各地で人々を悩ませる「開かずの踏切」問題がある一方で、まったく逆の危険な踏切があります。遮断機も警報機もなく列車の接近を知らせるすべのない「第4種」と呼ばれる踏切です。最新の調査では全国に約2600か所あるという第4種踏切の実態を、MBSの大吉洋平アナウンサーが取材しました。

「開かずの踏切」

今年11月、MBSではJR阪和線にある危険な「開かずの踏切」を取材しました。朝のピーク時、1時間のうち最大52分も遮断機が下りていた「開かずの踏切」。
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警報機が鳴り始めてから走って踏切の中に入っていく小学生…。
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5分待ってやっと遮断機が上がったかと思うと、すぐにまた下りてくる遮断機。
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下りてきた遮断機が、踏切を渡る車に当たる場面も見られました。なんとか車は踏切を渡り切りましたが、危ない状況でした。

(大吉洋平アナウンサー)
「危ない危ない。これが日常ということなのでしょうか。今、危なかったですよね」

「開きっぱなし踏切」=『第4種』踏切

一方、今回新たに取材した場所は「開かずの踏切」とは状況がまったく逆です。滋賀県東近江市にある近江鉄道の踏切を訪れました。最初に訪れた踏切は一般的な踏切です。

(大吉アナ)
「こちらは一般的な踏切ですね。遮断機があって警報機もついています。そして非常ボタンもありますね」
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しかし、そこから線路沿いをわずか60m歩いた先にある隣の踏切は…。

(取材班リポート)
「えっ、これが踏切…?何も付いていないですね。かろうじて横に木のガードのようなものが付けられていますけれど。遮断機もなければ警報機も非常ボタンも何もない。でもこれは踏切なんですね」
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しばらく待つと列車が通りました。

(取材班リポート)
「列車がやってきました。そして私の前を通過していきました。知らずに近寄っていくと非常に危ないですね」

遮断機も警報機もなく、ただ目の前を列車が通過していきました。これが「第4種」と呼ばれる踏切です。

危険なシーンを目撃した人も…「電話に気をとられてギリギリだった」

線路の先が樹木で覆われている見通しが悪いところにも第4種踏切がありました。
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安全確認のためにミラーが設置されています。電車の通過は多いときでも1時間に4本ほどですが、住民に話を聞くと危険なシーンを目撃したこともあるそうです。

(近くに住む人)
「子どもさんが親と電話するんですよ。電話の方に気をとられてギリギリでしたわ。(Q踏切を廃止すると困る人は多くいますか?)そりゃいますよね」

遮断機設置には“費用” 踏切廃止には“住民合意”の壁

第4種踏切は全国に約2600か所あり、事故の件数は遮断機や警報機がある「第1種」踏切の約2倍。調査した総務省は今年11月、国土交通省に対して解消や改善を勧告しました。

近江鉄道は琵琶湖の東部で約60kmを営業している市民の足。第4種踏切は30か所残っていて改善の努力を続けています。

近江鉄道のとある踏切では、2016年に取材した時は遮断機も警報機もありませんでしたが、今年12月に訪ねてみると新しい遮断機と警報機が付いて安全性が向上していました。
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ただ全てがこのようにはいきません。近江鉄道によりますと、遮断機を設置するのには莫大な費用がかかる一方で、踏切をなくすには住民との合意が難しいということです。
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鉄道の安全に詳しい関西大学社会安全学部の安部誠治教授はこう話します。

(関西大学社会安全学部 安部誠治教授)
「第4種踏切を廃止したとしても線路の両側には道が残っている。道路があるわけですよね。フェンスか何かで覆って通行止めにするわけですけれども、そうするとフェンスのないところから線路を渡って向こうの道路に行ってしまうという新しいリスクも発生するわけです」

センサーで人を感知して「音声」で知らせる踏切も

住宅街でギリギリまで家屋が建っていて左右の見通しが悪い第4種踏切。この踏切に近づくと…。
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(機械からの音声)
「危ない。踏切では止まって右・左を確認してから渡りましょう」
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センサーが人を感知して音声で危険を知らせました。
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(近くに住む人)
「大人だと隣の遮断機のある踏切音で気付いて止まるんですけれど。子どもでも注意すれば危険がないようにしてくださっている部分はある」

JR西日本は手動の「踏切ゲート」を開発

400か所以上の第4種踏切を抱えるJR西日本。安全対策として「踏切ゲート」を独自開発して今年、山口県で実験しました。歩行者はゲートを押し開けて踏切を渡るため、急な横断は避けられるというものです。
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(関西大学社会安全学部 安部誠治教授)
「踏切の前で一旦停止をする。左右の安全を見てからゲートを開けるということをしますので、ひと呼吸おけます。手動なので電気代がかかるとか機械システムの維持にメンテナンスの費用が発生するという点も金額がわずかで済みます」

人通りも列車の本数も少ない第4種踏切。まずは住民の安全確保から始めていく必要があります。