自転車で琵琶湖を1周する「ビワイチ」。琵琶湖大橋を渡って北湖をまわるコースでも150km、ぐるりと1周すれば200kmのロングライドです。そんなビワイチに何回も挑み続ける75歳の男性がいます。なぜ男性は挑戦し続けるのか。そこには胸を打たれるエピソードがありました。

“生涯100ビワイチ”…約150kmのロングライドに挑み続ける75歳

 北光次さん(75)。現役を退き、ゆったり暮らすシニアに見えますが、実は…
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 これまで「ビワイチ」を何度も達成した75歳のサイクリストなのです。
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 (北光次さん)
 「これが私のビワイチの記録なんですけれども。『生涯100ビワイチ』ですね。今は79回ですね。(Qビワイチの魅力は?)琵琶湖大橋を渡って頂上でいつもちょっと止まって休憩するんです。ぐるっとほとんどが見渡せるんですけれども、『今日これをぐるっと回ってきたんやな』という達成感ですね」
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 5月10日、北さんは80回目のビワイチに挑戦しました。番組スタッフも自転車でついていく密着取材を行いました。
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   (北さん)「いってきまーす」
(妻・早苗さん)「無事に帰ってきてくれるのを待っていますわ」
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 自宅のある滋賀・東近江市を出て、反時計回りに約150kmを12時間で走り切る予定です。

 (北光次さん)
 「ぐるっと回るわけですからね。ちょっと気の遠くなるような感覚ですね」
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 出発から約3時間半、琵琶湖が見えなくなってきました。第一の関門「峠越え」です。北さんは自転車を止めて休憩しました。

 (北光次さん)
 「エネルギー補充を。北海道練乳。(Q甘いものを入れないともたない?)そうですね。エネルギーのもとですね。年いって一番弱ってくるのは心肺ですわ。だから深呼吸を」

 琵琶湖北部の「賤ケ岳」。山あいの九十九折を時間をかけて登り切ります。

妻に捧げたプロポーズ『私が杖代わりになる』

 坂の上には道幅の狭いトンネル。抜けた先には北さんが毎回感動するという大好きな風景が広がっています。

 (北光次さん)
 「ビワイチの第一のビューポイントと言われているところなんですけれども。きれいですね今日は。水面は穏やかで」
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 お気に入りの景色を写真に収めて妻の早苗さんに送ります。

 (北光次さん)
 「景色のええところで撮って送っているんですけれども。『元気に走っていますよ』っていうしるしにですね」
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 結婚39年の2人。実は北さんが何度もビワイチに挑み続ける理由は早苗さんでした。早苗さんは1歳の時に「小児まひ」にかかり、足を自由に動かすことができません。
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 社内恋愛を経て、北さんは生涯早苗さんに寄り添うことを誓って、こんなプロポーズの言葉を捧げました。

 (北光次さん)
 「『晩年、私が杖代わりになって』ということで言ったような気がするんですけれども。それを達成するためには当然自分自身の足腰が丈夫でないといかんので」
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 (妻・早苗さん)
 「『僕が車いすを押すからな。絶対に最後まで面倒を見る』というか。『いい加減な気持ちで結婚するんじゃないよ』っていうことは言われたことがあります。そんなことを言ってくれる男の人は珍しい人やなと思いましたね」

 健康を保つことが早苗さんの足代わりとして一生を共にする力になると思い、ビワイチに何度も挑戦してきたのです。

『自分の気力との闘い』…衰えていく肉体に抗う

 スタートから6時間。お昼の時間もビワイチならではの楽しみ方があるようです。

    (北さん)「おにぎりです。お弁当です。ここの景色良いでしょう」

 早苗さんお手製のおにぎり。琵琶湖を独占できる北さんだけの特等席で楽しみます。
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 お昼を食べてしばらく走っていると、同行中の番組スタッフの靴底にトラブルが発生しました。

 (番組スタッフ)「今どういう状態なんですか?」
    (北さん)「(靴底の部品が)すり減っているんですわ」

 北さんは荷物の中からカッターナイフを取り出して手際よく応急処置をしてくれました。

 (番組スタッフ)「あっ、(金具が)はまった。すごい!いけました!」
    (北さん)「大丈夫ですね。じゃあスタートするよ」
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 69歳でビワイチを始め、79回も走り切った北さん。何度走っても残り30kmは疲労が蓄積するといいます。

 (北光次さん)
 「自分の気力との闘いという感じで。いつもそうですわ。琵琶湖大橋を渡ってからね。修行、修行ですわ」

 衰えていく肉体に抗って、若き日のプロポーズの言葉を守りたい。淡々とペダルを回します。
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 そのころ、自宅では妻の早苗さんと親戚や友人がサプライズでお祝いの準備をしていました。

 (妻・早苗さん)
 「もうすぐですね。ドキドキしています。暗い時に帰ってくるとランプが見えるんですね。そうするとホッとするんですよ」

記念すべきビワイチ80回目を無事達成!

 出発から12時間。約束の時間です。早苗さんや親戚たちに迎えられ、北さんは無事に帰ってきました。

  (北さん)「はーい、ただいまー!ありがとうね」
 (親戚たち)「80回おめでとうー!お疲れ様でした」
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 (北光次さん)
 「(ビワイチを)100回まわると何か良いことが絶対起こると信じて走っていますので、期待してください」
 (妻・早苗さん)
 「2人が最後まで元気で(ビワイチ100回を)終われたらいいな」

 記念すべき80回を達成しました。北さんの琵琶湖100周の旅は、早苗さんへの思いとともに続きます。