海外で原因不明の子どもの急性肝炎の報告が相次いでいます。京都大学の西浦博教授の研究によりますと、今年4月下旬時点でOECD加盟国など39か国のうち12か国で子どもの肝炎が報告されていますが、これらの国では新型コロナウイルスのオミクロン株の感染者が多い傾向にあったということです。また、5月11日に厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は「オミクロン株の感染によって小児肝炎が発生したというわけではないが、新型コロナの『流行の影響』がなにかしらある可能性を示唆している」と話しています。そんな中、取材班は今回、「息子が今年3月に急性肝炎になった。今話題になっている病気だったかもしれない」と話す家族に話を聞くことができました。

『本当に嘔吐が止まらない』…息子に突然起きた“異変”

 大阪府内に住む井上さん(仮名)一家。9歳の息子・蓮君(仮名)に“異変”が起きたのは今年3月のことでした。
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 (井上さん(仮名))
 「急に『気持ち悪い、吐きそう』ってなって、嘔吐。胃腸炎かなというのが始まりだったんですけれども、吐き方がちょっと違うなというのがありまして。本当に嘔吐が止まらない、ぐったりしている、胃液もでてきた。水分も取っていないのに落ち着くことがなくて、緑色の胆汁とかも吐いてきた」

 何時間も続く激しい嘔吐があったといいます。

 (井上さん(仮名))
 「朦朧としていましたね。病院に行くまでも立てない、歩けないっていうのは初めてだったよね?」
 (蓮君(仮名))
 「初めて。びっくりした。吐くのがしんどかった。」

肝臓の数値が1100超に…さらに新型コロナに感染していることも判明

 顔色も悪く、「ただことではない」と感じた井上さん。総合病院を受診し、医師は念のためにと血液検査を行いました。すると…。

 (井上さん(仮名))
 「肝臓の数値が、通常が0~40ぐらいと書いていたのですが、それが1100を超えていた。桁が振り切っているし、『この子の体に何が起きているんだろう』というのが想像できないくらい頭が真っ白になりましたね」
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 「急性肝炎」、それが蓮君の体調不良の原因でした。A型~E型の肝炎ウイルスは陰性で、さらにWHOが原因不明の肝炎で「最も関連性が考えられる」としたアデノウイルスも陰性でした。
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 その一方で、新型コロナウイルスに感染していたことがわかりました。
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 (井上さん(仮名))
 「(主治医は)『コロナから肝炎になったというのが、今回の症状としてはそうなのかな』と。でも、肝炎になるというのがコロナであんまり今までいなかったので、(主治医の)先生も『今回のことはコロナではなくて別のことかもしれない』と、ちょっと首をかしげていた」

入院4日目で退院…しかし母親は『また次コロナにかかったら…』と懸念

 医師からは「根本的な治療方法はない」と言われ、蓮君は入院して自然治癒を目指すことになりました。

 (井上さん(仮名))
 「劇症肝炎になってしまうと高い確率で重症化したりとか、例えば(肝臓の)移植とか、そういうこともあるので、そうならないようにすぐに対応できるよう入院と聞いたので、すごく怖かったですね。入院した日とかその次の日はまだちょっと嘔吐をしてたりとか、ご飯も全然食べられなかった。バナナを本当にひとかけら食べるのがやっとという。(蓮君は)体はそこまで弱い子でもない、強い方だと思っていたので、その子で『こんなことが起きるのか…』と思いました。『何でだろう』って」

 蓮君は徐々に食欲が回復。肝臓の数値も下がりはじめたことから、入院4日目で退院となりました。
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 すっかり元気になったように見える蓮君ですが、井上さんには気がかりなこともあります。

 (井上さん(仮名))
 「また次コロナにかかったときに、『また肝臓に悪さをするのかな』とか。逆にもうそれを防ぐためにワクチンを打った方がいいのか、逆に打つと負担をかけるのか…。大人になった時に何かなったりとか、そういう心配はずっとしていますね」