7月8日、奈良市で演説を行っていた安倍晋三元総理大臣が、男に銃撃され死亡しました。逮捕された男の犯行動機や事件に至るまでの足取りが取材から徐々に明らかになってきました。

 7月8日、奈良市で安倍晋三元総理が参議院選挙の応援演説中に突然銃撃されました。
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 騒然とする現場。近くのクリニックの医師が慌てて応急処置に駆けつけました。

 (応急処置をした中岡伸悟院長)
 「(安倍元総理は)顔面がもう蒼白でしたし。ピクリとも動かれない、心臓マッサージをしたにもかかわらず手足がピクリとも動かない状況でしたので」

 その後、安倍元総理は病院に搬送されて懸命な治療が行われましたが、死亡しました。死因は失血死だということです。
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 殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されたのは、元海上自衛隊員の山上徹也容疑者(41)です。7月10日、容疑を殺人に切り替えられて送検されました。

 山上容疑者は動機について、次のように供述しているといいます。

 (山上徹也容疑者)
 「宗教団体に恨みがあった。母親が多額の寄付をして破産した。その宗教団体と安倍元総理につながりがあると思った」
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 事件当日、山上容疑者は自宅近くの駅から近鉄電車に乗り、午前10時ごろに現場最寄りの大和西大寺駅で下車。付近の複数の商業施設に出入りしていたことが防犯カメラの映像で確認できたということです。そして、その約1時間半後に事件は起きました。
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 これは複数の目撃証言などをもとに銃撃の瞬間を再現したものです。山上容疑者は演説する安倍元総理に近づくよう車道の真ん中へと進んでいきます。この時点で制止する警察官はおらず、一発目を発射したあと、さらに至近距離から二発目を発射したと見られます。警察官が飛び出したのは二発目の発射とほぼ同時でした。
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 7月9日、警備体制について奈良県警の鬼塚友章本部長は次のように話しました。

 (奈良県警 鬼塚友章本部長)
 「極めて重大かつ深刻に受け止めております。警護上の問題があったことは否定できないと考えております」

 ただ、具体的にどのような点に問題があったのかについては「確認中」としました。
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 今回、犯行に使われたのは手製の銃です。銃について山上容疑者は次のように供述しているといいます。

 (山上徹也容疑者)
 「一本の筒から一度に複数の弾丸が発射できる散弾銃のような仕組みにした。銃弾も自作した」
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 実際に現場にあった選挙カーにも複数の弾の痕のようなものが残っています。また、山上容疑者の軽乗用車からは銃痕がある木製の板が複数枚押収されていて、山上容疑者は「試し撃ちをした」と話しているということです。
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 さらに、山上容疑者の母親が入信していたのは宗教団体「世界平和統一家庭連合」。かつての「統一教会」です。
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 その奈良市内の宗教施設が入る建物の壁には銃で撃たれたような痕が複数残っているのが確認できます。捜査関係者によりますと、山上容疑者は「安倍元総理を銃撃した前日の未明に宗教団体の施設に向けて試し撃ちした」などと供述していることが新たにわかりました。

 (施設の近隣住民)
 「朝3時半くらい。もうボーンと鳴って、長いこと響いていた感じ。今まで聞いたことないような音やったから」
 「私は飛び起きましたね、『何の音?』って感じで。息子が窓から見ていて、軽自動車が走り去る(音を聞いた)」
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 山上容疑者はその日の夜に安倍元総理の遊説先だった岡山市を訪れていて、警察は山上容疑者が襲撃前に事前に試し撃ちして、手製の銃の殺傷能力を確認したとみて捜査しています。