ウクライナのゼレンスキー大統領が23日、日本の国会で何を語るのかが注目されています。これまでアメリカでは「真珠湾や「同時多発テロ」、ドイツでは「ベルリンの壁崩壊」といった各国の歴史の記憶を呼び起こして支援を訴えてきたゼレンスキー大統領は日本でどんな歴史エピソードに触れるのか。ウクライナ人の国際政治学者は日本とウクライナ両国の歴史的共通点である「非核3原則」と「北方領土」を挙げます。核の脅威にさらされた被害国として、或いは不当に領土を奪われた国として二国の共通項についてゼレンスキー大統領は言及するのではと分析します。

 ーーウクライナのセレンスキー大統領が3月23日に日本の国会で演説をする予定です。午後6時から生中継のオンライン演説、同時通訳が入る予定です。当初、国会の本会議場を予定していましたが、大型モニターの設置が難しいということで、衆議院第1議員会館という場所を使うと、モニターを設置し実施していくということです。生中継になるわけなんですが、その瞬間ゼレンスキーさんが、どこにいるかという情報は、大きなリスクにはならないですか?

(グレンコ・アンドリーさん)
「おそらく大統領府にいると思うんですけど、彼は基本的に今もずっと大統領府にいる状態で、外に出るとしたら病院視察ぐらいです。基本的に自宅に帰らずにそこにいますね。なのでロシアは彼が常に大統領府にいることを把握しているんですね。なので大統領府にいることによって狙われるとしたら前から狙われているので、今回の生中継で特にそれが変わるわけではないんですね。では何で大統領府が安全かというと、そこは警備がしっかりしているので、ミサイルが飛んだらさすがに打ち落とされるだろうし、仮に暗殺部隊が入るとあそこだと中に侵入されないですし、ウクライナで一番安全な場所かと思うので、そのあたりは大丈夫かと思います」

 ーーゼレンスキー大統領は、これまでも色々な演説をされてきましたがどんな内容だったのかまとめました。16日に行われたアメリカに対してのオンライン演説。真珠湾攻撃や米国同時多発テロを思い出してほしいと呼びかけ、さらには黒人解放運動の指導者キング牧師の有名な言葉、「I have a Dream」というキーワードを使った、アメリカに住む人たちにとって、いろんな世代、さらには様々な人種に響くメッセージをゼレンスキーさんは呼びかけたのではないでしょうか。そして17日のドイツでのビデオ演説、これは東西ドイツを分けた壁の前でアメリカのレーガン大統領が行った演説を引用しました。ショルツ首相、壁を壊してください。ドイツは指導的役割を担ってくださいと呼びかけた。日本に対する演説はどんなことを話すのか、グレンコさんによると、『非核三原則』と『北方領土』がポイントであると?

 (グレンコ・アンドリーさん)
「そうですね。もちろん実際にどんな話になるかは断言できませんけど、今までの傾向だとそれぞれの国に最も響くようなことを演説に盛り込んでいたわけですね。ウクライナと日本はかなり離れている国なので、日本に響くものは何かと考えると一番想像しやすいのはまず、非核三原則なんじゃないかと思うんですね。世界で非核三原則を発表した国は実は2国しかなく、それが日本とウクライナなんですね。ウクライナは、1990年の主権宣言の中で『非核三原則』を発表して、内容は日本の非核三原則とほぼ被る内容なんですけど、その中でおそらく何らかの形で非核三原則をまず発表して、または核というものから被害を受けた。国同士として連帯を呼びかけたうえで、例えばロシアは核の脅しをしているんですね。つまりウクライナに対して『ウクライナが核兵器を作っている』と言いがかりをしたり、『世界に対して核兵器を使うぞ』というとんでもない前代未聞の脅しをしているのはロシアですから、その世界にも勝って核の脅しをしているような国を被爆国であり非核三原則を発表した日本として、そんなことを許していいのかというところからアピールをするのではないかなと思います」

 ーー日本が非核三原則を発表したのが1960年代です。そのあとに、ウクライナもそれをおそらく参考にしたものというのを発表していると?

 (グレンコ・アンドリーさん)
 「そういう共通点がある国同士なんですけど、そういう国にも勝って、プーチンが核の脅しをする。核を使うんじゃないかとちらつかせるわけなんですけど、そんなことを許していいのかというアピールをするんじゃないか、何らかの形をするんじゃないかなと思いますね。あと、北方領土それも単純な話なんですね。つまり、どの国も同じようにロシアから不当に領土を奪われた国同士で、今でも不当にロシアによって領土を不法占領されているわけですから、その連帯にも呼びかける可能性は十分あるんじゃないかなと思いますね」