10月31日に投開票が行われた衆議院選挙。日本維新の会は公示前の4倍近い41議席を獲得して第3党に躍進しました。今回の選挙の結果について、11月1日、「維新」の“生みの親”であり元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹さんにMBS『よんチャンTV』で話を聞きました。

「大阪の人たちは維新の政治を体感。それが評価に」

―――政党別の獲得議席数をみると、自民が単独過半数。野党共闘の立民と共産が数字を見ると“敗北”となったが?
「『自民党はちょっと伸びがなかった』みたいなね、一部メディアはそういう報じ方をしてるでしょ。それから『野党の立民・共産の効果が一定あった』みたいな」

―――自民党から離れていった有権者は一定数いました。その理由は何か気になるところ。コロナ対策なのか政治と金の問題なのか森友問題なのか。公示前より15議席減らしたことをどう見るかというのは人それぞれだと思いますが。
「立民の14議席減と共産の2議席減も同じように分析しないといけないですね」

―――もちろんそうですね。
「でもそれがなんとなく、減ったというところで、自民の方だけ伸びずに野党の方だけ共闘の効果があったとの書きぶりはおかしいよね。選挙の結果からすればどう考えたって、僕は選挙をやっていた当事者だけど、自民の獲得議席261は絶対安定多数でしょ。圧勝ですよ。自民が圧勝ということを言って、立民と共産は大惨敗ってことをまず前提に話をしましょう」
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―――全国的に見たら自民圧勝なんですが、大阪で見たら自民と維新が戦ったところは維新が全勝だったんですね。維新の生みの親である橋下さんは何が起きたと見ていますか?
「僕がいなくなったことが最大の勝利原因。本当、本当。だって僕のころの維新って、なんかほら、嫌な感じがすごくあったでしょ?何か近づきたくないとか、何かあったらすぐ喧嘩するし。だけど吉村さんの場合はそれがない。何かやわらかく、ウェルカムという感じ。たぶん大阪の今の各種業界団体、別に吉村さんは業界団体からの票は得ていないけど、業界団体が『吉村倒せ』っていうふうにはなっていない。僕のときは自治会から各種業界団体が一致団結して『橋下倒せ』となったけど、吉村さんのときはそれはなく、応援する人は応援しよう、嫌な人は吉村さん反対、そんな感じだもん」

―――維新はなぜこれだけ議席数が増えたのか?何があったのでしょうか?
「これは国政の方のね、野党、例えば立民とか共産は国政の中で一生懸命自民党を追及したりいろいろ言うんだけども、全部口ばっかりなんです。こういうことやります、ああいうことをやりますってのは全部口ばっかり。でも、維新の場合には、吉村さんが大阪府知事をやり、松井一郎さんが大阪市長をやって、現実に維新の政治ってのを大阪ではやっているんです。これは賛否両論あって、100%賛成を得られるってものではないけれども、大阪の人たちはこれが維新の政治だなということを体感しているから、今のところはこういうような評価になっている。東京では維新の政治家が東京の行政・都政とかそういうことをやっていないので、そういうことをちょっと体感させることができていないってところですよね」

―――改革改革という言葉は維新から聞こえます。やはり皆さん大阪の方が改革というのを望んでいるからこれだけ票数として表れている?
「僕はそう思います。もちろん僕の考え方には反対の意見も多いし、『橋下、改革改革ばっかりじゃない』と、大学の教授なんかは、どちらかというとね、もう改革はもういいんじゃないかって。新自由主義的な考え方はやめようとか、成長はもう目指さないでおこうとか、言う人たちは多いんですよ。でも、そういうことを言ってる人たちの共通点は、みんな裕福な人たち。大学教授とかそういうところ。だからもう成長はいらないとかそういうことを言うんだけれど、僕らはやっぱり成長が必要だと、改革が必要だと、やっぱり今日よりも明日給料が良くなるような、そういう社会を目指していきましょうと。これは賛否両論あるけども、そういうことをずっとやってきて、選挙の結果でこうなったと」

「維新はガンガン法案を出す」「岸田首相も必ず維新と関係築くと思う」

―――今回の維新の躍進というのは、今のお話を聞いてると吉村さんや松井さんの影響が大きかったと。では、日本維新の会の国会議員の活動が評価されたわけではないというふうに橋下さんは見ているのですか?
「今朝の番組でその話を維新の馬場伸幸幹事長にぶつけました。馬場さんは嫌な顔してましたね。『俺たち国会議員の活動をちゃんと見てよ』と」

―――国会議員ですでに維新の議員っているわけですからね?
「だけど純粋に見て、維新の国会議員の活動で、今回、大阪の有権者がみんなバーッと票を入れたかといえば、僕はそうは思わない。だからこれは馬場さんたち維新の国会議員には、ちゃんとそこは認識しないとえらい目にあうんじゃないですかってことを朝の番組で言ったんです」

―――これまで維新の衆院議員は11人しかいなかったので法案も衆議院で出せませんでした。今回41人になったので自由に単独で出せるようになるということは、当然、国会議員の選択の幅が広がってくるので、そこで初めて審判にさらされるんじゃないかなと思いますが?
「そうなんですよ。これから法案提出権を持つから、ここで国会議員の活動が評価されます」

―――では、自民や公明との関係性は今後どうなっていくのか、どう見ていますか?
「法案提出権は予算を伴わない法案なんですけれども、これ出ますよ。僕の時に改革法案100本、これ国会議員に作ってもらっているので、これはもう弾があるんですよ」

―――どんな内容ですか?
「例えば、国会議員の議員報酬削減、議員定数削減、そこから始まって、原発再稼働責任法案とか、いろんなものがあります。それをバンバカバンバカ出していく。これがね、なかなか難しいのは、国会はね“つるし”といって、法案が出てきても与党の方が審議しないってことをやるんです。ここを40人の集団がワーワー騒ぎながら『審議しろ』と言っても、自民党からすれば嫌な法案はメディアにさらしたくないから。大騒ぎしながら、これどうすんだ賛成するのかどうするかってことを国会議員がやると思います。公明党との関係は実はね、自民党が過半数を割っていたら、維新の力がものすごく強くなったんだけれども、自民党がこれだけ議席数を取ってしまうと、なかなかこの自民・公明のタッグに維新が割り込むということは難しくなるかなと思います。

―――ただ憲法改正の話になり、3分の2が必要となれば、自民も維新の存在というのは大きくなってくるのでは?
「3分の2でいうと、自民・維新・国民で310議席あるんですよ、今回。だから公明を外して自民・維新・国民でいけるんだけれど、自民はそれできません。これは選挙のときに小選挙区で公明党の票をベースで2万票ぐらいを必ずもらわなきゃ当選できない人が70人ぐらいいるから。だから公明党との関係は切れない。自民公明は元々の恋人。新しい子(維新)が割り込んできたら彼女(公明)は怒るでしょう。なかなか自民・公明の関係は崩れないけれど、維新の方はガンガン法案を出して突き上げていきます。僕はこの国会は楽しみにしています」

―――岸田文雄首相じゃなかったらもっと維新との関係性が変わったんですか?菅義偉さん、安倍晋三さんのときは強固なパイプがあったと思いますが、岸田さんと維新の関係は?
「それはね、岸田さんと維新というよりも、菅さんと松井さんが盃を交わした義兄弟だから。この人間関係はもうすごいですよ。だから、岸田さんと松井さんが同じようになるかといったらなかなか難しいし、松井さんは代表を辞めるって言ってるから。次の維新の代表が岸田さんとやっぱりそこは。岸田さんだって政治をやらなきゃいけないから、公明党だけじゃなくて維新とやっぱりある程度の関係を持つというのは政権運営をやっていくための重要なポイントだから、岸田さんも必ず維新と関係を築くと思いますよ」

松井・吉村両氏の“チルドレン”たちは大丈夫?

―――松井さんは10月31日の会見でも述べていましたが、「市長任期をもって政治家を引退」と。吉村さんは「要請があったとしても代表選は出ない」と仰っている。では、いわゆる“松井・吉村チルドレン”たちはどうなるのか?自民党でも“魔の3回生”というのがあり、大量当選した議員たちが後で不祥事を起こしたり問題発言したりしました。今回維新は当選41人で数が多く、うち比例で25議席。ある程度、国会議員としての規律を守ってもらわないとやはり何か問題が出てくると思うのですが、こうした点をどう見ている?
「これね難しいんですよ。僕も維新を最初つくったときに、みんな国会議員になりたいって言って入ってきたメンバー、とにかく国会議員になりたいだけだから、まぁむちゃくちゃな人が多かったです。いろいろ大変だったんだけど、やっぱりそれは全部を監視することができないけれど、今回ちょっと変化があるのは、小選挙区の方にね、今までの大阪維新の会の市議会議員・府議会議員で地道に経験を積み重ねてきた優秀な若手が16議席の方に入ってきているので、そういう集団で25議席の方をまとめていく。41議席の監視はちゃんとメディアでやってください、厳しく。そういう緊張感があることによって政治家は襟を正すから。僕はどうのこうの言えないけれど、今は僕はメディア側の人間だから、やっぱりしっかりチェックしていかなきゃいけないと思います」

―――なぜ維新はどんどん次の世代、次の世代とやっていけるんですか?立民の枝野幸男さんは辞めないと述べていたが。
「それは僕らが次世代のための政治をやろうというのが1つの維新の大きな理念なんですよ。自分たちの目の前の利益じゃなくて次世代、子ども・孫・まだ生まれていない子どもたちの政治をやろうということなので、次世代の政治をやろうというのに、自分たちがずっとやっていたらおかしいじゃないですか。だからその理念で、僕から松井さんそれから吉村さんに行き、吉村さん世代が今やって、今度は吉村さん世代が次の世代に受け継がなきゃいけない。だから問題なのは、僕からすれば3期4期5期になってくるとベテランだと思うんだけど、その人たちが、ずっとそのポジションにしがみつくかどうかです。そうなってきたらもう維新じゃないですよ。やっぱりどこかで移していくってことをやらないと」

―――確かに次世代がどんどん出てくるのは素晴らしいことだと思います。一方で、経験不足とか、若いというのが何もかも全て良いというわけじゃないという意見をお持ちの方もいると思いますが?
「それは、その若い人たちが前面に出てきて、高齢の人たちはそれをサポートしていけばいいじゃないですか。高齢の人たちが前面に出なくても、その人たちはサポート役に回ればいい。僕は枝野さんときのう議論してね、一番ひっかかったのが、『私がゼロから作った政党です』と。『ゼロから作った政党がここまで来たんだからもう少しやる』と。それはあなた私物化してませんか?と。政党というのは自分がたとえゼロから作ろうがなんであろうが公のものなんだから。僕だってこれね、政党をゼロから作ってポケットマネーで維新をつくって、気づいたらこれ政党交付金たぶん30億円ぐらい入っていた」

―――最初みんなでお金をかき集めてやっていたんですよね。
「僕だけ月5万円。あとのメンバーは1万円。松井さんも月1万円。僕だけ知事だったから月5万円。今度、松井さんが知事になったから『松井さん5万円ですよ』と言ったら、松井さんそのときから月1万円全員ルールに変えたんですよ。それをやってきて、今30億円とかの政党交付金になっても、それで何かリターンがあるというのは株式会社だけど、政党はそういうのじゃないから。ちょっと枝野さんそれね、政党に対する考え方がちょっと違うんじゃないのかなと」
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―――国会議員も年齢の制限とか、定年制とかそういったものあった方がいいと?
「僕はそう思いますよ。だから一定経験ある人は残るのか、ないしは外からアドバイスしてあげるのか、それはいろんなやり方があると思いますけれども、主軸となるメンバーは30代それから40代前半ぐらい。僕も30代後半とか40代前半だったら、記者と何かあったらすぐ喧嘩ばっかりしてたけれど、今50過ぎると、もう丸くやろうよってなっちゃいますもんね」

―――今回の選挙で当選されたベテランの方でも「年齢は関係ない」と言う人もいらっしゃいますが?
「関係は大あり。だって政治なんてのはエネルギーでやるもんだから。松井さんはもう辞めたくてしょうがないわけです。吉村さんも辞めたいとか言うわけですよ。普通みんな政治家って政党の代表になりたいなりたいばっかりでしょ。なんで『辞めたい』というようなことを言うかといったら、疲れ切っているわけ。本気でやってるから疲れ切るんですよ。だからそれだけ体力が必要。国会の方を見るとね、まだやりたいまだやりたいとか80歳過ぎてもまだやりたいって。よくあれだけやりたいっていうか気力もつなっていうのは、僕はやっぱそれは違うと思う。もうエネルギッシュな人間にどんどんやってもらわなきゃいけないと思いますよ」

「選挙だけでは暮らしは上向きません」

―――今回の選挙結果を受けて関西の暮らしは上向くと「思う」か「思わない」か、番組で世論調査を行いました。橋下さんは上向くと思うか思わないか、どちらでしょうか?
「いや、選挙で上向くとは思わない。選挙だけではそりゃ暮らしは上向きません。政治家がね、今回選挙のときに『国民の所得を上げます』とか『暮らしを良くします』って言うが、いやあなたたちにそんな能力はあるのと。僕、国会のその状況とか、政府の中央省庁の官僚の幹部の人たちとも仕事やったけれど、そんな国民の所得をすぐ上げられるような能力を持った人たちじゃないです。それは国会の議論を見てください。あんな非生産的な非効率的な、リモート会議もまだ普及していない。国会の会議なんてのをもし民間企業でやっていたらその民間企業みんな潰れますよ。会社の経営もやったこともない、あんな国会の運営をやっているような人たちに、日本の産業をどんどん発展させて国民の所得を上げるなんてことはできない。やっぱり国民の所得を上げるのは民間企業。だから民間企業が自由に活動できるような、その環境を整えるところまでが政治家の役割」

―――日本維新の会は公約の中に『現役世代の可処分所得を増やす』と書いていますが?
「それは暮らしを完全に良くするというよりも、ある意味、現金を配布するということ。ベーシックインカム。最低ラインのところの教育費とか、そういうところはちゃんと現金ないしは教育費の無償化っていうところで支えますよと。暮らしの上向きって言ったら有権者の皆さんが思っているのは、もっとそれ以上に豊かな生活をしたいって思われるところ。ここまで全部政治がね、税金を配って面倒見るっていうのは、これは社会主義国家だから、日本のような資本主義国家ではそれはできません。やっぱり民間企業に頑張ってもらわないと」

―――分配には投資が要るということですか?
「分配は必要なんですよ。困っている人を助けるのももちろんそう。教育の無償化とかそういうのをきちっとやらなきゃいけない。でもそれ以上に豊かな暮らしっていうのはみんな思うところいろいろあるけれども、いいものを食べて、いいところに行って、いいものを着てとか、そういうところまでは政治に期待しちゃ駄目ですよというところ。だから、みんな有権者の方も、政治に期待するのはどこまでなのかってことを考えなきゃいけない。医療サービスの提供はこれは絶対政治がやらなきゃいけない。保育所のサービスや幼稚園のサービスもこれは政治がやらなきゃいけない。でもそれを超えて、なんとなく豊かな暮らし、いま政治家が言っているのはそういうことをね、幻想を有権者に振りまいているような気がしてならないんですけれどもね」

―――番組の世論調査では7243人の回答を得ることができました。結果は、選挙を受け「暮らしが上向くと思う」が33%、「暮らしが上向くと思わない」が67%でした。
「賢明ですね。だから政治家がいくらいいことばっかり言って、所得税をゼロにしますとかなんやかんやいろいろ言っても、『いやいや、本当に政治でそんなことできるの』っていうふうにみんな思っているんですよね。でも僕は政治に期待している。みんな有権者が政治に期待しているのは、不公正な世の中を正してよと。一部の人のところに税金がいったりとか、一部の人のところだけ得していたりとか、そういうことをなくしてくれれば、たぶんみんな気持ちよく税金は納税すると思うので。不公正なところを正してよっていうところが、僕の言うところの改革なんですけれどもね」

―――「暮らしが上向くと思う」と回答した人の意見では、『今回当選された方がどれだけ本気で仕事をしてくださるかだと思います。関西だけでなく日本が元気になると期待を込めて思いたいです』と、「思いたい」という声が多かったです。そして、「暮らしが上向くと思わない」と回答した人の意見では、『投票率が小選挙区で55.93%だったという結果を見て、国民の半分が政治に意思を示さない今の状況では何も変わらないのかなと悲しくなりました』とありました。
「今のこの時代、今の政治に一番欠けているのは、国民の皆さんに我慢してもらう部分も言わなきゃいけないわけですよ。僕は2008年に大阪府知事に最初就任したときには、『大阪府民の皆さん、とにかく我慢してください。これから皆さんに大変な痛みを伴う改革をやるから我慢してください』と、こう言ったわけです。我慢ばっかりはね夢がないけれども、やっぱり、不公正を正します、ある程度未来を見せます、でも同時に、この部分は我慢してくださいってことを言わなきゃいけない。そんな楽な時代じゃないですよ。高度成長時代でもないし」

―――それを正直に言ったら選挙は通らないと思っている方が多くて、やっぱり選挙戦のときに述べていること、公約に書かれていること、そしてその後に実際にやることやらないことの差が出ていることに怒っている人は多いと思いますが?
「だから僕が大阪の有権者がすごいなというふうに感じているのは、『我慢してください』『改革にこれを負担してください』っていうところでずっと維新を勝たせてくれているじゃないですか。高齢者の方に対してすごく負担を求めましたしね。特定の業界団体とか特定の団体に出していた補助金も全部引き上げたりとか。でもそれでも有権者の皆さんは支援してくださっている。そういう改革っていうものを政治に期待しているんじゃないのか。そこを立民とか共産とかの今回の野党共闘はね、有権者の我慢できる部分や負担できる部分というものをすっ飛ばして、いいことだけ言えば票が来ると思って甘く見ていたんじゃないのかな。大阪はすごいですよ、そういう意味では。バラ色のことを言わなくたって、本当に我慢してくださいってことで応援してくれるんですから」

維新の次のリーダーは?橋下氏の政界復帰は?

―――今回、橋下さんへの質問をテレビの視聴者から募集したところ、たくさんの質問をいただきました。その中に「維新の次のリーダーは?」という質問がありますが、松井さんは任期で辞めると。吉村さんは代表選に出ないのでしょうか?
「吉村さんは出なきゃしょうがないでしょう。たぶん党内でみんなが吉村さん出てくれよっていう声が高まりますよ」

―――松井さんは相当なカリスマのある人で地方議員・国会議員を全部まとめてきたわけですよね?それに代わる人というと、なかなかいないのでは?吉村さんかというと、本人が嫌だって言うんだったら国会議員の中から選ぶしかないと。そうなると、例えば馬場幹事長とかが現実的な路線になってくるんですが、松井さんに代わりについて、橋下さんのお考えは?
「僕は吉村さんしかいないと思うんですが、普通ね、みんな政党の代表になろうと思って一生懸命、枝野さんにしても、みんな総裁選やったり代表選やったりするわけじゃないですか。なんで吉村さんがやりたくないかというと、日本維新の会の代表になっても何のメリットもないんですよ。僕のときからそうなんですが、代表経費って一切取っていないから、僕も松井さんも吉村さんも経費ゼロでやっているんです。これ各政党に行ったら数億円の経費使えるでしょ。維新はそれが代表の方になくて、この政党交付金、基本的には東京の方に預けてるのかどうか、僕もどうなったかさっぱりわかんないけれども。吉村さんはたぶんだけれども、『俺、一生懸命全国ぐるぐる回って選挙戦やってみんな国会議員に通しても、何のメリットもないやんか。大阪府知事の仕事はいっぱいあるのに、これ代表なってどうやねん』と。だから今度吉村さんに聞いてください。吉村さん嫌だ嫌だって言っているけれど、もしかすると彼も弁護士だから、条件闘争に持っていこうとしているのかな」

―――『橋下さんと松井さんに自分は育てられました』って述べているわけだから、橋下さんの一言でわりと変わったりするんじゃないんですか?
「吉村さんはそういうの上手いけれど、俺は何にも維新に本当になんの関係というか、言ってなんかどうのこうのなんてないんだから」

―――年配の人はちょっと引いてサポートするっていうのはまさにご自身のことを言っているのかなと思っていましたが?
「民間人はそういうことやっちゃいけない。しかもメディアに出ている人間がやっちゃいけません。だから僕はこの2週間、出入り禁止になっていたんだから」

―――ではきのうからきょうにかけても松井さんや吉村さんと連絡は?
「していない。メールもしていない。馬場さんに対しても、馬場さんからは一応『これから選挙戦に突入します』ってあったんだけど、僕もやっぱりメディアに出てる以上は、これはもう連絡しちゃいけないと思って。きょういきなり馬場さんと初めて朝の番組で一緒になって、公平に同じようにやらなきゃいけないから、かなり厳しく嫌味なことを言って、維新から『やっぱり橋下って嫌な人間だな』と唸っているらしい」

―――代表を吉村さんがもしやらないということになるのであれば、視聴者から一番多かった質問ですが、橋下さんは政界復帰しないんですか?
「そういうことを言ったら、本当に2週間どころかもう半年ぐらいもうお呼びもなんにもかからなくなるんだから。メディアに出る以上はやっぱり政治に携わっちゃいけません」

―――でも長い目線で見たときに、維新は今回の選挙で議席を伸ばしました。維新で例えば政権取れるんじゃないかぐらいになってきたら橋下さんの政界復帰っていうのはないことはないと思っている関西の人が多いっていう表れですよ?
「冒頭の話でも言ったように、僕がいたら維新っていうのは今のみんなを包み込むような維新じゃないわけ。意見を排除するような維新だったわけ。それが今、徐々に変わってきてみんなを包み込むような維新になってきたんだから、最初のワンステップは僕みたいなやり方が必要だったと思うけれど、今はもう僕みたいなやり方は絶対に駄目です」

「物を言って提案して与党を動かしていくのが野党」

―――維新が今後目指していくもの、ゴールみたいなものって何なのか、どうみていますか?
「大阪都構想というのは、僕らが掲げたのがある意味例外でね、『府と市を1つにしよう』なんていうのは、なかなか大変な目標だった。だけど大変な目標だったからみんながそこに集まって8年10年やってきたんだけど、本来こんな目標なんて政治じゃないわけですよ。『大阪府政を良くしよう』『大阪市政を良くしよう』『大阪を良くしよう』『日本を良くしよう』というのが本来の政治の目標だから、たぶんまず普通の政党に戻るんだろうね。大阪都構想という目標がなくなった途端に急に『じゃあ次の維新は何を目標にするんですか』って言うが、自民だって立民だってそんな大阪都構想みたいな目標ないもん」

―――大阪都構想は住民投票が2回行われて「NO」が突き付けられました。松井さんは3回目は「今のところない」というふうに述べていたはずです。自民との連立を組むつもりもないということも松井さんは述べていました。では、どこを目指していくんでしょうか?
「だから『大阪を良くしよう』というのは大阪維新の会。さっきね、吉村さんは、国会議員団の方の代表なんてメリットないって言ったけれども、ここからが国会議員団の腕が試されるというか、法案提出権を持つわけですから、自民・公明の枠組みを動かす。やっぱり自民・公明の枠組みでは僕は不公正な税金の使われ方がものすごく山ほどあると思っているから、そこをやっぱり正していくっていうのが維新の役割になるのかな。だからこの法案提出権でどんどん改革法案を国会に出して、たぶんつるし上げっていうのにあうんだろうけれども。『これはおかしいじゃないか』っていうことを大騒ぎしていくっていうのを、僕はそれを期待しています」

―――「維新はたくさん法案を用意している」っていうふうに仰っていましたが、取材した内容では、おそらく臨時国会で2つぐらいに絞って維新は出してくるのかなと。歳費の3割カットと定数削減、おそらくそこに絞って出してきて改革色を出していくのではないかなと思うが?
「歳費の削減、要は議員の給料の削減と議員の数を削減するっていうのは、維新のある意味DNAなんですよ。最初に大阪維新の会はそれをやって有権者からの支持を得て、どんどん勢力拡大していったから、やっぱり国会でもそれをやろうというのは松井さんの思いなんじゃないですか」

―――ただ自民の数がそれほど減っていないので、維新の言うことを聞くのかというと、なかなかメスが入れられないところかもしれませんが、おそらく維新としてはここはきっちり出してくるかと?
「法案を提出した後にあとはメディアがどういうふうに報じてくれるかっていうところになってくると思うんだよね」

―――1か月のおそらく臨時国会になるので、さっき言っていたようなつるしでそのまま終わってしまうという可能性はあるかもしれませんが、出し続けるということなんでしょうね?
「そうそう。それが野党だと思うから、文句ばっかり言ったり反対意見ばっかり言うんじゃなくて、どんどん法案を出して、それで与党を動かしていく。それはできる限りのところまで、僕は維新の会の国会議員には頑張ってもらいたいなと思います」
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―――物を言う野党のイメージということですか?
「物を言って提案して与党を動かしていく。与党のだらしない部分を与党のケツを叩いて動かしていくっていうのは僕は野党だと思っている。もちろん追及するのも野党だしね。反対するのも野党だけど、基本的には野党というのは与党と切磋琢磨しながら政治を動かしていく一翼を担うのが野党だと思います」

―――自民からしたら維新って存在としてちょっと怖くないですか?
「そう。だから嫌なところでケツ叩かれるんだよね。だけどそれをやらないと、大阪みたいに全滅しちゃうから。これが与野党の切磋琢磨で、僕はやっぱりこれからね、『野党を育てろ』と。いやそんなことを言っても野党ないじゃないかって言われるかもわからないけれど、最後は有権者の気持ちで野党が生まれてくる。大阪だって維新の会っていうのが生まれてきたわけですから。維新の会が誕生することによって、ちょっと気を抜けば自民党が全滅ですからね。自民党が再起を期すためには、もっと頑張らなきゃいけない。維新ももっと頑張る。これによってね、政治ってものが前に進むんだと思いますよ」