激しさを増すロシアによるウクライナへの軍事侵攻。多くのウクライナ人は地下鉄の駅や核シェルターへの避難を余儀なくされています。ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用をちらつかせたことから日本国内でも「シェルター」への関心が高まっています。

津波に備え700万円の防災シェルターを設置

和歌山市に住む畔取義彦さん(79)の自宅の裏には、総額約700万円の鉄筋コンクリート製の防災シェルターがあります。

(畔取義彦さん)
「(Q津波が来ても大丈夫?)大丈夫。耐水というか張り巡らせていますので、全部(水に)浸かっても中は大丈夫です」

畔取さんが住む地域は紀ノ川の河口に近く、海まで約1km。南海トラフ地震では最大8mの津波が想定されています。2011年に東日本大震災の被災地を訪れた畔取さんは、住宅が基礎だけを残して流された光景に自分の住む地域が重なり、自ら身を守ろうと2013年にシェルターを建てました。
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中には飲み水・非常食・発電機などが揃っています。
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完成して9年、日頃はあまり使っていないという畔取さんですが、つくって良かったと話しています。

(畔取義彦さん)
「備えておいた方が心の安心に結びつくと思います。ここにいるものにとってはね、安心感というのが大きいですから」
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畔取さんのシェルターの中には万が一に備えて放射性物質や毒ガスの除去に対応した空気清浄装置もありました。

(畔取義彦さん)
「(空気清浄装置は)スイスから来た。外からもし核の汚染されている空気が入ってきたら、ここでろ過してやると。180万円です」

ふるさと納税の返礼品に採用された「放射性物質や生物化学兵器の除去にも対応」のシェルター

いま、複数の自治体がシェルターをふるさと納税の返礼品に採用しています。今年1月、茨城県結城市のふるさと納税の返礼品に寄付金額2090万円で加わったのが、地元企業が手がけた「防災核シェルター」です。

(直エンジニアリング 古谷野喜光専務)
「こちらが防災核シェルターの『クライシス01』です。ガンダムとかエヴァンゲリオンとかそれに近いようなかっこいいデザインにしております」
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鉄板と鉛板を組み合わせ強さと精悍さを兼ね備えた外観。中の様子は、ウッド調の壁面に、温かみのあるLEDライトを設置。エアコン完備で、普段はテレワークなどの利用もおすすめだといいます。広さは、奥行約3m・幅約2mです。

(直エンジニアリング 古谷野喜光専務)
「(Q普通の部屋という感じですね?)有事の際はめったにないことですから、平時の際でも普段使いできるというコンセプトでつくられています(Qこの場所では何人ぐらい寝られる?)小さいお子さんを入れて5人までですかね」
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そして、核シェルターの本格的な設備も見せてもらいました。壁に設置された「イスラエル製の核フィルター」の蓋を開けると、中にはフィルターとホースが入っています。部屋の吸気口にフィルターをとりつけ、ホースでつなげて電源を入れて使用します。
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(直エンジニアリング 古谷野喜光専務)
「放射性物質の除去もそうなんですが、火山灰・火山性ガスのほかVXガス・サリンなど生物化学兵器の除去にも対応しています」

もし電源を喪失した場合、空気清浄装置は手動で操作することができます。
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さらに、避難中も外の様子がわかる防犯カメラや太陽光パネル(オプション)もありました。

ウクライナ情勢受けて電話や見学希望が急増

もともと板金加工などが専門のこの企業は約7年の試行錯誤の末に、去年12月、念願のシェルターを本体627万円(税込み)で販売。ただ、販路が乏しく結城市に相談したところ、ふるさと納税の返礼品に採用されました。当初、ほとんど問い合わせはありませんでしたが、ウクライナ侵攻を受けて3月に電話や見学希望が急増したといいます。
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(直エンジニアリング 古谷野喜光専務)
「3月は1日30~40件近く問い合わせがあります。(Qホームページでは販売エリアが関東近郊になっていたが?)問い合わせ先がかなり遠方の方が増えてきましたので、いまは全国です(※離島除く)」
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ウクライナ情勢で突然注目が集まったことについて聞くと…。

(直エンジニアリング 古谷野喜光専務)
「率直に言うと、かなり複雑です。もちろんわが社としては、戦争は反対ですので、いいこととは思っていません。日本国内で危機感というものは持っていただいて、個人個人が命を守るという意味では普及していただきたいと思っています」