今年4月から行われる『成人年齢引き下げ』や新型コロナウイルスのオミクロン株が世界的に感染が拡大する中、2月に行われる北京冬季五輪や日中関係はどうなるのかなどについて、1月10日放送のМBS『よんチャンTV』で池上彰さんに話を聞きました。

成人年齢が18歳に引き下げ 携帯電話の契約やローン契約など可能に

―――1月10日は成人の日です。今年4月から成人の年齢も引き下げられてどのような事が変わることになりますでしょうか?

1月10日の段階では成人年齢は20歳ですが、今年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。例えば携帯電話やクレジットカードなどの契約が親の承諾なしにできるようになります。また、ローンを組むことや部屋を借りるなどの契約が1人でできるようになります。一方で、いろんなトラブルが起きても自分の責任だよということになります。

さらに私が気になるのは、18歳から成人になるということは、来年18歳、19歳、20歳の人たちの成人式はどうなるのかということです。番組のスタッフが調べたところ、大阪市、神戸市、京都市では、20歳の人のみで「はたちの集い」などの式典をするということです。地域によっては、18歳、19歳、20歳それぞれ別々に成人式をやるというところもあるみたいです。

コロナ禍で訪日外国人激減 中国のネットユーザーら行きたい国 1位は日本

―――関西空港から入国した人の数は2019年に838万人でしたが、2020年には101万人、2021年には3万8000人と激減しました。当時、関空から入国した訪日外国人観光客の約半数は中国の人でしたが、また日本に来てくれるのでしょうか?
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中国のネットユーザーに聞いたアンケート(2020年 日本インバウンド・メディア・コンソーシアム調べ)で、『コロナ終息後に行きたい国はどこですか?』と尋ねた結果、1位は日本で全体の44%、2位がタイで12%だったということです。やはり日本だと、品質が良い、あるいは清潔というのがあり、その憧れってあるんですよ。関西は大阪、京都、奈良など。観光という面で日本に興味持ってる方は多いんですね。今はなかなかコロナで出国することができませんけど、いずれコロナが終息すれば、また大勢の人たちが関西にもやってくるだろうと。そのための準備を考えておかなければいけないんだろうと思います。

北京冬季五輪 開会式には人権問題理由に『外交ボイコット』も

―――「北京冬季五輪」が2月4日~20日日程で開催が予定されています。中国国内でオミクロン株の市中感染も確認されていて、中国中部の都市「西安」などで強力な封じ込め『ロックダウン』のようなことを行っていて、ゼロコロナ政策というのを進めています。そんな中での開催はうまくいくのでしょうか?

『既に大成功は決まっている』何がなんであろうと大成功だって発表することは決まってるということですね。だからそのためには今必死になっていまして、西安は人口・約1300万人の都市で、ざっと東京都と同じぐらいです。ロックダウンが行われているんですね。さらに北京と隣り合わせの天津でも感染者が出てきてしまっています。天津からはすぐに北京に来られるので、天津の人は北京に来るなと言って、封じ込めをしていると。チケット販売もまだまだ決められない、そんな状態ですが大成功だという発表はもう決まってるということですね。

―――一方で欧米では外交的ボイコットの動きもありますがその辺はどうなんでしょうか?

外交的ボイコットとは開会式・閉会式に首脳が来ないということです。選手は来ますよね。むしろ外交的ボイコットと呼ばれると、中国の若者たちの愛国心を掻き立てるんですよ。『中国国内で愛国心が高まる』これが一つのポイントなんですね。外交的ボイコットは、中国の人権問題を理由に各国が表明していることです。アメリカ、イギリス、日本も入ってます。カナダニュージーランド、要人を送らないということですね。しかし、実際の競技自体には影響ないんですよね。あくまで開会式にどれだけの首脳が来るかってだけという問題なので、中国にしてみれば、そんなことは問題にしていないというよりは、それに対する反発があって、この際みんなで中国を愛そうじゃないかという動きになっています。

中国国内では国産品を買う動きも…

五輪をきっかけに中国国内での愛国心の高まりを受けて、国産品を買おうという動きが広がっています。中国のスポーツウェアメーカーの「アンタ」は大変な成長ぶりで、2019年には47億ドルの売り上げを記録しています。中国は世界の工場と言われるほど、スポーツメーカーのナイキなど様々な企業が工場を作りました。中国で製造をすることで、ブランドノウハウや品質管理のやり方などを学びそのノウハウを生かして独自ブランドを立ち上げたということですね。

2期務めた習金平政権 3期目突入は『既定路線』

―――中国では国家主席の任期を2期10年とする憲法があったのですが、それが撤廃されました。習近平国家主席は今年の秋に開催される予定の5年に1度の共産党大会で3期目へ突入するのでしょうか?

3期目突入は既定路線ということです。中国の場合は、共産党のトップが総書記です。総書記になると、その翌年の、全国人民代表大会で国家主席に選ばれるという形になっています。共産党の総書記は、任期の定めがありませんでした。ただし、国家主席の任期は2期10年までと決まっていたので、任期が切れる前の年に共産党のトップが交代をして、翌年に国家主席に選ばれるというのがこれまでの伝統でした。

 しかし、国家主席の2期10年の任期を撤廃したことは共産党のトップも引き続き習近平国家主席が務めて、そのまま国家主席になるんじゃないかと。なぜそうなるかというと、今個人崇拝が中国国内ですごく進んでいるんです。習思想を学ぶ教科書が導入されていて、既に小学校・中学校・高校はそういう科目があり、そのための専用の教科書があります。例えば小学校低学年の教科書を見ると、『習おじいさんは、とても忙しいのにいつも国民のことを気にかけています』と書いてありました。いよいよ今年からは、大学でも教科書ができるということで、徹底的に習思想を学ぶ、つまり、個人崇拝を進めようとしていることは、もう3期目を視野に入れているからということが考えられます。

―――日本では『長期政権が続くと大丈夫なのか?』という目線も出てくると思うんですけど、中国ではそうしたことはないのでしょうか?

これは、いまひとつはっきりしていません。長期政権への反発は、国内の一部あるんじゃないかと言われていて、注意深く様々な論文などを見ていると、習近平体制を批判してるのかなというものも見かけます。しかし、全体としては反発、反対はとてもできないというので、習体制の長期政権化が今進もうとしているということですね。

日中関係 政治的には微妙 経済的にはプラス

―――気になるのは日本との関係ですが、習体制が強固になっていく中で、日本と中国との関係はどのようになっていくと思われますか?

政治的には微妙しかし、経済的にはプラスということです。これはすごく皮肉なことなのですけど、これまで習近平体制というのは強固になっています。過去の胡錦濤政権では、必ずしも政権基盤が強固ではなかったんですね。そうすると、日本との関係を良くしようとすると、親日派だと言われて。『何で日本と仲良くするんだ』という批判が出てですね、政治基盤が揺らぐっていうこともあったんですね。ところが、習近平体制が強固になると、彼が何をやっても誰も反対できなくなるわけです。そうなると、例えば中国経済のことを考えて、習近平国家主席が日本との関係を強化するんだというと、誰も反対できないということです。極めて皮肉なことなんですけど、実は日中関係は安定する可能性が高いと。純粋に経済だけを考えると、日本にとって必ずしも悪いことではないというこういう受けとめ方なんですね。