような抗議の声も出ているし。もう1つこの民放番組がね『選挙特番に出演しなかった』ということを批判しているけど、僕も出なかったもん。もう面倒だもん。同じ質問ばっかりされて。とか言いながら、今は僕がそれ(質問とか)をやっているけどね。コメンテーターとしての立場でね。本当に面倒くさいと思いますよ。だから僕は『一斉の記者会見は全部やります』と。だけど『番組に合わせた個別のやつは同じ質問をするのはやめてね』ってことでやらなかったから。これだけを批判するのはちょっと違うと思う。生稲さんは一斉の会見もやっていないのかな。それもやっていなかったらちょっと問題だけどね。いわゆる選挙特番の質疑応答はね、やっぱりこっちもある意味仕事でやっているわけだから、それに全部応じる必要もないわけで」

 ―――通常は選挙事務所に行っているメディアに対しては『囲み取材』というものが発生するのが普通ですよね。当選しても落選してもですけれども。
 「ただ選挙特番に出ないというのは別にそれは自由だと思いますよ」

 ―――ではその段階での質問に答えられる答えられないというのも参院議員になってから勉強していくという姿勢に関しては?
 「程度にもよるけど、そのことだけで国会議員になるなと言ったら、『じゃあ公務員と同じだけの知識を持たないとなれないの?』って話になるから。そこは役割が違うと思う」

 ―――その他の新人候補は、歌手・俳優の中条きよしさん(76)、お笑いタレントの水道橋博士さん(59)、そして今回すごく注目を集めた暴露系ユーチューバーの“ガーシー”こと東谷義和さん(50)です。東谷さんは、芸能人の裏話を暴露するYouTubeチャンネルを運営して、登録者数は100万人を超えています。現在は中東ドバイにいるとみられていて、本人は国内での選挙活動は一切行っていませんでした。東谷さんは「国会があるから10月には帰国する」と発言していますが、今後どのように注目されていくと思いますか?
 「有権者が選んだんですから、それは重いですよ。いろいろ批判することは簡単だけれども、それだけの票を取るって本当に大変だから。だからこれは有権者が選んだということで、その活動をしっかりやってもらいたいと思うし、駄目だったら有権者が次に審判を出して落とせばいいと、僕はそう思いますよ」

 ―――橋下さんが描く国会議員像と照らし合わせていかがですか?
 「僕はやっぱり国会議員像や政治家像というのは、今の令和の時代ではね、いろいろ行政の仕事というのは積み上げの仕事で継続的な仕事というのもしっかりやっていかなきゃいけないんだけれども、政治の役割というのはそうじゃない積み上げの仕事、今までやってきたやり方じゃないやり方で大きく舵を切る。そのときには国民からものすごく反発を食らうかもわからないんだけれども、それを50年後とかを見据えてね、『今は反発を食らうけれどもこれをやらなきゃいけないんだ』ということをやる。反発を食らったときは脅されるし殺害予告も来るかもわからない。でも、それぐらいの反発が来れば来るほどの課題を実行していくのが、僕は政治家だと思うので。ぜひこの4名の方にも、いろんな国会議員像ってそれぞれの国民でみんな違うと思うんだけど、僕はそういう政治家になってもらいたいなと思います」

今後の政治に望むことは?

 ―――「仮に国民から大批判を受けたとしても、それが何十年後かに国のためになるのであれば決断をしていかなければいけない」というのは、今の岸田政権、あるいは自民党に対して思うことなのでしょうか?
 「岸田政権は今回の参議院選挙で大勝したんでね、ぜひそういう課題を設定して取り組んでもらいたいという思いで、7月10日に岸田総理に『国民の心を二分するような、何か課題設定はありますか?』と聞いたら、岸田総理は『心を二分するんじゃないんです。やるべきことをやって、結果として心が二分する場合もある』と答えました。それはどっちでもよくてね。僕は岸田総理が考えているような心を二分するような課題というのはどういうことを念頭に置いて想定していて、それを今後やろうとしてるのかということを、また機会があれば聞いてみたいなと思う。ただ政治家が50年後のことを考えて国民からの反発を受けたとしてもやるって言っても、もしかするとその政治家の考え方が間違っているかもわかんないわけで。そんなのわかんないじゃないですか50年後のことなんて。でも、それは最後は有権者が最終的に責任を負うことになるわけだから、やっぱり最後に有権者が『これは違うな。政治家のその50年後のビジョンはやっぱり違うよ』となれば、選挙で落とせばいいし。でも本当にそうだなと思えば選挙で支持をしながら、僕は政治家っていうのは多くの反発の声があったとしても、それを進んでいくのが政治家だとは思いますけどね。安倍さんがよく話に出されていたのは岸元総理、おじいさんの話で。これはもうみなさん知っている話だと思うけど、日米安保の条約改定のときに日本中がもう大反対だったんですよ。もう国中が。じゃあ日米安保条約の改定をしていなかったら今どうなっていたか。もちろんそれがなくてもいけるっていう考え方もあるけれども、僕はあのときに岸元総理が日米安保条約の改定をやってくれたっていうのは、本当にそこから50~60年経ったこの日本、ありがたいなぁと思う。でも当時はもう日本中大反対だった。安倍さんはそれをよく言ってね、『やっぱり政治家は最後は国の安全保障や国というものを考えたときに、50年後の評価、そこを考えてやるのが政治家だ。もちろん間違う場合もある。間違ったときには申し訳ないけれども、これは国民主権の場合には国民の責任になるから。だからこそ選挙での選択っていうのが重要なんだ』と。ここはそうですねってことで。よくこの話を繰り返しやっていました」

 ―――今の話を聞いていると、安倍元総理はご自身が総理を務められたわけですけれども、その何十年後かの日本の姿というのをおそらく見たかったと思うんですよね。
 「もちろん安倍さんがやったことが本当に50年後に正しいのかどうかはわかりません。反対する意見の方が正しいかもわからない。だからそこはやっぱり論戦ですよね。これは民主国家で、これが論戦できないところが、結局は武力を使ってロシアによるウクライナ侵攻みたいなことになってしまうわけだから。僕はそれに代わるような本当に激しい論戦というのをやって、最後に国民が審判を下すっていう、それをこれからの国会に期待します。それが政治家の役割だと思いますよ」