JAF(日本自動車連盟)による最新の調査によりますと、「信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時に車が一時停止する割合」は全国平均で30.6%だということです。つまり、一時停止する車は「10台のうち約3台」ということになります。そんな中、事故を防ぐために「思わずブレーキをかけたくなる」という横断歩道があります。その現場を取材しました。

『信号のない横断歩道」で一時停止する車は「10台のうち3台」

夕暮れどきに住宅街の道を走る車のドライブレコーダーの映像。横断歩道にさしかかった時、左から自転車に乗った子どもが飛び出してきました。車は急ブレーキで停止して、事故は起きませんでした。
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こちらの車のドライブレコーダーの映像には、横断歩道を渡ろうとする自転車を確認。対向車も停止し、自転車が渡り始めます。すると、第一走行車線から車が突っ込んできて、あわや接触しそうになりました。ぎりぎりで事故は起きませんでした。
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JAFによる最新の調査では、「信号機のない横断歩道で一時停止する車」は全国平均で30.6%(2021年)。それでも、5年前の2016年の7.6%よりは増えています。

「おじぎの習慣」で『約9割』の車が横断歩道で一時停止

そんな中、横断歩道でのマナーが話題になった地域があります。徳島県の美馬市では、信号のない横断歩道で約9割の車が一時停止するといいます。その理由は、下校時に横断歩道を渡った子どもたちが、一時停止した車に『おじぎをする習慣』があるからでした。運転をしている側からしても、気持ちのいい習慣です。
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(横断歩道を渡る子ども)
「『急いでいるのに、わざわざ止まってくれてありがとう』という気持ちだと思います」
(運転していた人)
「(おじぎを)してくれたら、やっぱり『ほかでも気を付けて走ろう』という気持ちになるよね」

『トリックアート』を横断歩道に活用し減速促す

このように「一時停止」が根付いた地域もあれば、歩行者がいてもお構いなしに車が突っ込んでくる道もあります
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取材班が訪れたのは、京都府亀岡市にある「亀岡市立千代川小学校」の通学路。さほど幅が広くない道でも交通量が多く、スピードを出して走る車が目立ちます。

(保護者)
「(Q朝の時間帯、交通量は多い?)多いです。めっちゃ多いな。制限速度が30km/hなんですけど、守っていない人もいるんでね、中には。怖いです」
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そんな道路に最近導入されたのが、「トリックアート(だまし絵)」を活用した横断歩道でした。浮き出るように見える目の錯覚を利用して、車のスピードを抑えようというのです。
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果たしてその効果はどうなのでしょうか。取材班は実際に車に乗って確認しました。

(リポート)
「横断歩道が見えてきました。少し浮き出ているようにも見えますね。というか、見慣れない色がついているので、それが目をひくという印象でしょうか」

今度は対向車線から走行して確認してみました。白い部分が盛り上がり、障害物があるように見えます。
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(タクシーの運転手)
「うっすら立体的に見えました。効果がないわけではないと思いますし、意図がわかりますから。だから逆にスピードを落とそうかなという気にはなりますね」

大学生が提案「違和感を覚えてもらったら」

実はこの横断歩道、京都産業大学の髙嶌ゼミの学生たちが「交通安全対策」の一つとして、京都府警に提案し、採用されて実現しました。
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(京都産業大学・高嶌ゼミ 杉浦大地さん)
「海外で実際に採用されていて、それが実際に効果が出ていたというのがデータに表れていました。そのため、日本でも取り入れてたらおもしろいんじゃないかと思って」
(京都産業大学・高嶌ゼミ 山下康平さん)
「実は父と一緒に通ったんですよ、その道を車で。正直、あんまり言っちゃいけないかもしれないですけど、『うわー飛び出ている!』というふうではなかったんですよね。どっちかというと、違和感を覚えてもらったらなというのが実用的かなと思っています」
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大学生が描いていたような「浮き出る」感じではありませんが、それでも確実に変化はあるといいます。

(亀岡市立千代川小学校 久保典明校長)
「(Qトリックアートを導入した前後で減速する車の数に変化は感じていますか?)感じています。この横断歩道を意識をしてくれている方もいますし、『子どもたちのために』という思いでこういうふうにしていただいたのは、ありがたいと思っています」