人生100年時代に挑戦を続ける元気な人々に注目して、今回は奈良県在住で93歳の林千鶴子さんに話を聞きました。奈良の「卑弥呼」と呼ばれる林さん、新規ビジネスにチャレンジされているといいます。そのパワフルな姿をMBSの大吉洋平アナウンサーが取材しました。

平均年齢70歳超の方々が切り盛りするお店

(大吉アナウンサー)
「奈良県桜井市の桜井駅前にやってきました。ここからほど近い場所でいきいき頑張るシニア世代のリーダーがいらっしゃるということなんです。さっそく行ってみましょう」

奈良県桜井市。邪馬台国の女王・卑弥呼の墓があるとされる場所の1つです(※諸説あります)。
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駅の近くに今回取材するお店「まほろばの里 卑弥呼」がありました。
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(大吉アナウンサー)
「今、女性たちが作業をしていらっしゃいますね。おはようございます。あ、いい香り。作業をしていらっしゃるのは皆さん女性陣ですね。桜井の卑弥呼たちです」
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(大吉アナウンサー)
「失礼なんですけれども平均年齢はおいくつくらいなんですか?」
(作業している女性)
「70代後半くらいですよ」

店頭でお団子を焼く店長は93歳

働いているの桜井市商工会に所属する女性たち。その店を切り盛りするのが店長の林千鶴子さんです。

  (大吉アナ)「ご挨拶が遅れましたがアナウンサーの大吉と申します」
(林千鶴子さん)「どうぞよろしゅうに。林と申します」
  (大吉アナ)「失礼ですが、今おいくつでいらっしゃるんですか?」
(林千鶴子さん)「93です」
  (大吉アナ)「93歳!?お元気ですね。今朝も冷え込むのに、こうしてお店の前に立って」
(林千鶴子さん)「これがもう私の生きがいです」

93歳の林さんは週の半分以上はお店に立ちお団子を焼いています。人生100年時代。昭和3年生まれの林さんはどんな青春を送り、令和のニッポンに何を思うのでしょうか?

1本1本焼かれる卑弥呼のみたらし団子。1本90円(税込み)で販売しています。地元から取り寄せた団子を、お店で炊いた秘伝のタレにくぐらせます。
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(大吉アナ)「林さんが焼いてくださった、こんがり、おこげがついたみたらし団子、いただきます。あつい!」
 (林さん)「熱いのが良いんですよ」
(大吉アナ)「甘さ控えめで香りがものすごく際立つタレですね」
 (林さん)「タレがね、みたらしでは命ですよってに」
(大吉アナ)「むちゃくちゃ美味しいです。ありがとうございます」

82歳で店をオープン“桜井駅前に活気を取り戻したい”

林さんが店を始めたのは11年前です。活気を失っていく桜井駅前をなんとか盛り上げたいと、なんと82歳のときに桜井市商工会の支援を受けて店をオープンしたのです。

(林千鶴子さん)
「(商工会)女性部っていうのはね、イベントでみたらしを焼いてきたんです。せやから『みたらししかないな』って思ったんです」

最初は売れず、苦しい時期が続いたといいますが、なんとか店を続けました。そして今では多いときには1日600本が売れるほどになりました。
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(お客さん)
「トロトロですごくおいしいです」
「タレがいいのかね、味がとってもよろしいですわ」

女学生時代に起きた大阪大空襲…令和の若者へ「自分大事に生きてや」

林さんには肌身離さず持っている1枚の写真があります。

 (林さん)「女学校3年生(のときの写真)」
(大吉アナ)「これ林さんですか。かわいらしい美人な女子学生。今もですけれども」
 (林さん)「写真はなんにもないんです。小学校のもみな焼けてしまいました」
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昭和3年(1928年)に大阪市で生まれた林さん。10代だった女学生時代に起こったのが大阪大空襲でした。

(林千鶴子さん)
「私の女学校の卒業式の1週間前ですよ。そうしたら卒業式は人数が半分ですよ。あのときのことを思ったら涙がこぼれる。トタンがあるんですよ。私、何も思わんと踏んだんです。踏んだらトタンがグラッとなってね、足がにゅっと出てきた。死体にトタンをかぶせているんです。そんな中を歩いてきたからね。平和ということは『幸せやな』って一番に思います」

壮絶な時代を生き抜いた93歳。令和の若者たちに伝え続けていることがあるといいます。

(林千鶴子さん)
「『あんたらな、自分大事に生きてや。粗末にしたらあかんよ。せっかくもうた命やから』って、この間も高校生に言うたんですね。『おばちゃんらな、つまらん学生生活を送ったから、あんたら学生生活を大事にしいや』言うて」

遠方から林さんに会いに来るお客さんも

自分が今できることを。93歳で現役を続ける理由の1つです。取材した日もインターネットの記事を見て林さんに元気を分けてもらおうと会いに来たお客さんがいました。思わぬ出会いも林さんの原動力です。

(お客さん)
「元気をいただきに来ました」
「私は福井から来ました」
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(林千鶴子さん)
「うれしいでんな。あんなん夢にも思ってない」
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(大吉アナ)「人生、何を始めるのにも遅すぎるっていうことはないですね」
 (林さん)「そうです。今です」
(大吉アナ)「『もう36歳やし』って思うときあるんですけど全然ですね」
 (林さん)「若いやんか」
(大吉アナ)「嬉しいです。そんなん言っていただいたら」
 (林さん)「そんなん、これからやで」

そんな林千鶴子さんに聞いた今年の目標は『一にち一日』ということでした。