大阪・キタの繁華街で居酒屋を営む女将。新型コロナウイルスの影響で店の売り上げが激減し、アルバイトを掛け持ちしながら生活費などを稼いで店を存続させていました。時短要請が解除となった今、状況はどうなったのか。取材に訪れてみると、また“新たな問題”に直面していることがわかりました。

客3人だけでも「来ていただいたらうれしい」

11月8日、午後7時すぎの大阪市北区堂山。ここにある居酒屋「ホルモン焼うどんテン」の女将・三枝雄子さん(52)は、自身の出身地である兵庫県佐用町のご当地グルメ「ホルモン焼うどん」を看板メニューに、この場所で15年も店を続けています。

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん 11月8日)
「(Qきょうは営業できている?)そうなんです。ご予約いただいたので今日は開けることができたんですけれども。(Qご予約のお客さんのみという形?)予約のみって形にはしたくないんですけれども、仕入れがね。仕入れをしたまんま、誰もお越しにならないということも考えられるので」
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この日の客は予約の3人だけですが、三枝さんはこうしてお客さんの顔を見て話ができるだけで嬉しいと言います。

(客)
「私が大ファンやから、めっちゃ来たかったんです」

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん)
「うれしいなと思います。こうやって来ていただいたら」

早朝はコンビニ~昼は中華料理店 アルバイト生活

最初の緊急事態宣言が出された去年4月以降、三枝さんの生活は一変しました。

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん 今年1月)
「アルバイトをするところが無くて、早朝だったら絶対コンビニのバイトはあると思って」
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早朝、午前6時から3時間コンビニで働きます。
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さらにその後にはランチタイムの中華料理店へ。

(中華料理店で働く三枝さん 今年1月)
「唐揚げ、天津飯、チャーハン出来立てでございます。いかがでしょうか」

コロナで店の売り上げは激減。その穴埋めのため、アルバイトをしながら自分の店を営業する日々が始まったのです。それでも手持ち資金が足りなくなり、家賃や食材などの支払いを取引先に待ってもらう状況でした。

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん 11月8日)
「(Qその後はいかがですか?)長かったです。お酒出しちゃいけない期間は全部店を閉めていました。完璧に閉めていました。(Qその間は女将さんはどういう生活をしていた?)朝5時に起きて、コンビニのアルバイトに。週7日働かせてくださるコンビニはないので、労基にひっかかるから。3個ぐらいコンビニを違う会社で掛け持ちして。昼は中華料理屋さんのランチ。あとはもうお友だちのお店を手伝いにいくとか」

行政から『協力金』を支給されても、店の家賃や経費の支払いなどに消えてしまうため、さらにアルバイトを増やして日々の生活をしのいでいました。しかも…

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん)
「(Q申請した協力金はすべて振り込まれている?)全然です。(Qまだ払われていない協力金もある?)あります。まだ申請が始まってすぐのものもありますから。まだ全然ですね」

コロナ禍で変わってしまった『客の意識』

今年10月25日、11か月ぶりに大阪府の時短営業の要請や酒類の提供時間の制限が無くなりました。
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ようやく『アルバイト生活とさようなら』かと思いきや、またも厳しい試練が待っていました。

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん)
「予約のない日も、時短があけてからオープンしたんですが…、ゼロでした。お客さんゼロでした。常連さんって、ここがあるからここに通うクセがついているんですが、おうちに帰るクセがついているとなると、やっぱりちょっとこればっかりはね。いいことでもあるのでなんとも言い難いんですが」
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常連客をはじめ、多くの人の行動や意識が変わってしまったことを痛感。今後、店を続けていけるのか不安を感じているといいます。

(ホルモン焼うどんテン 女将・三枝雄子さん)
「(Qいったん離れてしまったお客さんたちを取り戻すのは難しい?)下手したら2~3年はかかるのか。『あんなこともあったね』と笑える日が来るのかなという。あと、このままこういうルーティーンで落ち着いたらどうしようって思っていますね」

今後もまだアルバイトとの二重生活が続きそうです。