「農業をしたい人」と「働き手がほしい人」をつなぐ“農業用マッチングアプリ”があります。メリットは「お金をかけずに条件に合った人をスピーディに見つけることができる」ことです。今回取材班は、このアプリで出会った2人を取材しました。

『野菜作りしたい』が農業は素人の中島さん…「アプリ」で働き手を募集

大阪府松原市にある工房「Nakajima woodturning studio」。ここで、木を使ってサラダボウルや小皿などを作る中島信太郎さん(40)。
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独学で技術を習得し、12年のキャリアがある木工職人です。
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最近、中島さんは新たな事業を目指しているといいます。

(木工職人 中島信太郎さん)
「(自分が作った)食器に料理を盛り付けてもらうイベントもやっていて。無農薬とかで野菜を作っている方と話をする機会が増えてきて、『自分も食べるもの、野菜を作りしたいな。仕事としてやりたいな』と」
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しかし、農業はまったくの素人。「一緒に作ってくれる人を探したい」と思っていた時に中島さんのキューピット役になったのが、マッチングアプリの「農mers」でした。
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カップリングが成立したのは、27歳の若い田中脩平さんです。
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過去にアプリ内でどのようなやりとりがあったのか、見せてもらいました。

(田中脩平さんから送られたメッセージ)
「はじめまして、夜分遅くに失礼致します。新規就農スタッフ募集の件、興味を持ちましてご連絡させていただきました」
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(中島信太郎さんのメッセージ)
「イチから農地と農法を確立していくつもりです」

これが最初の出会いでした。

「農業に関する仕事がやりたい」脱サラして農業の世界へ

中島さんとカップリングが成立した田中さんは、今年8月から大阪府松原市の畑で働いています。

(田中脩平さん)
「(Q農業の仕事は昔からやっていたんですか?)高校在籍している時に、農業高校で3年間だけ農業の経験をさせてもらってから、あとはずっとサラリーマンで。昔から農業に関する仕事をやってみたいなという気持ちが心の中にありました。転職をするなら農業、もう一回やってみたいなと思ったのが始めですね」

田中さんは大学卒業後、自動車販売店に就職し、整備士として4年勤めてから転職を決意しました。
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倉庫には、田中さんが今年初めて収穫したショウガがありました。

(田中脩平さん)
「(Q初めての収穫の時の気持ちは?)自分らで植えて育てた農作物が、こうやって成長して出てきてくれるというのは感動しましたね」
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一方、農業法人の設立を目指して、田中さんを雇用した中島さん。農業人材を募集する場合、知り合いや農協、ハローワーク経由が一般的で、中島さんのような新規参入者が働き手を確保するのはハードルが高いといいます。
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(木工職人 中島信太郎さん)
「(Qどういうきっかけでアプリに登録をしました?)最初は求人媒体のひとつとして使えたらいいかなくらいの感覚でいたんですけど。僕たちの場合は、コネもつてもない状態で始めることになったので、その点で(アプリは)非常に便利だったし、そういう方には使いやすいものになっているんじゃないかなと思います」

コロナの影響を逆手に取り『働き手の登録者数は1年で10倍に』

働き手の登録者数は、去年1月は1293人だったのが、今年1月には1万2000人を超えて、1年で登録者数は一気に10倍になりました。
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(マイナビ農業活性事業部 黒壁勇人さん)
「新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが普及したことにより、どこでも仕事ができるような環境になったことがひとつあげられると思っています。ワーケーションに農業の要素を取り入れた『アグリワーケーション』というのを推進していこうという働きがあります。コロナを逆手にとった働き方として、今注目されているのではないかなと思います」

「農mers」は収穫期だけのちょっとしたアルバイトなどといった利用の仕方も多く、人と人をつなぐアプリの可能性は高まりそうです。
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(木工職人 中島信太郎さん)
「(田中さんは)安定した仕事をされていたので、かなりの決意を持ってこれから取り組まれるつもりなんだろうなという熱意みたいなものをすごく感じました。それにこたえる仕事がしたいなと思って、この人と一緒にやりたいなと感じましたね」
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(田中脩平さん)
「第一印象からすごく魅力的な人やなと感じていて、僕もこの人と一緒だったらすごく面白いことができそうだなと思ったので、『ここでやるぞ』と決断させてもらいました」