同性同士の結婚を認めていない制度が憲法違反かどうかが争われた訴訟で、大阪地裁は6月20日、国に憲法違反はなく、賠償責任も認めませんでした。そこで自ら同性愛であることを明らかにし、2011年に男性弁護士と結婚して法律事務所を開設し、“弁護士夫夫”を名乗る南和行弁護士に聞きました。今回の大阪地裁の判断について南弁護士は憤りを隠さない様子で「裁判所は積極的な判断で政治を動かすアプローチをするべき」と話します。

 また、番組に出演した元衆院議員の豊田真由子さんは「法律は社会の変化や国民の要請に応じて柔軟に変えていくべきものだと思う。LGBTQの方の思いを汲むことを立法府の側もすべき」と話しました。

(2022年6月20日 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

「司法は逃げ腰という印象が拭いきれない」地裁同士で判断分かれる

ーー6月20日の大阪地裁の判決では同性婚を認めないのは憲法違反とは言えず、「合憲」という判断でした。南さんは率直にこの判決どのように受け止めてらっしゃいますか?
(南和行弁護士)
「司法が逃げ腰という印象は拭いきれないですね。何らか解決すべき課題であることは認めていると。国民の議論というのは結局、『あんたの判断を求めて裁判してんねん』て話なんですよね。『結婚したいと言うてはるけど、認めてあげますか?』というのを、僕らからお伺いを立てなあかんわけでしょ。それを『待ってください』と、『裁判所やねんから、どう思うの?』って聞いたら、『いやうちに聞かれても困るわ』って言われているのと一緒です。僕は正直本当に結論が『あかんやんと言えばいいことを、なぜあかんやんと言われへんのやろう?』と思う。非常にこの判決も細かい表現とかでもあかんなというのがいっぱいありました。実は法律上の婚姻は、昔から男と女の組み合わせは一応子どもができるという想定の中で作られています。結局今は社会みんなで共有してる結婚という言葉のイメージがそうでもなくなってきてるじゃないですか。実は同性婚を認めるかという、今ある婚姻制度の意味合いをどう考えんのということを聞いてるのに、裁判所が『いやみんなで議論してください』と言うたら、『国会で議論してください』ということほど、司法が無責任なことってないと思うんですね」
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(豊田真由子さん)
「立法府の立場からすると、法律は社会の変化に応じて国民の要請とかに応じて柔軟に、適切な方に変えていくべきものだと思うんですね。その観点から考えると、やっぱりLGBTQの方への社会の理解はようやく進んできて、生きづらさとか差別について何か解消しましょうという機運が高まってきているのに、その一方で、『好きな人と法的・社会的に認められて結婚したいんだ』というものすごく切実で、大事な根源的な思いを、『それは駄目ですよ』ということが妥当ではないと思うんですね。今回、地裁同士で判決が違いますが、最終的に高裁と最高裁に行って、最高裁で仮に違憲だという判断になれば、やっぱり立法府の方も動かざるを得なくなるんですよ。しかし、国の立場としても、憲法では同性婚を想定しないというだけなので、問題は議論が尽くされてないのであればこれから議論をちゃんと尽くしてその民法や戸籍法とかの法律を変えることで制度化は可能なので、少なくともその議論をして、そういう方の思いを汲んでいくことを国民も立法府の側もすべきだと私は思います」

「裁判官の分かってなさ具合を感じた」

ーー今回、札幌地裁と大阪地裁とでなぜ判決が違ったのでしょうか?
(南和行弁護士)
「裁判はあくまでも日本の制度の場合、同じような内容でも個別なんですね。しかも札幌の判決も憲法違反だと言ったんですが、どう言ったかと言うと、婚姻制度における税金の控除などプレミアみたいなことが一切ないのが憲法違反だと、大阪は一切ないのだけれど憲法違反と言うほどまでではないという判断でした」

ーー札幌地裁の場合は一切権利がないのは違憲としながら、大阪地裁は同性カップルにどのような保護を与えるかは『議論の過程だ』という言い方をしていましたが、その点についてはどうお考えでしょうか?
(南和行弁護士)
「判決の本文では『同性愛者にどのような保護を』という言葉が出てきます。正直、法的保護という言葉って法律用語なんですけど、同性愛者の僕からするとは同性愛者やから『どうやって保護したろうかな』とこの裁判官は思ってんのかなと言葉の語感とかも含めて裁判官のわかってなさ具合を感じました」

G7諸国で同性婚を認めていないのは“日本だけ”

ーー日本では現状男性と女性だけが結婚できるという状態です。ちなみにアメリカやカナダなどG7のうち同性婚を認めていないのは日本だけということです。その点はいかがでしょうか?
(南和行弁護士)
「法律でいう婚姻制度はどうしてもそれぞれ国の歴史が違うので、外国がどうだからっていうところだけで議論してもなかなか、日本の国民的議論は盛り上がらないのが現状です。

ーー海外でも議論を重ねてよくなったんですか?
(南和行弁護士)
「フランスでは認めるかどうか国民投票みたいなものがあったんですけど、国民投票型はどうかと思います。単純に数で言うと当事者の人が少ないわけで、多数決前提のルールは問題があると思います。一方で日本では1人1人生まれてから死ぬまで戸籍という家単位で全部書類が出来上がってるんですよね。そういう点から直ちに手続き的な制度も進みにくいように思います」

結婚で得られる「相続人」「子の親」などの権利…過去にトラブルで裁判も

ーー『税金面での配偶者控除』、『法定相続人』、『子どもの親になれる』などの権利は、結婚で得られる権利となっていて、パートナーシップ制度では認められていないということですね?
(南和行弁護士)
「パートナーシップ制度というのはもちろんいい制度なんですけど、結局祝福の部分ですよね。2人が一緒に暮らしてることを全然否定もしないし、社会の一員として家族として認めますよということなんですね。法律上、婚姻届を出してないと得られないのは財産、社会保障の権利の部分です。僕も実際やった案件で40年連れ添った70代と60代の同性愛者の方で、70代の方が急に亡くなって一緒に商売していたんですけど、その亡くなった方の相続人が弁護士を連れてきて、家から物を持っていくというようなことでトラブルになるような裁判があったんですね。だからこういう制度があるのは大事で、子どもの親になれるというルールも女性同士で子どもを育てている家庭もいっぱいあるので」

「裁判所は積極的な判断で政治を動かすアプローチすべき」

ーー国会では2019年に野党3党が民法の改正案も提出するも、法案は審議入りされていないという状態が続いているということですね?

(豊田真由子さん)
「国の正式な立場、同性婚を認めるかどうかは『我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を有する』と言ってるんですね。国が『慎重』という言葉を使うときはものすごく後ろ向きなんですよ。だけど理由を突き詰めると、『家族のあり方の根幹に関わる』という点でどんなマイナスがあるかなど議論すればいいので、数の論理でごまかしてはいけないと思うんですね」

(南和行弁護士)
「多数決の議論をいくら重ねていても、是正されることは難しいような「社会のひずみや権利の不平等」を発見した裁判所は積極的な判断で政治を動かすアプローチをすべきだと思います」