深刻な財政難に陥っている京都市。新型コロナウイルスの影響もあり、特に厳しい状況にあるのが地下鉄などを運営する交通局です。そんな状況を少しでも改善させようと新たな取り組みを始めています。

「売れるものはなんでも売りたい」記念の品も商品に

取材班が訪れたのは、京都市伏見区にある京都市交通局の竹田車両基地です。基地内には現役の地下鉄車両がずらりと並んでいます。新たな取り組みについて京都市交通局の長谷川章子さんに話を聞きました。
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(京都市交通局 長谷川章子さん)
「車両の更新が今年始まっていまして、廃車の部品で売れるものを取って、専用のオンラインサイトを立ち上げて販売を開始させていただきました。(Qどんなものを売る?)売れるものはなんでも売りたいという気はあります。例えば『車号銘板』といいまして車両の番号の銘板とか、車両の上の方に付いている『方向幕』は行き先が表示されるもので、今回オンラインで販売します」
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京都市交通局では初めてとなる本格的な車両の部品販売。出品しているのは車両に取り付けられていた行先を表示する幕や車両番号などで、10月14日から売り出しました。
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中には変わったものもあります。今から24年前、1997年6月に地下鉄烏丸線の北山駅~国際会館駅が開通したときに車両の先頭に装着していた記念のヘッドマークです。
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今回販売されるのは地下鉄や市バスの部品約40種類400点ほどで、これまで交通局で保管していた貴重なアイテムも手放します。

(京都市交通局 長谷川章子さん)
「(Qどんな人が買う?)鉄道ファンの方だと思うんですけれど。おうちでお楽しみいただく」

深刻な財政難の京都市 「敬老乗車証」の対象年齢引き上げの方針

交通局が車両部品の販売に乗り出した背景には京都市の深刻な財政難があります。京都市は固定資産税がかからない神社仏閣が多く、学生の街でもあることから、住民税を納める割合は政令市で最も低くなっています。今年度の予算は236億円の赤字で、こうした状態が30年以上続いています。
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そこで京都市は財政改革を打ち出し、職員の削減や保育料の改定などのほか、70歳以上の市民に交付されている市バスなどの「敬老乗車証」も対象年齢を引き上げて負担金も増やす方針で、11月初旬に市議会で決議される見通しです。

【京都市の街の声】
(70歳)
「京都市の財政を考えたら何か手を付けていかないことには財政はもたないからね」
(63歳)
「(敬老乗車証が)なくなるということは反対ですし、(交付の)年齢が上がるということに関しては、いま京都市はすごく財政難なので、そこは自分で妥協しているというところがあります」

出品部品を売り切れば700万円の収益に

地下鉄や市バスの運賃収入は新型コロナウイルスの影響で大きく減少。昨年度の地下鉄の収入は前年度比で88億円も減りました。地下鉄事業はバブル期に東西線の建設を続けた影響で大きな借金を抱えていることもあって、少しでも経営改善につなげたいと始めた今回の「部品販売」の取り組み。出品した部品をすべて売り切れば、700万円の収益が見込めます。
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(京都市交通局 長谷川章子さん)
「売れるものはなんでも売りたいなという気持ちがありまして、(売れるものを)いろいろ発掘していこうと思って、信号機とか表示板も捨てずに置いておいてくれと。(Q大きなくくりでいうと、ひとつのSDGsですよね?)そうですね…SDGsと申し上げていいのかちょっとわからないですけれど」

10月29日までに約6割の部品が売れたということです。