兵庫県尼崎市が次々と“いわくつき”の建物を買い取っています。いったい、なぜなのでしょうか?
空き店舗の増加で治安悪化を懸念…尼崎市が一帯を買い取り
阪神尼崎駅から西に約1kmの場所に現れる長屋街・通称「かんなみ新地」。戦後すぐに遊郭として始まり、約70年にわたって飲食店を装って違法に性風俗営業を行う店が集まっていたとみられています。
そんな街に去年11月、衝撃が走りました。尼崎市と警察は、70年の歴史の中で初めて、違法な風俗営業の中止を求める警告書を出したのです。
その結果、警告書を出した翌日には、風俗営業をしていたとされる36店全てが一斉に閉店。
(尼崎市 危機管理安全局長)
「一斉に閉業するなんて、全然予想もしていなかった」
市も驚きを隠せませんでしたが、同時にある問題が浮上したといいます。
(尼崎市 危機管理安全局長)
「商売地域が一画で全部閉まっているという状況の中で、地域の方からも子どもに対する不安であったり治安悪化の不安がありましたので」
地域住民から性風俗店の再開や空き店舗の増加で治安が悪くなることへの懸念の声があがりはじめたのです。
そこで市は、今年5月31日に一帯の土地と建物を買い取り、更地にして売却する方針を明らかにしました。
市は全国で初めて『暴力団組員の家』の買い取りも
そんな“いわくつき”の建物を買い取る尼崎市ですが、これだけではありません。去年、市が全国で初めて買い取ったのは、暴力団幹部が住んでいた家でした。
(記者リポート)
「一見すると普通の民家なのですが、よく見ると銃弾が撃ち込まれたあとがあります」
売却予定地と書かれたこの建物。
ここは指定暴力団・六代目山口組系の幹部組員が住んでいた家で、2020年、何者かに3発の銃弾が撃ち込まれる事件が起きた場所でした。市は、今後も事件が発生する恐れがあるとして、この家に住んでいた幹部組員から去年、1900万円で住宅を買い取ったのです。
組員の自宅を市が購入するのは全国初。市の許可を得て記者が中に入ってみました。建物は3階建てで、弾丸のあとが残る以外は普通の住宅と変わらない間取りに見えます。
(記者リポート)
「この家唯一の和室になります。ここで組員らとの会議などがあったのかもしれません」
地元の人からは「いいと思う」の声
手を付けづらかった場所になぜ今切り込むのか?尼崎市の稲村和美市長に聞きました。
(尼崎市 稲村和美市長)
「市内でも残念ながら発砲事件が発生するという状況になったときに、警察も取り組みを強化して、ということがありました。そういった下地があるときでないとなかなか取り組みが難しいと思って決断した」
“ワケあり”物件を次々と購入する市の姿勢に、地元の人からはこのような声が聞かれました。
(地元の人)
「いいと思います。学校も近いし小学校も近いですしね、あまり良くないかなと思っていたので」
「平地になってまた新しいお店になるんだったら良いんじゃないですかね」
市の思い切った“爆買い”で、町は変わるのでしょうか?