ウクライナ・マリウポリの製鉄所の地下で暮らしていた人たちが避難する町。そこで取材するジャーナリストが見た現実とは。

 ウクライナ第2の都市ハルキウ。今年4月下旬、イースターを迎えた街に、香港出身のジャーナリスト、クレ・カオルさんが入りました。
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 教会には自衛団員として戦う男性の姿もありました。

 (自衛団員)
 「停戦を祈りました。そして祖国の勝利を祈りました」
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 ウクライナ侵攻開始直後から激しい戦闘に見舞われたハルキウ。

 (クレ・カオルさんリポート)
 「商店街ですが、数日前(4月18日)の攻撃で焼けています」

 家を失った人たちが身を寄せるのは地下鉄の駅です。
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 母親とともに避難している男性は、爆弾が落ちた後の道の片づけなどをしているといいます。

 (母と避難する男性)
 「母は怖がっています。一生懸命働いて、市の一等地に家を買って、それが壊されてしまった。人生が壊されてしまったんです」

 それでも男性はロシアの一般国民を“憎んではいない”と話しました。

 (母と避難する男性)
 「(ロシア人は)兄弟であるウクライナ人を殺したいと思っているでしょうか?私たちは平和のために手をつなぐべきなんです」

 一方、ハルキウから250km以上離れたザポリージャ。
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 (クレ・カオルさんリポート)
 「マリウポリからの難民たち。ザポリージャの難民センターに滞在した後、西の安全な街に移動させられるそうです」

 到着したのは、ほとんどが戦闘の激しいマリウポリやその周辺で暮らしていた人たちで、2000人以上が避難してきているといいます。
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 (クレ・カオルさんリポート)
 「いま子どもと書かれたバスが現場に入ろうとしています」
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 午後10時半。真っ暗な中で到着したのは、約1000人が地下での生活を余儀なくされていたアゾフスタリ製鉄所から避難した人たちです。

 (到着したバスに乗っていた人)
 「スパシーバ!(ありがとう)」

 (家族と一緒にアゾフスタリ製鉄所から避難してきた男性(17))
 「今は自由だからうれしい。(Q何が一番したい?)シャワーを浴びたい。雨がシャワーだったんだ」

 男性は反ロシアの住民をあぶり出す『選別キャンプ』に入れられていたといいます。

 マリウポリの市長顧問が公開した『選別キャンプ』の映像には、不衛生な状態で布団が敷かれた様子が映っています。350人に対して洗面台はひとつだけ。こうした選別キャンプは複数あり、多くの人が連行されていると見られています。

 (家族と一緒にアゾフスタリ製鉄所から避難してきた男性(17))
 「午後1時に着いて、次の日の午前6時に解放されました。(Qロシア人は何を聞いた?)僕の仕事についてや、この戦争についての考え方を聞かれました。(Qどのように答えた?)何も知らないし、これからも戦争に関わらないと答えた。(ロシアについては)怖くはなかったけど怒りを感じた」

 製鉄所内でウクライナの軍人に料理を作っていたという男性もいました。

 (アゾフスタリ製鉄所からの避難民)
 「ロシア軍の市民への扱いは動物のようだったよ。マリウポリの近くの村では女性も男性もひとつのテントに入れられて服を脱がされていた。ほとんど裸の状態にして『ネオナチ』かどうかを示すタトゥーがあるか確認していたと思う」

 製鉄所には現在も100人程度が残っているとの情報もあり懸念が強まっています。