激しさを増すロシアによるウクライナへの軍事侵攻。ロシア軍はウクライナ西部の都市リビウをミサイル攻撃し、比較的安全とされた西部地域へ戦線を拡大させています。その意図について、3月14日の毎日放送『よんチャンTV』に出演したウクライナ人の国際政治学者グレンコ・アンドリーさんは「大量の民間人を殺害することでウクライナ人の抵抗の意思を喪失させようとしているのでは」と話します。また、西側諸国の軍事支援について「他国がウクライナに入国した瞬間にロシアは敵とみなして攻撃対象とするかもしれない」との見方を示しています。

比較的“安全”とされていた西部にもロシア軍の攻撃

(大吉洋平アナウンサー)
「比較的安全としてウクライナの人々が退避している西部でも、ロシア軍が攻撃を実施しました。これまでロシアはウクライナの東部から侵攻していきました。というのもロシア側からすると、ウクライナの東部で大量虐殺が行われていてロシアは平和維持という名目で最初東部に入っていきました。番組の中でも西部のリビウへ何とかたどり着こうとする人たちの姿を報道してきましたが、そのリビウ州にあるヤーヴォリウの軍施設にロシア軍がミサイルを撃ち込んだと、ウクライナの地元当局が伝えていて、ロシア国防省も攻撃を認めています。リビウ州の中心部でも爆発音が聞かれた、西部の2つの空港も破壊されたという情報もあります。西部への攻撃についてグレンコさんは『短期間での征服が難しくなり、より残虐に徹底的に攻撃している。精神的に参らせる意図か』と見ていると。これはどういうことなのでしょうか?」

(国際政治学者 グレンコ・アンドリーさん)
「文字通りの意味であって、まずウクライナ国内のどこにいても安全ではないというのが1つの見せ方です。短期制圧は無理だがウクライナを何としてでも征服したいという願望は変わらないわけです。じゃあどうするかというと、ウクライナ人から抵抗する意思を奪おうという目的に必然的になるんですね。ウクライナ人に戦う意思があるうちはなかなか占領できないということはこの2週間の戦場でわかるので、なるべくたくさんの民間人を殺して、ゼレンスキー大統領を含めて多くの人に『人が大勢殺されているから、もう降伏でもいいからとにかく殺戮を止めたい』という気持ちにさせたいんです。そうさせるためにこういう残虐な攻撃を続けています」

(大吉洋平アナウンサー)
「リビウはウクライナの西部にあり、ポーランドの近くにあります。ポーランドはNATOの加盟国です。もしポーランドへの攻撃なんていうことが起きれば、これはNATOは黙ってはいられない。場合によっては第三次世界大戦ということにもなっていくわけですよね。それぐらい緊張状態が今続いているということです」

アメリカによる支援をロシア側が牽制「輸送隊がロシア軍の標的になる」

(大吉洋平アナウンサー)
「そうした中で、アメリカの軍事支援をロシア側が牽制しています。アメリカのブリンケン国務長官は、ウクライナに対して日本円で約230億円の軍事支援を承認したとしました。バイデン政権発足以降、ウクライナへの軍事支援は約1380億円に上ります。一方、ロシアのリャプコフ外務次官が『他の国からウクライナに武器を運ぶ輸送隊がロシア軍の標的になる』と発言したと、ロシアメディアが伝えています。日本人が直接行くわけではおそらくないでしょうが、日本も防弾チョッキを支援として送っている。こういうものを乗せた車がウクライナに入ってきたら、ロシアは容赦しませんよということを公に言っているということになるんですよね。つまり、敵はウクライナだけじゃないんだと、支援する国も敵なんだと。日本が例えば何かしらの支援物資を運ぼうとして、その輸送隊が攻撃されたときに日本はどういう対応をとるのか、そういったことも非常に気になってきます。こうしたロシアの姿勢についてグレンコさんは『どの国の車両でも国境を越えてウクライナに入ってきたら攻撃対象にする可能性がある』と考えているということですね」

(グレンコ・アンドリーさん)
「そうですね。西部のヤーヴォリウの軍施設への攻撃とつながる話かと思いますが、軍施設は本当に西部の西部で、ポーランドとの国境とは数十kmしか離れていない場所です。あそこは実際にウクライナに車両が入ってきている道とそんなに遠くないところにあります。なので、その軍施設でさえ攻撃できたわけだから、同じ形でウクライナに入ってきた瞬間から支援物資の車両を簡単に攻撃できるというロシアからのアピールにもなっているんですね。たぶん、ポーランド国内にいる間はNATO加盟国への攻撃になるので、当分ロシアでさえしないんですけれど、ただウクライナに入った瞬間、容赦しないというメッセージです。仮にその運転手や操縦者が外国人であっても、ウクライナに入った瞬間、もう敵だとみなして無差別にやるというメッセージで。それは、まだ西洋の中で直接対決に対して消極的な意見がメインなんですね。ロシアもそれをわかって利用しようとするんです。どういうことかというと、ポーランドはNATO加盟国だからとりあえず安全だけれど、ウクライナに入った瞬間にはもう危険なので、そういう形でウクライナ国内でアメリカ人が殺されても、アメリカは直接手を下さなくなるんじゃないかというふうにロシアが見て、そういう脅しをしています」

(大吉洋平アナウンサー)
「逃がさないようにしているというのがまさに状況を表していて、他国の支援すらもできない、そのパイプすらもシャットダウンしようという動きが見えてくるわけですよね」

一時停戦中に“さらなる攻撃への準備”という見方も

(大吉洋平アナウンサー)
「そして、ウクライナとロシアの4回目の停戦交渉についてです。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、交渉開始前の13日のビデオメッセージで『ロシアは今より的確に世界の状況を感じとり、ウクライナ側の立場に理解を示しつつある。数日中に具体的な結果に到達すると思う』と発信していました。一方、インタファクス通信によりますと、ロシアのスルツキー下院外交委員長は『双方の立場に実質的な進展がみられる。数日中に何らかの文書に署名するかもしれない』と述べていたということです。グレンコさんは『一時停戦はどちらにとってもメリットがあり、実現の可能性も出てきたと』と見ているのですね?」

(グレンコ・アンドリーさん)
「あくまで合意とか和平ではなくて、あくまで一時停戦の可能性が出てきたということですね。ロシアの論調から、もしかして見られるかもしれませんが、あくまで一時的なので、仮に今回は交渉で一時停戦という合意にたどり着いたとしても、間違いなく時間が経ってから戦争が再開します。というのは、ロシアが一時停戦に応じる唯一の理由としては、補給が遅れていて当面はこれ以上の攻撃は上手くいく見込みがないとロシア自体が判断したときです。ここで泥沼の戦いを続けるより、一旦停戦して、既に占領をしている土地でしっかり陣取って要塞などをつくって、更なる攻撃への拠点とすると。停戦している間にですね。その後は停戦を破ってさらなる攻撃に乗り込むという戦略を考えた場合のみ停戦が可能なので、双方に利益があると言いましたが、たぶんロシアは自分に利益がある時しか動かないので、ウクライナにとって一時停戦が吉と出るのか凶と出るのかはまだわからない状態です」